前の話
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あなたの名字あなたは疲れ切っていた。
家まではまだ距離がある、駅から15分歩かなければならない。しかしもうフラフラだ。
おまけに雨も降ってきてしまった。
天気予報士め、全然あってないじゃないか。
傘なんて持ってきてないのに…
そんなことを思いながら駅で立ち尽くしていると、黒い傘を持ち、パーカーのフードを深く被った背の高い男が近づいてきた。あなたの知り合いにこんな背格好の男は居ないため、自然と警戒してしまう。
突然のことに戸惑うあなたの様子を見てクスリと笑う男。その表情にあなたは少し苛立ちを覚えた。
男はヘラヘラと笑いながら自身の頬をかく、その頬は赤く腫れていた。
それが目に入り気になって、この不躾な男に仕返しと言わんばかりに尋ねてみた。
ビンタまでされるなんて、この男は何をしたんだろう。きっと浮気とかそんなところだろう。
そう考えていると、男はまた笑い出した。
あなたは呆れ果てていた。
目の前の男は多分、見た目がいいから彼女に養ってもらってたんだろう。まあ、こんな男があなたの一人称(僕、私、俺など)なんかに手を出すはずがない。そう思い直し、好奇心にも後押しされ、OKを出してしまった。
それが自分の運命を大きく変えることになるとは思っていなかっただろう。
こうして、怪しい男ルイとあなたの一人称(僕、私、俺など)の生活が始まった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。