誰もいない廃れたボロ小屋に連れてこられた。
その恐怖は言葉に表せないようなものである。気持ち悪い笑顔で連れてこられた場所で、二人きりにならないと喋れないようなこと。そして極めつけには、俺の人形を手作りするほど俺を愛しているんだ。
誰もいないところに連れてこられた、ということはいわゆる愛が重い系のソレをされてしまうということだろう。
俺の脳内が激しく警鐘を鳴らす。逃げなければ、と。
そう言うと、女は不気味な笑い声をあげた。
そして、意地でも逃がすまいと俺の腰を引き寄せ腕の中に閉じ込められた。
その瞬間に、俺の背筋に悪寒が走る。これ、まずいかもしれない。
女性らしい細い腕から力が出ているとは思えないほど、胴体がキリキリと痛めつけられる。
どうにかしてこの場を乗り切らないと。
何を言っても状況は変わらない。それどころか悪化している。
ズルズルと引っ張られ、小屋の方へと向かわされていく。
誰か、この俺を助けてくれ────!












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!