あなたside
「ねえ、あなた髪切ったりしないの?」
昼休み、購買帰りの廊下。
友達が、何気なく私の髪をつまみながら言った。
🥂「んーー……」
答えは、いつも同じ。
切りたい気持ちは、ずっとある。
でも、切れない。
肩よりずっと下まで伸びた髪は、
気づけば“自分”みたいになっていて。
短くした自分を、どう想像していいのか分からなかった。
「中学からずっと伸ばしてるじゃん?似合いそうだけどなあ、ショート」
🥂「いや、絶対無理!笑」
そう言って笑いながら、
内心ではちくっとする。
ショート、正直憧れてる。ずっと。
昔読んだマンガの女の子みたいに、ぱっと華があって、可愛くて、迷いがなさそうな
1回だけミディアムにしたことがあるけど、それ以上は
どうしても踏み切れなかった。
「俺はボブ派!」
突然、後ろから声が飛んできて、
心臓が一瞬で跳ねた。
💜「え、なになに?髪型の話?」
振り向くと、そこにいたのは3年の先輩。
同中出身の菊池風磨。
ちょっとチャラくて、
ちょっと距離感がおかしくて、
なのに目が合うと、やたらドキッとする人。
…そして、私が3年間ずっと片思いしてた人。
🥂「え、あ、あの……」
💜「星宮ずっとロングだよね」
🥂「は、はい」
……なんで、急に?
あなたの友達の名前がくすっと笑う。
「風磨先輩、急に会話入ってくるじゃないですか」
💜「いいじゃん。気になったから」
軽い調子なのに、
その視線は、ちゃんと私の髪を見ていた。
💜「俺はボブ派だって言いに来た」
胸が、ぎゅっとなる。
ロング私を見て、ボブが好きとか言わないでよ。
🥂「……」
💜「俺、ボブ派だけど」
一歩近づいてきて、
私の長い髪に目をやる。
💜「今の星宮の髪、嫌いじゃないよ」
その一言で、
喉の奥が熱くなった。
——嘘でもいいから、褒めてよ。
そんな言葉が、頭をよぎる。
🥂「……今は自信ないけど」
💜「うん?」
🥂「自分を好きになれたときに切ります笑」
少しだけ、冗談っぽく言ったつもりだった。
でも、声が震えてたのは、自分でも分かった。
💜「それ、切ったら俺期待するよ?」
🥂「…」
💜「ま、今のままでも似合ってるから星宮が決めなね、俺いつまでも待てるし。」
🥂「…ほんとに?」
💜「嘘に見える?」
🥂「ちょっとだけ」
💜「おいっ!!」
切ったら、1番に風磨先輩に見せるから。
そのときは似合ってなくても、嘘でもかわいいって言って褒めてくださいね
いつの間にか席を外してくれたあなたの友達の名前にはあとでアイスでも奢ろう、笑








![まさき[短編集]](https://novel-img-gcs.prepics-cdn.com/prcmnovel-tokyo-prod-converted-images/p/ZNnNW3qsarfytcLipf9qdAtLVMh2/cover/01JZ2XXRSPJQFP1CEZ1E5FQJRA_resized_240x340.jpg)



編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!