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第1話

第1話「何かが始まる日」前編
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2024/05/22 16:47 更新
 ── 初めまして。
 みなさんにはまず始めに、この物語の主人公は "朝蔵あさくら大空そら" と覚えてもらいたい。
朝蔵 大空(あさくら そら)
朝蔵 大空(あさくら そら)
「あぁ、もう休みが終わってしまーぅ」
 春休みだ、だが明日でこの春休みも終わってしまう。
 長い休みは終わるのがつらいよ……。
 と言っても私はインドアなので、休みじゅうなーんもしてないんだけどね!

 そう言えば明日から私の肩書きは『高校2年生の女子』と言う事になる。
 所謂いわゆるアニメ・漫画で言う所の、主人公の学年である。
朝蔵 大空(あさくら そら)
朝蔵 大空(あさくら そら)
「それにしても……去年はほーんと、
     なーんにもしなかったなぁ」
 私は今、自分の部屋のベッドに横になって、天井を見つめながら自身の人生をひとり振り返っている。
 そんな私の表情は虚無顔きょむがお

 今まで何かをげた訳でもなく、何か賞を取った経験も、何も無いのです。
 ……実は彼氏も出来た事が無い。

 私の人生はイマイチ冴えない経歴。
 天井を見るのに満足した私は、今度はベランダに出てきて、お月様がひとりぼっちになった夜空を見上げる。
朝蔵 大空(あさくら そら)
朝蔵 大空(あさくら そら)
「つまんないなぁ」
 私の人生。
 あ、なんか急に眠くなってきた。
 さっきまで眠気ゼロだったのに……。

 時計を見ると、現在時刻は23時57分。
 明日からは新学期が始まるので早く寝なくてはならない。

 星の見えない暗空あんくうを観測するのは誰しも1分も経たずに飽きるだろう。
 私も、そんか夜空マニアじゃない。
 私は大人しく寝床ねどこに着き、布団を首まで被って両目を閉じた。
朝蔵 大空(あさくら そら)
朝蔵 大空(あさくら そら)
「明日学校行きたくないなぁ……」
 私、またこんな事言ってる。
 ううん、ダメだこのままじゃ。
 その後すぐに目を開いて……。
朝蔵 大空(あさくら そら)
朝蔵 大空(あさくら そら)
「うん、明日からは頑張ろう。
  うん! 自分が "主人公" に
      なったつもりで……!!」
 私はそっと目を閉じた。

 この独り言を呟いたのは一体何回目だろう、私は自分で数えていない。
 だけど何回こんな事を口に出しても、引っ込み思案な私は行動になんか移せない。

 きっとまた明日来るのはいつもの一日、一生このまま。
 言うだけなんだ。
朝蔵 大空(あさくら そら)
朝蔵 大空(あさくら そら)
「スー……スー…………」
 私は寝息を立てて熟睡だ。
 そしてこのまま朝までぐっすり……のはずだが。
 何かいつもと違ったモノを感じる。
朝蔵 大空(あさくら そら)
朝蔵 大空(あさくら そら)
「私、寝たよね?」
 始めは夢かと思った。
 だけど普通の夢とは違って、意識がしっかりあり体も自由に動かせる。
 私は変だなと思い、周りを見渡した。
朝蔵 大空(あさくら そら)
朝蔵 大空(あさくら そら)
「な……に?」
 視界に広がるのは 薄紫色うすむらさきいろ の世界。
 環境音も BGMビージーエム も一切無い。

 自分以外の影も無い、ただそれだけの世界。
 何も無いし、何も聞こえない。
 気持ち悪い……金縛り? とは違うよね?
???
「なァ、アイツが言ってた。
  アサクラソラ……って
     オマエ? だよな」
朝蔵 大空(あさくら そら)
朝蔵 大空(あさくら そら)
「ひゃっ!!」

 突然聞こえてきた声に、私はびっくりして後ろに尻餅しりもちを着く。
朝蔵 大空(あさくら そら)
朝蔵 大空(あさくら そら)
「イタタ……」
 あ、あれ? 痛い?
 夢のはずなのに、しっかりと尻に痛みを感じた。
???
「そりゃーそうだな!

 ここはオレ様が作り出した空間だもの。
      夢とは違うんだよ、夢とは」
 謎の声の主がこれは夢じゃないと言っている。
 この人は神か何かなのか?
朝蔵 大空(あさくら そら)
朝蔵 大空(あさくら そら)
「誰ですか!?
  どこに居るんですか?!」

 確かに男の人の声が聞こえるのに、人のような何かはいくら探しても見つからない。
ミギヒロ
ミギヒロ
「どーもー! ミギヒロですー!
  あ、オレ魔法使いなんだけど、
 なんつーか……オタクに変な呪い
  かけちゃったみたいなんだよネー」
 相手は勝手に自己紹介を始めた、しかも意味不明な事をひとりで言っている。
 魔法使いとは?

 私は訳の分からない状況に戸惑とまどっている。
 のに、声の主は妙におどけた口調で話すのだ。
 私はその者に恐怖するより段々とムカついてきてしまった。
朝蔵 大空(あさくら そら)
朝蔵 大空(あさくら そら)
「な、なに呪い?」

 私は聞き慣れない言葉に思わず聞き返してしまった。 
ミギヒロ
ミギヒロ
「ソウソウ呪いー」
 声の主は私の問い掛けにも適当に返す。
 私、朝蔵大空は魔法使いに呪いをかけられたようで。
朝蔵 大空(あさくら そら)
朝蔵 大空(あさくら そら)
「えっと、ミギヒロさん……?
  それはどう言った
    呪いなんでしょうか?」
ミギヒロ
ミギヒロ
「……ン? あっ、と、えっと。
  とにかく呪われているんだな!

  名も無き呪い的な?
 お客様が最初のお客様です!
           てきな……?」
 は?
 私に掛かった呪いは、名前が無いらしい。
朝蔵 大空(あさくら そら)
朝蔵 大空(あさくら そら)
「なんで私が……」
ミギヒロ
ミギヒロ
「あー……! 申し訳無い!
   実は手違いでして……」
 恨みも無く人に呪いをかけるなんて、迷惑な魔法使いもいたもんだなと思った。 
 生まれてから現実で魔法使いと関わりを持つなんて初めてだけど、この人は多分ロクな魔法士じゃない。
 まともじゃない。
朝蔵 大空(あさくら そら)
朝蔵 大空(あさくら そら)
「手違いって……
  なんかよく分かんないですけど。

 呪いとか嫌なんで
     早くいてほしいんです!」

 正直私は話が見えなくて苛立いらだっていた。
ミギヒロ
ミギヒロ
「解放してあげたいのは
  ヤマヤマなんだけどネー……」
 解放?
 魔法使いは都合が悪くなったのか、さっきまでデカデカと喋っていたのに急に声が小さくなった。
朝蔵 大空(あさくら そら)
朝蔵 大空(あさくら そら)
「えっ! 解けない呪いなんですか!?」

 私はまさかと思って声を荒らげる。
ミギヒロ
ミギヒロ
「ア! 解けない事は無いぞ!
  ちょっと条件が
   メンドクサイだけで……」

 また男の声が言葉のすえ当たりで小さくなった。
朝蔵 大空(あさくら そら)
朝蔵 大空(あさくら そら)
「なんですか!? なんでもします!!」
 必死になった人間はきっとなんでも出来るはず。
 だが私がそう言っても魔法使いは黙ったまんまだった。
 どうしたんだろうと思いつつも、私は相手が喋り出すまで大人しく待つ事にした。
ミギヒロ
ミギヒロ
「ほんとになんでもしてくれる?」

 魔法使いは、 "ここからはおふざけ無し" みたいな口調で話し出した。
朝蔵 大空(あさくら そら)
朝蔵 大空(あさくら そら)
「わ、私に出来る事であれば……」
ミギヒロ
ミギヒロ
「落ち着いて聞いてネ。
  えっとね、愛の救済をしてほしい!
 ブッチャケルと、
     男をとしてほしいのです!」

 聞こえてきた条件はふざけているのかと思った。
朝蔵 大空(あさくら そら)
朝蔵 大空(あさくら そら)
「えっ!
  私彼氏出来た事無いですよ!?

   引っ込み思案だし……!
 自信なんて無いし……モテないし……」
ミギヒロ
ミギヒロ
「あ、ソコは心配御無用だから
          安心して〜。

  キミのスペックに関係無く、
 男なんて勝手に寄ってくると思うから」
朝蔵 大空(あさくら そら)
朝蔵 大空(あさくら そら)
「え、そうなの?」
 なんだろう……このTHEご都合主義の設定は。
 そんなの、乙女ゲーでしか聞いた事ない。
ミギヒロ
ミギヒロ
「ウン。 だってぇーキミには
  そう言うバフが掛かってるもん。

 ヨカッタネー、だって……
   "つまらない" んでしょ、人生」
 "つまらない"
 その言葉は確か寝る前に私が外のベランダでひとり吐き捨てたセリフだ。
 この魔法使い、まさかその時から既に近くに居たと言うのか?
 気味が悪い、聞いていたとしか思えないほどのタイミングだ。
ミギヒロ
ミギヒロ
「さ、今からキミ! 朝蔵大空の
  つまらなくない人生が始まるよ〜。

 さァさァそれではオレはこの辺で♪
  なんだかんだ言ってもう朝だしねー、
             バイビー☆」
朝蔵 大空(あさくら そら)
朝蔵 大空(あさくら そら)
「あっ……」

 魔法使いがどこかへ消えてしまう、そう察した瞬間私は口を大きく開けて……。
朝蔵 大空(あさくら そら)
朝蔵 大空(あさくら そら)
「待って!!」
 叫んだ。
 だけど誰かの返事が帰って来る事は無かった。
 魔法使いは謎を多く残したまま、その姿を私に見せる事も無く私の元から消えて行ってしまった。
 ── そして。
朝蔵 大空(あさくら そら)
朝蔵 大空(あさくら そら)
「……ん、朝……?」
 もう朝が来たらしい、さっき眠ったばっかな気さえするのに、外も明るくなっていた。
 朝は無情だ、すぐに帰って来る。
 まるでこの私に何か期待しているように、いつも前のめりになってやって来る。
朝蔵 大空(あさくら そら)
朝蔵 大空(あさくら そら)
「うーん、寝た気がしない……」




 コンコンっ……。



 背伸びをしていると部屋のドアが2回ノックされた。
 聞き逃しそうなほど控えめなノック音。
 このノック音は、きっと弟の 真昼まひる だろう。
朝蔵 大空(あさくら そら)
朝蔵 大空(あさくら そら)
「真昼? どうした」

 部屋の外には、やっぱり真昼が居た。
朝蔵 真昼(あさくら まひる)
朝蔵 真昼(あさくら まひる)
「お母さんが早く降りて来いだって、
      起きるの遅いんだってば」
 弟は面倒臭いと顔に書いてあるかの様な表情だった。
 この可愛い子は自慢の弟の 朝蔵あさくら 真昼まひる

 真昼とは正真正銘しょうしんしょうめい、本当の姉弟していであるが、としは1個違いで、今年から真昼も私と同じ高校に通っている。
 幼稚園、小学校、中学に続き高校もお姉ちゃんと同じ学校を選ぶなんて本当に可愛い奴め。
朝蔵 真昼(あさくら まひる)
朝蔵 真昼(あさくら まひる)
「なにニヤニヤしてんの?」
朝蔵 大空(あさくら そら)
朝蔵 大空(あさくら そら)
「い、いやなんでもないよ?」

 お察しの通り、私は軽度のブラコンだと思う、それを私は本人や周りに隠すのにいつも必死だ。
オカマタレント
『へーアサノヨゾラくんって
  もう26なんだぁ、
   いくつになっても可愛いのねー』
アサノヨゾラ
アサノヨゾラ
『あっはは、よく言われまーす♪』
 制服に着替えて朝食を食べていると、私のお母さん、 朝蔵あさくら あおい によってリビングのテレビがけられた。
 ベテランオカマタレントが今アツいインフルエンサーをゲストとして呼んで適当に持ち上げる番組。
 しかし、この番組は朝にやっているようなやつじゃない。
朝蔵 真昼(あさくら まひる)
朝蔵 真昼(あさくら まひる)
「また録画? 朝はニュースが良いのに」
朝蔵 葵(あさくら あおい)
朝蔵 葵(あさくら あおい)
「だってー、せんちゃん が
    映ってたから……♡」

 ソファで夢中になって、ハート目でテレビを見ているのは私の母、 朝蔵あさくら あおい (大のイケメン好き)。
朝蔵 真昼(あさくら まひる)
朝蔵 真昼(あさくら まひる)
「 千兄せんにい 人気者だねー」
 千ちゃん、千兄 とは、テレビの向こうでオカマタレントと一緒に映ってる私の兄、アサノヨゾラこと 朝蔵あさくら 千夜せんや の事だ。
 おとこ系ファッションデザイナーとして持ち切りのインフルエンサー、それが私の "兄" なのだ。
オカマタレント
『じゃあさー、ずばり!
  アサノ君が1番大事にしてるもの
            ってなーに?』
アサノヨゾラ
アサノヨゾラ
『…………家族、ですかね』
 千夜お兄ちゃんは美大入学と同時に家を出て行ってしまった。
 最後に会った時にはまだ普通に男性らしい格好をしていたので、男の娘してテレビに出て来た時は本当にびっくりした。
 もう何年なんねんも会えていない、久し振りにお兄ちゃんに会いたいなぁ……。
朝蔵 真昼(あさくら まひる)
朝蔵 真昼(あさくら まひる)
「ごちそうさま。 行って来ます」

 と言って真昼は、学校カバンを持って足早あしばやにリビングから出て行った。
朝蔵 葵(あさくら あおい)
朝蔵 葵(あさくら あおい)
「はーい、行ってらっしゃ〜い」
朝蔵 大空(あさくら そら)
朝蔵 大空(あさくら そら)
「あっ私もそろそろ!

  ごちそうさまです、
   行って来ます!!」
 私は真昼に続くように家から出て学校に向かった。
 まあ別に、真昼は一緒に登校してくれる訳ではないが。
朝蔵 葵(あさくら あおい)
朝蔵 葵(あさくら あおい)
「はい♪ いってらっしゃい。
       気を付けてねー」




 プルルッ♪ プルルッ♪



 その時、リビングの電話機が鳴り出した。
朝蔵 葵(あさくら あおい)
朝蔵 葵(あさくら あおい)
「あら、何かしら……」




 つづく……。

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