前の席に座っている女の子が振り向いてそう笑う
高校で知り合った友達 、戌亥とこちゃんだ .
おっとりしてるけど案外毒舌で 、
面倒見が良くて勝手にお姉ちゃんだと思っている .
うなだれる私にいぬいは楽しそうに笑った .
先生が困ったように眉を下げる .
いぬいがちらりと視線を送ったのは
私の隣の 、ぽっかり空いた席だった .
私の隣の席の 、小柳ロウくん .
彼が朝に教室にいることは滅多に無い
私と同じく 遅刻常習犯 ということで
勝手に仲間意識を芽生えさせているものの 、
彼と話したことは1度も … 無い .
あまり群れるタイプでは無いのか 、
クラスメイトと話してるところは見た事がない .
すれ違った彼からはいつもムスクの香りがする .
シャープな輪郭に整った顔立ち 、
キリッとしたつり目を眠たそうに細めてるのが印象的で
少しばかり目で追ってしまった .
良くも悪くも近づき難いオーラが出ていて 、
周りの人達も近づこうとはしないみたいで .
よく昼に来るけど親御さんは怒らないのかな とか
ご飯食べてるの見たことないな とか .
そんな彼が不思議で 、だけど
本人に話しかける勇気はとても無かった .
放課後 、先に教室を出るいぬいを見送り
私も教室を出る .
靴箱を出て校門に近づくと
私の通学路とは反対方向に歩く男子二人組が
視界に映った .
今さっきまで隣で授業を受けていた小柳くんと 、
その横で楽しそうに話すのは
隣のクラスの赤城ウェンくんだった .
そのフレンドリーで明るい性格で
誰とでも仲良さそうに話してて 、
男女問わず人気のあるウェンくん .
そんな彼が小柳くんといるのは
あまりにも珍しい組み合わせで
思わず目で追ってしまった .
ウェンくんの賑やかな声は聞こえてくるものの
小柳くんの声はここからでは聞こえず 、
会話成立してるのか ? と思ったりもしたけど .
それでもウェンくんはとても楽しそうにしてるから
余計なお世話か …… と私も彼らに背を向け
自らの帰路に着く .
家に着く頃 、私の頭の中に既に彼らは消えてて
ただ1つのことで埋め尽くされていた .
next .
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。