「やってくれたわね」
自宅に着いて、最初に告げられた言葉は、失望が滲んでいた。
その理由が理解できるから、特段落ち込むことはなかった。
それ以上に、次に告げられた言葉の方が、私はよほど衝撃を受けた。
「貴方の婚約相手は蘆屋殿になったわ。本当に貴方は、常に私の予想を下回るわね。」
都合のいい、聞き間違いではないかと思った。
けれど間違いではないようで、場違いながらにも、こんなに幸せなことがあっていいのかと思わざるを得なかった。
その後にも続けられる、今までで一番の罵声を浴びながら、私は人生で初めて、この家に産まれて良かったと、心から思ったの。
数日後の顔合わせ、柄にもなく期待や高揚感を覚えていた。
どんなお話ができるだろうか、まずなんとお話しよう、今日の服装は可愛いかな、嬉しい、自分が恋焦がれた相手と結婚ができるなんて、考えたこともなかったから。
道満様は、どう思っているのだろうか、嫌でなければいいな。
自分らしくない思考、浮かれていたのだ。
この時、いつも通り最悪を考えて、それを行動に移して、すぐに切り替えることができていたら、あんなに傷つくこともなかったのに。
その日、道満様が屋敷に顔を出すことはなかった。
婚礼の儀すら、私の顔を見ることはなく、ただ淡々と、義務的に行われた。
『道満様、!どうして私を避けるのでしょうか、?何かご不満がありましたか?……私が、お嫌いでしょうか?』
一心不乱に言葉を投げかけた。
否定して欲しかった。
ただ、貴方の綺麗な、笑った顔が見たかった。
『私との縁組が嫌でしたら、今からでも破棄していただいて構いません、ご不満でしたら、妾をとられても私は大丈夫ですから、どうか….前のように、お話がしたいのです。』
多くは望まない、愛してほしいとか、触っていただきたいとか、貴方との子供を産みたいとか、そんなことは決して言わないから、以前のように少し不機嫌そうに眉をひそめる貴方と、たわいのない会話がしたい。
そんな願いも虚しく、ピタリと足を止めた後、数秒の間をおいて、話すことはないとでも言うように、振り向くこともなくそのまま歩き出していった。
状況が好転することはなく、事件は起こった。
道満様が晴明様を殺した。
その数日後、理由を聞く暇ももらえぬまま、朱雀様と共に、道満様は行方をくらませた。
同日、この件を収束させるために、蘆屋道満に変わり、北の方、焔斬院あなたが処刑された。
次回、道満目線で語られます。











編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。