<炭治郎side>
お風呂から上がると、義勇さんはもう2人分の布団を敷いてくれていた。
俺がせめてものお礼にやろうと思っていたことを先にやられていて、俺はしばしの間遠い目をする。
すると、俺の気配を感じたのか、何かの書物を読んでいた義勇さんが顔を上げて俺を見た。
義勇さんはそう言って、俺が着ている薄い乳白色の浴衣に触れる。
実は、俺が今着ているこの浴衣は、義勇さんのものなのだ。
泊まろうと準備してきたわけじゃないから寝間着を持っていなかった俺に、義勇さんが貸してくれた。
だが、やはり俺と義勇さんの身体の大きさは全然違うわけで。
頑張って帯を閉めてギリギリまで身体に合わせてみたけれど、まだぶかぶかだ。
俺がぶかぶかの併せを押さえながらぺこりと頭を下げると、「ああ」という素っ気ない返事が返ってきた。
俺が頭を上げようとすると、バサリと俺の腕から何かが落ちる。
落ちたものは、義勇さんが貸してくれた身体を拭く用の布だ。
1度持って帰って洗濯してから返そうと思って持ってきたのだ。
俺が慌てて布を拾う前に、義勇さんが素早く布を拾った。
そしてその布を、そのまま俺の頭に被せ、わしゃわしゃと頭を掻き回された。
驚いて声を上げると、義勇さんは俺の顔の正面に垂れている布を持ち上げた。
そして、いつもの何の感情も読めない、何とも言えない表情で俺を見た。
義勇さんは素っ気なくそう言って俺の頭を布をしっかりと被せる。
どうやら、水滴が滴っていた俺の髪を拭いてくれていたようだ。
俺が慌ててそう言って自分で髪を拭き始めると、義勇さんは満足したように目を細めた。
そして、読んでいた書物に栞を挟み、本棚に戻す。
義勇さんは、書物を本棚に戻しながらそう言った。
俺は、そうお礼を言いながら自分の髪をわしゃわしゃと拭く。
そんな俺を見て、義勇さんはもう一度満足したように目を細めた。
そして、自分もお風呂に入ってこようと俺に背を向けた。
俺がまだ水滴が残っている髪を拭きながら言うと、義勇さんがピタリと動きを止めた。
そして、くるりと俺を振り返る。
その表情は不機嫌そうに歪められており、眉間に皺が寄っている。
何か不味いことでも言っただろうか、と記憶を辿るけれど、そんなに不味いことを言った覚えはない。
どうしたものか、と義勇さんと向き合っていると、先に義勇さんが口を開いた。
どうやら、俺が「待っている」と言ったことが悪かったらしい。
だとしても、義勇さんを待たずに先に寝るなんてことは、俺にはできない。
俺は、絶対に譲らないぞ、という思いを込めて義勇さんの瞳を見つめる。
すると、義勇さんは少しだけ眉をピクリと動かして俺を見返した。
しばらくそうやって見つめあっていると、月が動いたのか、窓から月光が差し込んできた。
その光を反射して、義勇さんの瞳がキラリと光る。
俺はその珍しい色に、少しだけ驚いて目を見開き、パッと笑顔を浮かべた。
義勇さんは、急に笑顔を浮かべた俺を不思議そうに見る。
だが、俺はお構いなしに義勇さんに近寄り、しっかりとその瞳を覗き込んだ。
そう、義勇さんの瞳は、夜の色をそのまま映したような綺麗な紺碧をしていたのだ。
ずっと長い前髪の影になって黒く見えていたから、てっきり黒い瞳をしているのかと思っていた。
やや黒みを帯びた青色だから、影になってしまっていると黒く見えるのだ。
でも、今月光に反射して煌めいている義勇さんの瞳は、確かに青色だ。
凄く綺麗な、深い深い夜の色。
そしてこの青色は、義勇さんの___、
突然俺に近寄られて驚いていた義勇さんは、俺のその言葉を聞いてハッと目を見開いた。
その紺碧の瞳には、俺が映っている。
だけど義勇さんは、俺の奥に何かを見ているような、そんな目をした。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!