-side Watanabe-
ズキンとした腰の痛みで目が覚めた
隣で眠る彼を起こさないようゆっくりとベッドから抜け出してガーデンをめくる
外は日が登り始めていて薄暗い
物干し竿に干されたシーツと彼の服を見て、昨晩行われたあの激しめな行為を思い出し顔に熱がこもった
冷房でひんやりと冷たくなった床をペタペタと歩いてキッチンへ向かう
どこに居ても思い出される昨夜の出来事
シーンと静まりかえる家がやたらと気になって、昨日は自分の嬌声が響き渡っていたのになんて朝からそんなことばかり考えている
水しか入っていなかった冷蔵庫
めめが来るようになってから日に日に増えていく野菜や調味料
部屋にもディヒューザーや小さめの観葉植物が置かれて少し生活感がある
誰にも邪魔されたくなかった空間が少しずつ、少しずつ、気が付かないうちに彼に染められている事に今気が付いた
今までの自分ならそれが嫌で、苦痛だったのに
2つに増えた食器たちも、倍に増えたバスタオルも、2つ並んだ歯ブラシも、全部全部昔からそこにあったみたいに当たり前な顔でそこにいる
今だって無防備に下着一枚で俺のベッドで眠る彼の姿も見ることなんてなかったはずなのに
そっと近付いて、伸びた彼の前髪をそっとかき分ける
この数ヶ月日課になりつつあったこの行為にトクベツな意味は無い
ただ愛おしくて、この寝顔を見るだけの毎日に切なさと寂しさを感じて、それを埋める為の行為
起こさないように少しふっくらしたその唇に自分の唇を当てて、心の中で呟く彼への思いが溢れ出して止まらない
聞こえてなくていい
むしろ聞こえないでいて欲しい
情けない、年上の男からのこんな縋った気持ちなんて
ベッドの縁に腰掛けて、もう一度彼の唇に触れ、下唇を啄む
こうすることが許されるのが俺だけだって、それだけで幸せだから
もうひとつまみしようと唇を開いた時彼の声がして、ぱっちりと開かれた目が合う
とっさに離れようとしたのを彼は絶対に見逃さない
体を支えていた手を引かれて彼に組み敷かれるのに時間はかからない
顔の横に伸びた腕は程よく鍛えられているようで所々浮き上がる血管がやけにえろくて
いつから起きていたかは分からない
だけど寝起きにしては妙に色気を含んだ彼の目が俺の目を捉えて離してはくれない
またこの感覚
欲しくて堪らない
熱を帯び、火照って、疼いて仕方がない
もう彼でしか感じられなくなった体をどうにかして欲しい
彼の首に腕を回し、背中を浮かせて自ら貪るようにキスをした
ダメと言いつつ彼は素直に口を開いてくれて、ぬるっと舌を滑り込ませ絡める
歯列をなぞり、上顎を擦るように舌を動かすと彼の手が背中に添えられた
ちゅっとわざと音を立てるようにキスを続ければ、身体がふわりと楽になり彼の膝の上へと降ろされる
もうどうにも止まらない
何も纏っていない彼の肌に指を滑らせて、胸もとの突起を爪で擦るとビクッと反応する彼
その手を奪おうとしてくるから、舌を今度はそこへ持っていく
舌先に少し力を入れてぺろぺろと舐めるとはっ、はっ、と漏れる彼の吐息が静かだった部屋に響いて支配する
位置は変えずに目線だけ上にあげると、少し眉を寄せた彼に見つめられる
そう言って降り注ぐ甘いキスの雨に、俺は身を委ねた











編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。