第5話

彼女の後悔
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2026/02/05 10:28 更新


「やってくれたわね」



自宅に着いて、最初に告げられた言葉は、失望が滲んでいた。

その理由が理解できるから、特段落ち込むことはなかった。



それ以上に、次に告げられた言葉の方が、私はよほど衝撃を受けた。




「貴方の婚約相手は蘆屋殿になったわ。本当に貴方は、常に私の予想を下回るわね。」





都合のいい、聞き間違いではないかと思った。

けれど間違いではないようで、場違いながらにも、こんなに幸せなことがあっていいのかと思わざるを得なかった。


その後にも続けられる、今までで一番の罵声を浴びながら、私は人生で初めて、この家に産まれて良かったと、心から思ったの。




数日後の顔合わせ、柄にもなく期待や高揚感を覚えていた。

どんなお話ができるだろうか、まずなんとお話しよう、今日の服装は可愛いかな、嬉しい、自分が恋焦がれた相手と結婚ができるなんて、考えたこともなかったから。
道満様は、どう思っているのだろうか、嫌でなければいいな。

自分らしくない思考、浮かれていたのだ。
この時、いつも通り最悪を考えて、それを行動に移して、すぐに切り替えることができていたら、あんなに傷つくこともなかったのに。





その日、道満様が屋敷に顔を出すことはなかった。





婚礼の儀すら、私の顔を見ることはなく、ただ淡々と、義務的に行われた。




『道満様、!どうして私を避けるのでしょうか、?何かご不満がありましたか?……私が、お嫌いでしょうか?』




一心不乱に言葉を投げかけた。

否定して欲しかった。

ただ、貴方の綺麗な、笑った顔が見たかった。






『私との縁組が嫌でしたら、今からでも破棄していただいて構いません、ご不満でしたら、妾をとられても私は大丈夫ですから、どうか….前のように、お話がしたいのです。』




多くは望まない、愛してほしいとか、触っていただきたいとか、貴方との子供を産みたいとか、そんなことは決して言わないから、以前のように少し不機嫌そうに眉をひそめる貴方と、たわいのない会話がしたい。


そんな願いも虚しく、ピタリと足を止めた後、数秒の間をおいて、話すことはないとでも言うように、振り向くこともなくそのまま歩き出していった。


状況が好転することはなく、事件は起こった。



道満様が晴明様を殺した。


その数日後、理由を聞く暇ももらえぬまま、朱雀様と共に、道満様は行方をくらませた。






同日、この件を収束させるために、蘆屋道満に変わり、北の方、焔斬院あなたが処刑された。











次回、道満目線で語られます。

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