────あの地獄みたいなコロシアイが幕を閉じてから、約半月後。
その日ははるやと組んで“ 絶望に染まった世界の復興 ”を目指していたんだけど、その途中で異質な『 水色の扉 』を見つけたのだ。
気になったおれはもちろん、はるやも疑ってはいたが。
“ 開けるだけなら ”と許可してくれたので、ふたりでその扉を開けた。
しかしその時、溢れ出した眩い光におれは思わず目をつぶってしまい───
で、名前も知らぬ高校の教室、そこの窓側の隅にある席で、
おれは今スマホをいじっていた。
......いや、目を開けたらかあさんの声が聞こえたし、
なんかパジャマ着て寝てたし、
学校に遅れるとかなんとかなんとか........
どうやら、おれは“ どこかの世界 ”に飛ばされたようだった。
さすがに現実味がありすぎる。
......と、思っている。
ちなみに、おれと一緒に扉を開けたはずのはるやはいまだに見つからない。
“ ここ ”にはいないのか、それともいるだけで見かけていないのか......
チャットアプリで連絡が取れるかと試してみたが、
ここのおれははるやとは個人チャットを繋いでないらしい。
『 おっ一ノ瀨! やっほー!! 』と挨拶されてふとそいつの顔を見ても、それはまったくもっておれの記憶に存在しない友人なのだ。
まあ.....なんだろうか、学校に行く時もその時も、
この世界の“ 記憶 ”が頭の中に入っているのか、一応乗り切れはしたんだけどな。
でも、知ってるやつがいない。
はるやだけでもいてほしい......!!
──美味しいミルクティーの作り方を教わる予定だった。
また稽古をつけてもらう予定だった。
......おれ達がいる世界じゃないのなら、そんなあいつらが存在してもいいのにな。
なんて考えごとをしていると、いつの間にかチャイムが鳴ったのか、教室が騒がしくなり始めた。
4時間目の授業はチャイムが鳴る前に終わらせたので、周りが自習をしている間にこっそりとスマホをいじっていたのだが......
弁当は持ってきていないので、購買で買って、ついでにはるやも探し───
自分の名前が呼ばれたので、適当に話を聞いて返事をしようとしたが。
『 呼んでる 』と言っていたその“ 名前 ”の既視感を思い出した途端、おれは机に滑り落ちるスマホを気にする間もなく、廊下をバッと見た。
そこには。
───“ 宮野 織桜 ”が、いた。
......表ではこうやってたわいのない会話をしているが、おれの内心はこれでもかというほど荒れている。
りお、りおだ。
姿も身長も声も口調も性格も“ 宮野 織桜 ”だ。
いや、確かに願っていた。
でもまさか......、嘘じゃ、ないんだ。
ただ。
りおの記憶は“ この世界ですごした ”ものになっている。
多分こいつは、おれの世界の“ 宮野 織桜 ”ではないんだろう。
........でも、それでも、嬉しかった。
りおがいることが、また、話せることが。
それに、りおがいるなら、ほしのだって。
79期生がいるなら、他の79期生だって。
超高校級がいるなら、他の超高校級だって。
もしかしたら.........、
それはもう、かんっぜんに、おれのために作ったと言っても過言ではないメニューだ。
絶対にそれを選ぼう。
......ま、詳しいことはまた後でだな。
今は、りおと一緒にいれるこの時間を楽しむべきだ。
そして話しながら購買に向かったが──
購買が異様なほど混雑していて、肝心の野菜マシマシサンドイッチがどこにあるのか分からない。
これほぼ全員カレー目当てってマジか、
校内人気ナンバーワンだろうなあ......
ふと、申し訳程度に設けられたフリースペースの方を見る。
──そこには、緑色の髪をサイドに束ねたやつが......
はるやだ。
制服をまとっていて少し違和感があったが、あの姿は間違いなく。
りおに財布を預け、おれは人混みをかき分けながら購買の奥に向かう。
“ ここ ”と言っていたから、このはるやも『 おれの知っている 』はるやと見ていいだろう。
そして向こうも、おれがちゃんと『 一ノ瀨 終二 』だということを理解してくれたようだ。
はるやは少し考えたあと、おれにそう説明する。
......うーん、無理か。
りおとの時間も大切にしたいしはるやともすぐに話したいけど......
残念ながら、時間をねじ曲げるほど“ 超高校級の不屈 ”は強くない。
りおにはるやのことを説明するのはめんどくさい。
いちいち頭の中でどういう関係にさせるか整理が必要だし......
だからおれ達の会話を見られる前に、約束だけしてはるやと別れることにした。
りおはおれの不振な言動について、特に怪しむような姿勢は見せなかった。
それがなんともありがたくて、でも口に出しては言えないので、先ほどの感謝にその気持ちも含めておく。
よし......とりあえず、はるやには伝えたいことを伝えきれたし。
これならチャット交換しなくても、齟齬が生まれな───
......そんな後悔を残しながら、おれとりおは中庭に向かっていった。
第1話『 みらくる ─ 。 』 終
『 日常ってすばらしい! 』
宮野くんがいるなら星乃さんもいるんでしょうか。
ヒントを申し上げますと私は恋の道標組がだーいすきです。
うちの子なのに久しぶりに書くから口調忘れてる親です.......
才食書いていたころのあたし、出ておいで(2回目)。
では、また次回。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。