第21話

第20話 奏汰side
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2020/05/17 15:00
苦くて、痛い。
今の気持ちを表すには、ピッタリで。
僕には、ちゃんと彼女が居るのに。
奏汰
奏汰
(...何で、こんなにイライラしてるんだろ)
仲の良いクラスメイトが、異性の後輩と話している光景。
それを思い出すだけでも。
奏汰
奏汰
(楽しそう、だったなぁ.....)
どす黒い感情が、胸の底に渦巻くのを感じる。
そんな自分と向き合いたく無くて。
頭から追い出そうとしても。
しっかり僕を縛り付けて離さない。
奏汰
奏汰
(もし、かして.....)
気づいたら、こう呟いていた。
奏汰
奏汰
.....瀧野さんの事が、好き?
言えないはずの言葉を。
......."本当に幸せ"なら、そもそも考えないような事を。
奏汰
奏汰
.........っ今、僕.......
罪悪感から逃げるように。
大好きな人の顔を思い出そうと、目を閉じる。
.......でも、残酷にも浮かんで来たのは。
『井上くん、ありがとう』
『いつも頼ってばっかりでごめんね.....』
瀧野さんの、色々な表情。
誰かの一言で一喜一憂してしまうような、あの子の顔。
詩音彼女との思い出が、
瀧野さんの控え目な笑顔に掻き消されて行く。
あんなに嬉しかった手を繋いだ瞬間も。
奏汰
奏汰
(.....最低だ、僕)
もう薄くて。全然思い出せない。
詩音が好きだから告白したのに。
奏汰
奏汰
(これじゃ、まるで)
瀧野さんを、重ねて見ていたみたいだと。
抱いた恋心を、全部。
詩音に向けた物だと、錯覚していたのであれば。
僕が本当に好きになったのは。
奏汰
奏汰
(....詩音じゃ、無い.......?)
ようやく導き出された答えが、心の真ん中に落ちる。
ズレていたピースが綺麗にはめ込まれて行く感覚に、
前髪をクシャッと握った。
奏汰
奏汰
(何で...もっと早く気づかなかったんだろう)
そうすれば、誰も傷つけずに済んだのに。
反射的に立ち上げた某メッセージアプリ。
そのトップにあるトークルームをタップして。
『話があるから、放課後会える?』と送信しかけ、やめた。
奏汰
奏汰
(ダメだ.....まだ言えない)
瀧野さんへの恋心を自覚した今、
あの後輩が動き出す前に先手を打たないと。
奏汰
奏汰
(.......盗られる?)
考えたくも無い結末が現実になるのは、明らか。
散々突っ走った挙句に焦り始めている自分に嘲笑した。
奏汰
奏汰
(ごめん詩音。ごめんな.......)
一度は告白した人を突き放しても。
彼女を一途に想って居る後輩を押し退けてでも。
隣で笑って居て欲しい人が居るから。
奏汰
奏汰
(もう、中途半端は止めよう)
明日は。好き"だった"人を傷付ける。  

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