is視点
「じゃあお前罰ゲームな!」
今日もいつものように、理不尽な言いがかりをつけられて弄られている。
何をしていたのかはよく知らないが罰ゲームをしなければいけないらしい。
めんどくさい。
「おい、石井に何させるー?」
「あれは?都市伝説の階段行かせよ!」
「お前それさいこー!」
都市伝説の階段とは、この学校に伝わる七不思議の一つの【階段の鏡に住む少年】のことだ。
昔、成績優秀、容姿も優れていて、運動も出来るという完璧な生徒が何故か夜中の学校に侵入して屋上から飛び降りるという事件があった。
そして、今も夜中の1:00に二階西側の階段の鏡には不気味な笑顔を浮かべたその子飛び降りている所が映るというらしい。
その子を見た者は1週間以内に必ず階段付近で事故に遭うというし……
俺怖いん無理やし……
「ごめん……俺、そういうん苦手で……」
「はぁ?」
俺の事を突き刺すような目、その目が俺は何よりも無理なんだ。
「っでも、…ええよ!」
そうだ、その言葉一つでみんなの口角が上がるんだ。……俺だけ、俺だけが辛ければ!
罰ゲームはその日に実行された。
その日の深夜、俺はわざわざ学校に侵入して二階の西側階段の踊り場に行った。
夜の学校って思ってるより怖いな……
さっさと帰ろうと思い鏡の方を見ていた。
すると、俺の後ろの窓にしっかりと人間らしきものが映った。
しかし、ここまでは噂どうりだが、笑顔ではなく、驚いているような表情を浮かべている。
ただ、驚いたのは俺も同じだ。
つい振り向いてしまったが、そこにはその子はいなかった。
そりゃ、そうだと思い、また鏡の方を向くとそこにはこの学校の前の制服を着たその子が立っていた。
俺は思わず腰を抜かしてしまったが、その子は構わず俺の頬に手を伸ばした。
あぁ……殺される。連れて行かれる。……でも、その方が、楽…なのかな?
「…ねぇ……、殺っ、して……?」
彼は俺の頬にある、いじめっ子につけられた傷を優しく撫でて言った。
「君……虐められてるやろ?」
「なっ……なんで?」
「そりゃ、いつも見てるし……だいたい、ここに来る奴なんか調子乗りの軍団か、一人のいじめられっ子しかおらんし」
「そう……なんや…。………俺の事も殺すん?」
「別に殺さんよ。お前顔可愛いし」
「はぁ!?かわっ……、そんな訳無いやろ!!」
そうだ。親兄弟からも醜いと罵られ、殴られた痣だらけな顔面が可愛い訳無いだろう。
きっとこいつはおそらくかなり長い間ここで一人だから、感覚がバクってしまったのだろう。
きっとそうだ!
「なぁ、名前なんていうん?」
「なっ、名前?」
「惚れた奴の名前くらい知りたいやん」
……惚れた?こいつが俺に?霊が人間に?
「石井、……誠一やけど……」
「石井!俺は新山!下の名前は忘れた」
「………名前忘れたん?」
「何十年も一人やねんで!?忘れるやろ……」
「そーいうもんなん?」
…………てか、普通に会話してるけどこいつ霊なんだよな。
こうやって油断させて連れてかれるかも……
「おい!何やってんだ!」
うっわ……厳しい事で有名な先生や、今日に限って
「すみません……忘れ物が…」
「そうか、まんまり夜はこの階段使うなよ」
「はい、すみません…」
「なんかあっても文句は言えないからなっ!」
もう帰ろうと立ち上がった所を、先生に押されて階段から突き落とされた。
「あっ………」
そこで俺は全てを理解した。新山は誰も殺していないんだ。全部全部こいつのせいで……
半ば諦めて手を伸ばすと、その手が誰かに握られた。
あぁ……新山
先生は突然現れた新山を見て、とても驚いた顔をして立ち尽くしていた。
しかし、新山に首を掴まれて鏡の奥に連れて行かれてしまった。
そして、俺もそこで意識を失った。
朝起きると、普通に自室のベッドの上で寝ていた。
そうか、全部夢だったのかと思い少し悲しくなった。自分の居場所を見つけた気がしたのに…
朝の支度をして、制服を着て、さあ出発しようと思った時、制服のポケットに知らない何かが入っている事に気がついた。
取り出すと、赤黒く汚れた学生証らしきものだ
字は所々読めないが名前の欄には、はっきりと
【新山 士彦】と書いている
昨日見た夢も相まって一瞬背筋が凍る。
「大好き…」
誰もいないはずの耳元で小さく聞こえたその声は確かに聞き覚えがあった。











編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。