俺は悠佑。みんなからは、アニキって言われとる。
今は授業中。退屈な先生の授業中やから、校庭を眺めてるんやけど…。
今は初兎のクラスが、体育をやってるみたいやな。
サッカーをやってるみたいで、必死にボールを蹴っとる。
思わず声に出た。思わず声に出るほど、必死にボールを追いかけて走ってる姿は、小動物みたいで可愛い。
初兎の蹴ったボールがゴールに入ったらしく、チームの子達とハイタッチを交わしてる。
…最近、初兎が誰かと話しとると、胸がもやっとする。
すると水色髪の子が初兎に駆け寄って、
ここまで聞こえるような声で叫んだ。
ほとけはただただ、声がデカイ。
放課後になると、初兎と会える。初兎とっていうか、みんなとやけどな。
いつもの集合場所へ向かっていると、ないふが居た。
ないことまろは、付き合いたてのカップル。俺もいつか、初兎とこんな風になれたらな、とか…。
今は使われていない旧校舎の一室。そこが俺達の集合場所。
教室の扉を開けると、既にりうらとほとけが居た。
どか、と椅子に腰を下ろす。何気にスマホをいじっていると、
脈絡もなく言われて、ドキンッと心臓が跳ね上がる。
しばらくそんなふうに雑談を交わしていると、教室の扉が開いて、ないこと初兎が入ってきた。
まろがないこに飛びついて、危うく倒れそうになる。
その後、アホなほとけを中心に勉強会が始まった。
いつも通り賑やかな勉強会やった。
悠くんが帰ると、静けさに包まれる。
正直、悠くんが俺の事を好きなのは知っとる。
勉強会の時もずっと俺の方見とったし、今日の体育の時も教室から見とったし。気づかない方が難しいと思う。
そして俺も…悠くんの事、気になってる。
本人は気づいてへんと思うけど。
りうらの一言でその場は収まる。
そしてみんなに背中を押され、明日チョコ渡して告るぞ、と意気込んだ俺でした。
3000円しか持ってきてないんやけど、足りるやろか…
都合よく近くに居た女子高生1
「どれも高いねー、どれ買う?」
都合よく近くに居た女子高生2
「うーん、高いから手作りする?」
都合よく近くに居た女子高生1
「あ、確かに!手作りした方が安いもんね。それにあの人も喜んでくれそう!」
手作りやったら安いし、あにきも喜ぶ…
意気込んで、俺は手作りのコーナーに向かう。
無事(?)買い物を済ませて、帰宅。
数分後。
その頃ないふは。
なんやかんやトラブルもあったが、ついに……。
翌日。校舎の屋上。
今日、俺は初兎に呼び出されて屋上に来ている。初めは驚いたけど、告白するチャンスやと思って、チョコもちゃんと持ってきた。
でも時間になっても、初兎の姿が見えない。
探しに行こうかと1歩踏み出した時、屋上の扉が開いた。
初兎は呟きながら、俺の前に立つ。
言葉に迷っているのか、初兎は視線をさ迷わせる。
初兎は咳払いをして、俺を見つめる。
初兎は幾度も深呼吸を繰り返して、俺を見た。
思考が止まる。
徐々にその言葉を理解して、俺は狼狽えた。
断言されてぐっと言葉につまる。
思わずしゃがみこんで頭を抱える。
名前を呼ばれて、顔を上げる。初兎の背中から夕日が覗いて、その表情が隠れる。
初兎は背中に回していた手を解く。その手には紙袋が握られていた。それを俺に突き出す。
名前を呼ぶと、初兎はビクリと震えた。俺は手に持っていた箱を差し出して、
その時、扉が物凄い勢いで開いた。入ってきたのは。
みんなやった。
まろが言いながら初兎をつつく。
こういう騒がしさは、俺たちらしいと思う。
また新しく、関係が始まるんだと思うと、心が弾んだ。
これからも6人で、変わらず仲良くしていきたい。
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。