皿に乗った、ふわふわ卵のオムライス。その上には、さらさらなケチャップがかけられている。
美味しそうな見た目に反し、鉄のような匂いが混じっている。原因はすぐにわかった。
両手を頬にそえ、恥ずかしそうに俺から目線を外した。
つまり、その愛情とは『血液』のことだというのが分かる。
ケチャップは普通ドロっとしたものだし、さらさらなものがあるわけない。
血液さえなければ普通に美味しそうなオムライスだったはずなのに。
あろうことか、この女はスプーンでオムライスをすくい、俺の口の前へと運んできた。
血液だと気づいたのに、誰が食べたいと思うのか。食べるならそれは、カニバリズムかその人本人を愛している人だろうな。
そう言ってさらに押し付けてくる女。俺は思わず体を後ろに下げる。するとさらに身を乗り出してくる。
この攻防戦の勝敗は火を見るより明らかで、後ろに壁がある俺の方が圧倒的に劣勢だった。
鉄の匂いがさらに濃くなり、胃の中のものが胸あたりに移動する。
外に出さぬように口に手を当てた。
そうすると、女は不機嫌そうに眉をひそめる。
一段低くなった声色に俺は目を見開く。
カシャンと近くにあった机に皿を置き。俺を見つめた。その瞳は、まるで見たこともないような生物を見ているかのようである。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!