はーい、と返事をした後、平野と一緒にスタジオから出る。
ちらりと様子を伺うと、なんか無表情。
なんだこいつ。キスなんてアドリブしてきたくせに。
おとなしく隣を歩く…と見せかけて、
ドガッ
それを口にした途端、平野の表情が一変した。
少し傷ついたような、…そんな顔。
平野は周りに人がいないことを確認すると、
私の手首を掴んで、空き部屋に入った。
そう言う平野の声は少し低くて、驚いてしまった。
なんでそんな悲しそうな声してるの…?
平野に掴まれた手首を振り払おうとする。…と、
逆に掴む力が強まった。
なんで!?
離してよ、と言おうと平野の顔を見上げると、
もう鼻先がくっついてしまいそうなくらい、平野の顔がすぐ側にあった。
平野の言葉が全然理解できない。
え?どういうこと?
思い出って、俺の気持ち変わらなかったって。
好き、という言葉が放たれた後、私の視界は平野で塞がった。
唇には、温かい感触。
でもそれは今までとは違う、優しいキスだった。














編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!