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『君と見た、豊幾原の夏』 ――完全版・超長編青春恋愛小説――

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『君と見た、豊幾原の夏』
――完全版・超長編青春恋愛小説――
作:HASMA
協力:豊幾原市長
プロローグ あの夏へ
――時は、現代。
この物語は、南陸地方にある大都市、豊幾原市から始まる。
東京より少し小さい。
けれど、それでも十分に巨大な都市だった。
中心部には高層ビルが並び、巨大な商業施設が集まり、道路には朝から多くの車が走っている。
そして、街の中心には南陸地方最大級のターミナル駅があった。
〇〇駅。
〇〇新幹線。
〇〇線。
〇〇線。
〇〇鉄道。
そして複数の地下鉄。
毎日、数え切れない人々が、この駅を行き交う。
会社へ向かう人。
学校へ向かう学生。
遠くへ旅行する人。
誰かを待つ人。
誰かを見送る人。
そんな人々の中に、一人の少年がいた。
高橋陽翔、十六歳。
千葉県鎌ケ谷市で生まれ育った。
鎌ケ谷での生活は、陽翔にとって当たり前だった。
駅へ歩き、電車に乗る。
学校へ行き、友達と話す。
放課後には寄り道をする。
休日には東京へ出ることもある。
東京近郊の街。
それが陽翔にとっての「普通」だった。
だからこそ、豊幾原へ引っ越すと決まったときも、「田舎へ行く」なんていう感覚はなかった。
豊幾原もまた、大きな都市だったからだ。
ただ――
鎌ケ谷とは違う。
東京とも違う。
海があり、山があり、その間に巨大な街が広がっている。
そんな街だった。
そして陽翔はまだ知らなかった。
この街で出会う一人の少女が、自分の高校生活を、そして自分の「夏」という季節の意味を、大きく変えてしまうことを。
第一章 鎌ケ谷を離れる朝
「忘れ物ない?」
母親の声がした。
「ないって」
陽翔は靴を履きながら答えた。
玄関には段ボールが積まれている。
引っ越し業者が運び出した荷物も多い。
壁には、何もなくなった部屋。
昨日まで自分の部屋だった場所が、もう知らない部屋のように見える。
陽翔は玄関を出る前に、一度だけ振り返った。
「……じゃあな」
誰に言うでもなく呟く。
家を出る。
駅へ向かう道。
何度も歩いた道だった。
春の風が吹いていた。
桜はもうほとんど散っている。
「鎌ケ谷とも、しばらくお別れか」
父親の仕事の都合で、家族で豊幾原へ引っ越す。
高校も転校する。
新しい街。
チャプター
全2話
891文字










