それは、十二月一日…自分の誕生日のことだった。
その日、マイと自分は誕生日プレゼントを買いに、少し遠くまで出掛けていた。
その時は、純粋に楽しい、嬉しいと感じていた。
笑えていた。
そして、その帰り、電車に乗るために駅にきていた。
人が多かったが、運良く先頭に並ぶことが出来た。
…今思えば、『運良く』じゃなく、『運悪く』だったんだろう。
ホームにアナウンスが流れた。
『まもなく一番乗り場に電車が通過します。危ないですから黄色い線の内側にお下がりください…』
快速列車が通過するというアナウンスだった。
だから、あまり気に止めていなかった。よそ見をしていた。
そして、ふとマイの方に、線路の方に目を向けた。
その時、
マイは、そこには、居なかった。
そう認識した瞬間、列車が通りすぎていく。
自分の頬に返り血がついた。
マイが、
いや、マイの『顔だけ』がホームに落ちてきた。
つんざく悲鳴、面白そうにスマホを構える人、なにもせず立ち尽くす人、駅員を呼びに行く人…
自分は動かなかった…動けなかった。
マイも…動かない。
自分はその状況をすぐには理解出来なかった。
…マイ?
どうしたの、
なんで、そんなところにいるの、
なんで、動かないの、
なんで、首から下がないの、
なんで、目を開けないの、
なんで、笑ってくれないの
なんで、なんで、なんで、
さっきまで、話してたのに、
さっきまで、笑ってたのに、
さっきまで、動いてたのに、
さっきまで、さっきまで…
ああ。
そうか。
死んじゃったんだ。
理解した時、自分の罪の意識に押し潰されそうになった。
自分がなにか、違う行動をしたら、身代わりになっていれば、マイは、マイは…
…そこからは、良く覚えていない。
ただ、その日、お母様も死んでしまったこと。
これからは孤児院に住むことになること。
その話を警察の人がしていたのを覚えている。
それと、
原因は、分からないが、
その時から、自分は、
なにも、感じなくなっていた。笑えなくなっていた。
その事も、覚えている。
アキラくんの夢の詳しい詳細ですね。
書いてて辛くなった…だって!目の前で親友が死んだんですよ!?さらに、お母さんも死んで、しかもその日誕生日って…私だったら耐えられません。
でも、一番辛いのは、なにも感じないことですね…
悲しそうな顔してたのは、その日々が戻ってこないからなんでしょうか…
それでは!将来のニートでした~
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。