わく「深田」
駅のホームで偶然見つけた深田に俺はあの事を頼んだ。
りゅ「あ、湧。」
わく「1回だけでいいから、戻ってくんねえかな」
りゅ「無理、もうそんなしょうもないことやめるって決めたし」
わく「うそつけ、どうせ言われたんだろ」
わく「大好きなママに」
りゅ「違う」
りゅ「何も知らないだろ、湧は」
わく「お前が前に喧嘩したボスに勝ちてえんだよ、頼むから」
りゅ「湧もやめたら?最近まであまり喧嘩してなかったのに」
わく「しなきゃいけねえんだよ」
りゅ「湧こそなんか言われたんだろ、お父さんに」
りゅ「親の言う事聞いても、好きになってはもらえないよ」
わく「…」
言い返せないまま、深田の乗っている電車は動き出す。
苛立ちが抑えられない、拳をぐっと握り、
どうしようもない自分を殴りたくなった。
喧嘩って、やっぱだせえのか。
俺も、深田みたいな普通の家に生まれたかった。
なあ父ちゃん、喧嘩なんてして何になるんだよ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。