勝利side
——正直に言えば、俺はこの人が何を考えているのか、分かったことなんて一度もない。
ふと、横を見る。
あなたは画面をスクロールしながら、何かを考えているような、考えていないような顔をしている。眉が少しだけ下がっていて、でも、どこか楽しそうで。
…今、この人は、どこにいるんだろう。
同じ部屋にいるのに、頭の中は全然別の場所を歩いている気がする。
🥂「……なに?」
視線に気づいたのか、あなたが顔を上げた。
❤「あ、いや」
俺は一拍遅れて、言葉を探す。
❤「ぼーっとしてた」
🥂「それ、私のセリフじゃない?」
❤「俺もしてたんだよ、笑」
「なにそれ笑」なんて言って小さく笑う。
その笑い方すら、いつからか“知っているはずのもの”じゃなくなっていた。
——この人は、掴めそうで、掴めない。
❤「いや、あなたっていつも何考えてんのかなって」
ずっと気になっていたことだ。
🥂「えー?笑 未来のことかなあ?笑」
…未来?
❤「斜め上の回答だった…未来って何?」
🥂「んーいろいろだよ?今日の夜ご飯どうしよーとか、10年後自分はどうなってるんだろう…とか…」
❤「そっか、なるほどね」
——あなたが見ている未来に、俺はどのくらいの距離で立っていられるんだろう。
並んで歩けるのか。それとも、少し後ろなのか。
…あるいは、もう別の道なのか。
あなたが見据えた未来に、俺もいたい。
なんて思ってしまうのは、あまりにもわがままだ。
これはきっと、期待とか希望とか、綺麗な言葉で呼べるものじゃなくて。恋とか愛とか、ちゃんと名前がついている感情でもなくって。
ただ、あなたの世界から自分だけが静かに外れていく想像に、耐えられないだけなんだと思う。
そんな理由で未来にいたいなんて、俺もまだまだ子どもだ












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!