前の話
一覧へ
次の話

第8話

初めてのデート④
38
2025/08/14 19:08 更新
知菜
知菜
ねぇ虎太郎
虎太郎
虎太郎
ん?
知菜
知菜
虎太郎ってさ、どういう女の子がタイプなの?
虎太郎
虎太郎
はあ?
知菜
知菜
ねぇねぇ、教えてよー?
虎太郎
虎太郎
ンなモン、ねぇよ
知菜
知菜
嘘だぁ。こういう子がいいっていうの、少しくらいはあるでしょ?
虎太郎
虎太郎
……それじゃあ、知菜は?
知菜
知菜
え?
虎太郎
虎太郎
お前はどうなの?  人に聞くならお前から言えよ
 私が質問をしたのに何故か質問を返されて困惑する。

 理想なんて無いけど好きな人はいる。

 しかも、その好きな人を前にしてそんな事を言えるわけも無くて、
知菜
知菜
……私は……一緒に居ると楽しくて、私の事を分かってくれる……そんな人がいい……かな
 虎太郎とは言わないけど、少しくらいは気付いて欲しくて分かりやすそうな言葉を口にしてみたけれど、
虎太郎
虎太郎
ふーん?  けどそれって付き合ってみないと分からなくね?  元から仲良しなら別だけど……
 気付いているのかいないのか、真面目な表情を浮かべながらそう返してきた。
知菜
知菜
(馬鹿……、鈍感……)
 心の中で悪態をつきながらも表面では何でもないみたいな顔をしながらおどけて見せて、
知菜
知菜
それもそっか。それで、虎太郎は?  私は答えたんだから教えてよね~
 さっきの質問に答えて貰えるよう誘導していく。
虎太郎
虎太郎
俺、本当にそういうのねぇんだよ
知菜
知菜
全く?  それじゃあ、痩せてる子と太めの子だったら?
虎太郎
虎太郎
体型なんて別にどーでも良いって。まあ強いて言うなら、太ってるとか痩せてる以前に、飯を美味しく食べる奴……かな。写真ばっか撮ってSNSにアップするよーな女は苦手だし、出された物を残すような奴も嫌い
知菜
知菜
ご飯を美味しく食べる……か。うんうん、確かに。私も写真ばっか撮ってるような子は苦手かも。映えを気にして食べ物決めるのも違うしね
虎太郎
虎太郎
だよな。やっぱり知菜は話分かるわ。だから、一緒に居ると心地良いんだな
 虎太郎に悪気は無いって分かってる。

 心地良いとか言われるのも素直に嬉しい。

 でもね、それも全て『友達』としてしか見られていないのが悲しいの。

 胸の奥がチクリと痛むけど、それは表に出さず、
知菜
知菜
そっか!  私も虎太郎と居るの心地良くて好きだから、そう言われて嬉しいよ!
 私も嬉しいとだけ伝えるのが精一杯だった。



 虎太郎と居ると、一日があっという間に過ぎていく。ショッピングの後はファストフード店でひと休みして、駅ビルを出る頃にはすっかり暗くなっていた。
知菜
知菜
あー楽しかった!  ねぇねぇ、たまにはまたこういう風にデート、しよ?
虎太郎
虎太郎
そうだな。一応、付き合ってる設定だしな
知菜
知菜
そうそう!
 話をしながら徒歩で帰る私たち。

 駅から自宅までは歩いて十五分ちょいの距離。

 家に少し近付くたび、楽しい時間がもう終わるという淋しさが込み上げ、だんだん悲しくなってくる。
知菜
知菜
(まだ、離れたくないな……)
 そして、住宅街を少し歩いた先のY字路に差し掛かる。

 私の家はこの道を左で、虎太郎の家は右方向にある為、必然的にここで別れることになる。
知菜
知菜
虎太郎、今日は楽しかった!  お昼もご馳走様!  それじゃ、また明日ね!
 悲しい気持ちを隠し、今日は楽しかったということを告げた私が家の方へ歩いて行こうと足を一歩踏み出した、その時、
虎太郎
虎太郎
送る
 そう口にした虎太郎が再び私の隣に立った。
知菜
知菜
え?  でも、虎太郎の家はあっちじゃん。家まで来たら戻る事になるよ?
虎太郎
虎太郎
いいんだよ。今日はデート、だろ?  それに、もう暗いから一人は危ねぇって。送るついでに漫画も今日借りてく。行くぞ
知菜
知菜
あ、虎太郎!  待って……
 虎太郎のその言動は、凄く凄く嬉しい。
知菜
知菜
(心配……してくれてる……) 
 こんな風に女の子扱いしてもらえるのなら、嘘でも『恋人同士』なのは嬉しいと思いながら、あと少し一緒に居られることに喜びを感じていた。
知菜
知菜
送ってくれてありがとう。漫画、重くない?
虎太郎
虎太郎
へーき。それじゃ、またな
知菜
知菜
うん、またね。気をつけて帰ってね!
虎太郎
虎太郎
ああ
 くるりと身を翻した虎太郎は、手をヒラヒラと振りながら来た道を戻って行く。

 そんな彼の後ろ姿を見送りつつ、想いが届けばいいのにと願いながら、
知菜
知菜
虎太郎、大好き……
 そう小さく呟いた。

プリ小説オーディオドラマ