第3話

【 魔法少女篇 】第1話『 魔法少女☆ミラクル 』
70
2025/10/31 11:00 更新
ラーレ
......ほんっっと、なんでこんなことに......!
 
晴天。雲ひとつない青空。
周りもいたって平和。みんなたわいのない話を繰り広げている。

 
........ここが“ 知らない世界 ”という点を除けば、の話だった。
 
奈菜
ラーレさん、大丈夫ですか......?
ラーレ
大丈夫!! ......は、うそかもね〜
 
調子が悪いのもこんなことが起こったせいだ、と心の中でどこかに八つ当たりした。
 
......いや、あたしは今隣にいる奈菜ちゃんと一緒に、『 新しくできた謎の施設についての調査 』をしていたはずで。
その日、その時までは“ いつも ”だったんだ。
あたし達が歩むと決めた、“ いつもの道 ”だった。

───でもその帰りに、“ 場違いな水色の扉 ”が存在していたのが間違いだったのかもしれない。
 
ドアノブをひねって、ちょっと開けて、また閉めればいい話。
先に後輩達に報告しておくべきだったのかもしれないし、
あの扉についてもう少し調べればよかったのかもしれない。
でも謎の安心感というのか、大丈夫だという自信は、あたしの中にある“ 悪魔の好奇心 ”の背中を押した。
それで結局、奈菜ちゃんと一緒に扉を開けたんだけど.........
 
ラーレ
......まさか、変な場所に飛ばされるなんてさ
奈菜
......そう、ですね。
ここは、僕達がいた“ 世界 ”とまったく違いますし......
 
あたし達はどうやら、“ 別世界 ”に飛ばされてしまったらしい。
異世界って言うほどあたし達がいる世界との技術に大差あるわけでもないし、別世界と表現させてもらうけど。
それで、ここの世界のあたし達は『 奇跡ヶ丘学園 』という全寮制小中高一貫学園に通っていると。
......あの『 希望ヶ峰学園 』に名前がとても似ているのは、気のせいと済ましておく。
 
ラーレ
んー、別世界なら、あたし達の知ってる人はいない感じ?
奈菜
うーん..........どうでしょう
奈菜
..........真緒ちゃんとかいてくれたら、嬉しいんですけどね
ラーレ
......そうだね。あたしも
 
あたしも、怜央ちゃんや綾芽ちゃんがもしこの世界にいたら......
 
.........なんて、この世界に希望を抱いてる場合ではない。
 
ラーレ
っと、とにかく
ラーレ
奈菜ちゃん、早く元の世界に戻らないとね!
奈菜
はいっ!
いつまでもここにいるわけにはいきませんし
ラーレ
ていうか、この世界でも奈菜ちゃんは“ 高校生 ”なんだ
奈菜
そうですね......
でも、ラーレさんと一緒にいれるのは心強いです!
奈菜
ひとりだと、不安ですから
ラーレ
ふふん。奈菜ちゃんが危ない目に遭いそうな時は、あたしが助けるからね!
 
こんなこと、絶対に男子の前では言わないし、
女子でも言うかは人によるだろう。
というか、ウソついてからかうかも。
......でも、コロシアイを一緒に乗り越えてきた奈菜ちゃんだから。
だから、こんなとこで危険な目に遭わせやしない。
 
あの子真緒ちゃん ”の代わりに───

奈菜
む、......気持ちは嬉しいですが
奈菜
僕だって、成長してます。
ラーレさんを守れるくらいには、です!
ラーレ
............
 
......そうだった。
もう、この子は真緒ちゃんに守られてきた“ 紫月 音愛 ”じゃない。
真緒ちゃんの想いを受け継いで成長した、
“ 月穂 奈菜 ”なんだ。
 
ラーレ
んふ、そっか!
 
誇らしいし、素晴らしいことだと思って、あたしは奈菜ちゃんに笑みを見せた。
それからあたし達は、学校に向かって歩いていった。
昇降口でうわばきに履き替え、
セーターで隠れた手を出した状態で先生に挨拶をする。
......顔怖そうだし。
ワンチャン咎められる可能性もあるからねー。
なんてことをしながら、教室まで向かう。


ただ、問題はここからだった。
 
「 “ ななりん ”と一緒じゃないの、やっぱ珍しいよね〜 」
「 いつもは部活の助っ人より、“ 月穂クン ”と行くことを優先させてるキミだからね...... 」
「 は〜? でもそういう君らだって、“ ラーレ ”と一緒じゃな─── 」
ラーレ
(.......あれ?)
 
あたし達のクラス──1-Bから、声が聞こえる。
聞き慣れた、望んだ、聴きたかった声が

───きこ、える。
 
奈菜
........ラーレさん?
ラーレ
ぇ、あ、ああ.......
ラーレ
いや、なんでもない!
 
......気のせい、だよね。
奈菜ちゃんは特に気づいていないようだし。
一瞬止めた足をまた動かして、教室前の扉を開ける───
 
 
???
あ〜っ、ラレとななりんだ!
おはよー!
???
古朱クン、月穂クン、おはよう
???
あっ、奈菜!
って......ラーレと? 珍し......
 
奈菜
───、え?
 
扉に近い席に座っていた女子3人組が、あたし達を出迎える。
あたしは、あたし達は、知っている。
この3人の名前を、













 



怜央
.......ん、古朱クン?
 
───もう逢うことができないはずの、彼女達の名前を。
 
ラーレ
...................っ、う、うん! おはよ、みんな!
 
あたしはその声に、不細工な笑みを浮かべて返すしかなかった。
それから数日過ごして、気づいたことがある。

 
───本当ならば、あたしが彼女達に言うべき言葉はたくさんあるだろう。
『 あの後大変だった 』『 奈菜ちゃんはちゃんと成長した 』『 なんで自殺しちゃったの 』とか。
でも、
 
そんなこと、“ この世界 ”の3人に言ったって、意味はない。
 
知らないはずの“ 音愛ちゃんの本名 ”を、みんなが口にしていること。
まるで、“ この世界にいた ”かのような振る舞いをしていること。

コロシアイの記憶が、ないこと。
 
ラーレ
......違うんだ、
 
たまたま同姓同名、たまたま同じ容姿、たまたま同じ性格、たまたま同じ関係性なだけで──
あたしの“ 知っている ”怜央ちゃん達とは、『 別人 』で。
 
奈菜
......っ、なんだか、苦しいですね
奈菜
同じ真緒ちゃん、なのに......
ラーレ
......仕方ないよ。
あたし達の知ってるみんなは、死んじゃったもん
ラーレ
そう簡単に、出会えるはずがないんだ
 
........苦しい。
何も知らないその笑顔が、あたし達の苦労も後悔も絶望も何もかも知らないその笑顔が。
でも、だからこそ、
“ 絶望を知らないみんな ”に、溺れてしまいそうで───
 
ラーレ
.......そうなる前に、帰んなきゃな
奈菜
.............
 
早く“ 水色の扉 ”を見つけて、元の世界に帰るべきだ。
行きと同じ道を辿れば帰れるというのは常識。
だから、その“ 行き ”である水色の扉を見つければ───
 
???
───ね、
???
その“ 水色の扉 ”がある場所、知りたい?
ラーレ
........は?
 
突然、目の前に謎の人物が現れた。
パーカーのフードは深く被っていて、よくその姿が見えないが───
 
奈菜
ッ.........誰、ですか?
???
......え、私警戒されてる感じ.......??
???
大丈夫だよ! 怪しい人じゃないからさ
ラーレ
ええ〜!?
すっごく怪しそうだったから、あたし警察呼んじゃったんだけど
???
えっ!? う、嘘......!?
ラーレ
そう、うそうそ!
呼んでないから安心しな
???
だ、だよね!?
呼んでないよね!?
ラーレ
あははっ、呼んでないって〜!
 
.......似てる。
元気で騙されやすいバカな性格とか、
明るくて優しいその声とか。
だから、奈菜ちゃんが警戒心を解くことは、不可能に近いだろう。
 
???
........こほん。それじゃあ、気を取り直して
???
警戒心を解いてもらうにも、私が自己紹介しなきゃダメそうだね
 
氷楽
私は“ 春道 氷楽 ”、『 奇跡の星 』でカウンセラーをやってます
ラーレ
(.......『 奇跡の星 』、?)
 
案の定、フードを被った少女は氷楽ちゃんで、
姿も同じだった。
ただ、彼女は自己紹介に『 奇跡の星 』という聞き馴染みのない言葉も言っている。
 
.......どうしよう、この世界の氷楽ちゃんはもっとバカなのかな。
“ 奇跡の星 ”ってそんな、まるで『 自分は宇宙人ですよ〜 』って言ってるイタいヤツじゃないんだから───
 
すると、姿勢をきっちり整えたあと
氷楽ちゃんは頭を90度くらいまで下げて、懇願するように言った。
 
 
 
氷楽
───あなた達の願いを叶えるので、『 魔法少女 』になってくださいっ!!
奈菜
..........は、
ラーレ
........................
 
ラーレ
は、はあ〜〜〜〜ッ!?!?!?
 
肩に下げていたカバンを勢いよく落として、あたしは言葉にならない声を上げた。
 
第1話『 魔法少女☆ミラクル 』 終
『 導入までが長い選手権第一位 』
 
多分魔法少女篇第2話は出すのが遅れそうです。
 
ポップと言えば魔法少女!
ということで、魔法少女篇です。
約半年ぶりに書くので口調がブレブレになりました。
才食書いていたころのあたし、出ておいで。
それはそれとして真緒ちゃんが『 奈菜 』って呼ぶ世界、ほしいですよねえ........
 
では、また次回。

プリ小説オーディオドラマ