「おはよー!」
後ろから元気よく挨拶される。
私は振り返って、その人に言った。
「……おはよ、星くん」
ニコニコと笑っている彼は、隣のクラスの星くん。部活が一緒で、彼氏ができる前はよく一緒に帰っていた。
星くんは隣に並んできて、不思議そうな顔をした。
「どうしたの?元気なくない?」
「……別に、そんなことないよ」
「そう?あ、そういえばもう大丈夫なの?昨日忘れ物取りに行くって部活抜けたあと、体調悪くなって帰ったって聞いたけど」
刹那、昨日の光景が脳裏に蘇る。
達也先輩と、ユキちゃんが、キスを――
「大丈夫。ありがと」
ニコッと笑いかけて、星くんより一足先に校舎へ入る。
下駄箱から上履きを出して履き替えていると、私の背後で同じように靴を履き替える星くんが喋りかけてきた。
「今日さー、英単語の小テストあるじゃん?僕あれ全然覚えてなくてさ」
「あー、それダメなやつだ。ちゃんと勉強しないと、放課後補習だよ?」
「そうなんだけどー!!うう、あなたちゃんも一緒に補習しようよ!」
「嫌でーす。部活に遅れるもん」
「一緒に遅れれば怖くないよ!!」
「二人とも遅れないのが一番いいんだよ」
そんな風に軽口を叩きながら、星くんと教室に向かっていく。
楽しいな。星くんとはいつも、何も考えずに喋れる。
別の話題で笑い合った後、私のクラスの近くに私たちは立っていた。
じゃあまた、と言おうとすると、星くんが口を開く。
「ねぇ、あなたちゃん」
「ん?」
星くんの顔が、私の耳に近付く。
「好きだよ」
愛おしさが詰まった、甘い告白。
「……ごめんね」
私は、何度目か分からない返事をして、教室に入った。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。