晴天。雲ひとつない青空。
周りもいたって平和。みんなたわいのない話を繰り広げている。
........ここが“ 知らない世界 ”という点を除けば、の話だった。
調子が悪いのもこんなことが起こったせいだ、と心の中でどこかに八つ当たりした。
......いや、あたしは今隣にいる奈菜ちゃんと一緒に、『 新しくできた謎の施設についての調査 』をしていたはずで。
その日、その時までは“ いつも ”だったんだ。
あたし達が歩むと決めた、“ いつもの道 ”だった。
───でもその帰りに、“ 場違いな水色の扉 ”が存在していたのが間違いだったのかもしれない。
ドアノブをひねって、ちょっと開けて、また閉めればいい話。
先に後輩達に報告しておくべきだったのかもしれないし、
あの扉についてもう少し調べればよかったのかもしれない。
でも謎の安心感というのか、大丈夫だという自信は、あたしの中にある“ 悪魔の好奇心 ”の背中を押した。
それで結局、奈菜ちゃんと一緒に扉を開けたんだけど.........
あたし達はどうやら、“ 別世界 ”に飛ばされてしまったらしい。
異世界って言うほどあたし達がいる世界との技術に大差あるわけでもないし、別世界と表現させてもらうけど。
それで、ここの世界のあたし達は『 奇跡ヶ丘学園 』という全寮制小中高一貫学園に通っていると。
......あの『 希望ヶ峰学園 』に名前がとても似ているのは、気のせいと済ましておく。
あたしも、怜央ちゃんや綾芽ちゃんがもしこの世界にいたら......
.........なんて、この世界に希望を抱いてる場合ではない。
こんなこと、絶対に男子の前では言わないし、
女子でも言うかは人によるだろう。
というか、ウソついてからかうかも。
......でも、コロシアイを一緒に乗り越えてきた奈菜ちゃんだから。
だから、こんなとこで危険な目に遭わせやしない。
“ あの子 ”の代わりに───
......そうだった。
もう、この子は真緒ちゃんに守られてきた“ 紫月 音愛 ”じゃない。
真緒ちゃんの想いを受け継いで成長した、
“ 月穂 奈菜 ”なんだ。
誇らしいし、素晴らしいことだと思って、あたしは奈菜ちゃんに笑みを見せた。
それからあたし達は、学校に向かって歩いていった。
昇降口でうわばきに履き替え、
セーターで隠れた手を出した状態で先生に挨拶をする。
......顔怖そうだし。
ワンチャン咎められる可能性もあるからねー。
なんてことをしながら、教室まで向かう。
ただ、問題はここからだった。
「 “ ななりん ”と一緒じゃないの、やっぱ珍しいよね〜 」「 いつもは部活の助っ人より、“ 月穂クン ”と行くことを優先させてるキミだからね...... 」「 は〜? でもそういう君らだって、“ ラーレ ”と一緒じゃな─── 」あたし達のクラス──1-Bから、声が聞こえる。
聞き慣れた、望んだ、聴きたかった声が
───きこ、える。
......気のせい、だよね。
奈菜ちゃんは特に気づいていないようだし。
一瞬止めた足をまた動かして、教室前の扉を開ける───
扉に近い席に座っていた女子3人組が、あたし達を出迎える。
あたしは、あたし達は、知っている。
この3人の名前を、
───もう逢うことができないはずの、彼女達の名前を。
あたしはその声に、不細工な笑みを浮かべて返すしかなかった。
それから数日過ごして、気づいたことがある。
───本当ならば、あたしが彼女達に言うべき言葉はたくさんあるだろう。
『 あの後大変だった 』『 奈菜ちゃんはちゃんと成長した 』『 なんで自殺しちゃったの 』とか。
でも、
そんなこと、“ この世界 ”の3人に言ったって、意味はない。
知らないはずの“ 音愛ちゃんの本名 ”を、みんなが口にしていること。
まるで、“ この世界にいた ”かのような振る舞いをしていること。
コロシアイの記憶が、ないこと。
たまたま同姓同名、たまたま同じ容姿、たまたま同じ性格、たまたま同じ関係性なだけで──
あたしの“ 知っている ”怜央ちゃん達とは、『 別人 』で。
........苦しい。
何も知らないその笑顔が、あたし達の苦労も後悔も絶望も何もかも知らないその笑顔が。
でも、だからこそ、
“ 絶望を知らないみんな ”に、溺れてしまいそうで───
早く“ 水色の扉 ”を見つけて、元の世界に帰るべきだ。
行きと同じ道を辿れば帰れるというのは常識。
だから、その“ 行き ”である水色の扉を見つければ───
突然、目の前に謎の人物が現れた。
パーカーのフードは深く被っていて、よくその姿が見えないが───
.......似てる。
元気で騙されやすいバカな性格とか、
明るくて優しいその声とか。
だから、奈菜ちゃんが警戒心を解くことは、不可能に近いだろう。
案の定、フードを被った少女は氷楽ちゃんで、
姿も同じだった。
ただ、彼女は自己紹介に『 奇跡の星 』という聞き馴染みのない言葉も言っている。
.......どうしよう、この世界の氷楽ちゃんはもっとバカなのかな。
“ 奇跡の星 ”ってそんな、まるで『 自分は宇宙人ですよ〜 』って言ってるイタいヤツじゃないんだから───
すると、姿勢をきっちり整えたあと
氷楽ちゃんは頭を90度くらいまで下げて、懇願するように言った。
肩に下げていたカバンを勢いよく落として、あたしは言葉にならない声を上げた。
第1話『 魔法少女☆ミラクル 』 終
『 導入までが長い選手権第一位 』
多分魔法少女篇第2話は出すのが遅れそうです。
ポップと言えば魔法少女!
ということで、魔法少女篇です。
約半年ぶりに書くので口調がブレブレになりました。
才食書いていたころのあたし、出ておいで。
それはそれとして真緒ちゃんが『 奈菜 』って呼ぶ世界、ほしいですよねえ........
では、また次回。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!