第34話

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2024/03/26 14:50
実技テストから数週間経った。
私等の国は少しずつ、暑さが増している。

あの日から変わったことといえばなんだろうか。
何人かへの私達が向ける視線は大きいだろう。
だが、視線を向けられる張本人たちも変わったようだ。
おらふくん
おらふくん
おんりー!MEN!
おおはらMEN
おおはらMEN
どうしたの
おらふくん
おらふくん
今度一緒に遊び行こ!
噂をすれば、だ。

明るく声を上げたのはワイス・ビオラ・フィーネ。
彼の家系は軍人や政治家等が多くいる。
そのため元々注目はされていたが、
今回の実技テストでその注目度は跳ね上がった。
彼は自身独自の武器を、自由に扱っていた。

彼に声をかけられたのはメン・オースティン・オハラと、ネオン・リー・グリーの二人。
彼等は今回、目立った活躍はない。
というか、彼等は最下位であった。
平凡な者たちは彼等を笑った。

『最弱だ』と。
おんりー
おんりー
いいね。どこ行きたいの
入学してから時々彼らと話すことはあった。
しかし、彼等はあんなにも優しく、微笑むような男であったか。

三人で一緒にいるとき、彼等は以前よりも楽しそうで、嬉しそうで。
おらふくん
おらふくん
あんな!スポミンていう店があっててん!
おんりー
おんりー
うん
おらふくん
おらふくん
そこのシュークリームがすごい美味しいそうなんよ!
おおはらMEN
おおはらMEN
わかった。んじゃあ、今日にでも行くか
フィーネは元々笑顔だったが、更に表情を明るくさせた。
快諾した彼等も、笑みを深くした。
???
何があったんだろ…
私は思わず呟いた。

本当に小さなそれに、彼等は気付いたのか。
聞こえるはずはない距離であったのに、深緑と淡桃の二対の瞳が僕へ向く。
きっと、私の黄色と緑の瞳はその様子をきれいに反射しているだろう。
???
警戒心すごぉ…
???
どおしたー?
???
ん?いや、目立つ人がいるなぁと
???
ああ、あの三人ね。全員かっこいいよな
???
お前に言うのも変かもだけど
???
ハハッ、私イケメンだしねぇ
???
うわ、むかつく
もう一度、そらしてしまった視線を彼等に戻すと、彼等は何もなかったようにしている。
???
仲良くなりたいよね
???
それなぁ、俺あの綺麗系の二人と仲良くなれる気がする
???
あ、ホント?私、あのサングラス?の人と仲良くなれる気がする
そんな他愛もない話に、彼等も混ざるようになったら、きっと楽しいのだろう。
彼等への少しの負い目を、無くせたらすぐにでも彼等へ話しかけるのに。
おらふくん
おらふくん
ふたりとも!ここよ!
おんりー
おんりー
spomin…
おおはらMEN
おおはらMEN
なんかおしゃれぇ
おらふくん
おらふくん
シュークリーム♪シュークリーム♪
放課後、俺達は出かけることにした。

おらふくんの言う、シュークリームの美味しい店だ。
俺達はあまり甘いものをたくさん食べたり、買い食いをしたりと、そういったことをしてこなかったので、(顔には出さないが)結構興奮している。
おらふくん
おらふくん
うーん、どうしよ、迷うなぁ…
おんりー
おんりー
…これ、美味しいね
おんりーは早速買ったようだ。

手にはチョコレートを練り込んでいると思われる、茶色のシュークリーム。
確かにおんりーは、時たま買うチョコレート系統のお菓子を好んでいると思う。
本人は気付いていないかもしれないが、他のものよりもがっついて食べるのだ。
おおはらMEN
おおはらMEN
俺はぁ、これにしよっかな
店員さんに代金を支払い、商品を貰う。

俺が選んだのは東洋の材料を使ったという。
"日本"という国の"桜"という花を使ったらしい。
淡い桃色が綺麗だと思ったのだ。
おおはらMEN
おおはらMEN
ん!んみゃい!
おんりー
おんりー
なんか、花の匂い?
おおはらMEN
おおはらMEN
んぐ…ん、うん
おおはらMEN
おおはらMEN
桜だって、ちょっとあげる
おんりー
おんりー
じゃあ俺のも一口あげる
おんりーのシュークリームは甘く、チョコチップも所々にあって美味しい。
おんりーはおんりーで、少し酸味のある味に驚いている。

おらふくんはまだ、店のショーケースを睨んでいる。
おおはらMEN
おおはらMEN
おらふくん
おらふくん
おらふくん
ん?どしたん、MEN
おおはらMEN
おおはらMEN
口開けて
おらふくん
おらふくん
おおはらMEN
おおはらMEN
開けて
戸惑いながらも開かれたおらふくんの口に、俺はシュークリームを突っ込んだ。

始めは驚いていたようだが、途中から目がキラキラとなっていった。
おらふくん
おらふくん
ほいひい…!
おおはらMEN
おおはらMEN
おらふくんはノーマルなシュークリーム買ってよ
おんりー
おんりー
いいね、シェアしながら食べよ
おらふくん
おらふくん
うん!
おらふくんは店員さんにショーケースを指差しながら、どの商品が良いかを言っている。
それに微笑んでしまうが、店員さんと他のお客さんが死にそうな顔をしているので心配だ。
心の中を見ても、『何あれてえてえ…!』とか言っていて怖い。
おらふくん
おらふくん
MEN!はい!
おおはらMEN
おおはらMEN
お、ありがとー
おらふくん
おらふくん
おんりーも!はい!
おんりー
おんりー
ありがと、おらふくんにもほら、あー
おらふくん
おらふくん
ん!あー
おんりーがおらふくんにシュークリームを食べさせる様子が、親鳥が雛にご飯をやっている様子にしか見えなかった。

それで笑ってしまった俺は悪く無いと思います。はい。
だからおんりー。睨むな。ごめんて。
おらふくん
おらふくん
んふふ!美味しいね!
おんりー
おんりー
うん、美味しいね
おおはらMEN
おおはらMEN
美味しい美味しい







































おんりー
おんりー
ね、MEN
おんりー
おんりー
さっきのあの人ってさ
おおはらMEN
おおはらMEN
そうだよな…
うる
うる
皆もこの店にいたら、悶え死ぬだろ?
うる
うる
あそこに居たのは君たちだよ…
うる
うる
フッフッフ…
うる
うる
じゃ、いつもよりも短いけど
うる
うる
じゃな
うる
うる
あと俺来年受験!オワタ
うる
うる
成績も下がってる!オワタ……………

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