第12話

第10話:兄弟共鳴――《フォリア・アエテルナ》 ――二人分の禍名なら、二人で背負えばいい
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2026/09/10 03:06 更新
夜明け前の屋上。

冷たい風が吹き抜ける。

木葉秋紀と、その兄。

十年ぶりに並んだ二人の前には、無数のヴァンピールが立っていた。
兄が低く言う。
木葉秋紀
木葉秋紀
嫌だ
木葉秋紀
木葉秋紀
嫌だって
木葉は即答した。

兄が眉を寄せる。
木葉秋紀
木葉秋紀
……
木葉秋紀
木葉秋紀
だったら
秋紀は一歩前へ出た。
木葉秋紀
木葉秋紀
二人で止めればいい
木葉秋紀
木葉秋紀
無茶じゃねぇよ
木葉は笑った。
木葉秋紀
木葉秋紀
俺たち、兄弟だろ
その言葉に。

兄の表情が止まった。
木葉秋紀
木葉秋紀
ああ
木葉秋紀
木葉秋紀
十年も離れてたんだぞ
秋紀は拳を握る。
木葉秋紀
木葉秋紀
だったら、これから十年分取り戻せばいい
兄の瞳が揺れる。
木葉秋紀
木葉秋紀
俺はもう、昔みたいなガキじゃねぇ
黒い葉が舞う。
木葉秋紀
木葉秋紀
自分の力くらい、自分で背負える
緑の葉が重なる。
木葉秋紀
木葉秋紀
だから――
木葉は兄を見る。
木葉秋紀
木葉秋紀
一人で抱えるの、終わりにしようぜ
兄の《禍名》が大きく揺れた。

黒い魔力が噴き出す。
木葉秋紀
木葉秋紀
兄ちゃん!
兄が叫ぶ。
木葉秋紀
木葉秋紀
――っ!
秋紀が足を止める。

兄の身体を。

黒い葉が覆い始めていた。
木葉秋紀
木葉秋紀
兄ちゃん!
黒い紋様が腕から肩へ広がる。
兄は苦しそうに息を吐く。
木葉秋紀
木葉秋紀
……
黒い魔力がさらに膨れ上がる。
秋紀は目を見開いた。
木葉秋紀
木葉秋紀
それって……
兄が顔を上げる。
木葉秋紀
木葉秋紀
……そうか
秋紀は静かに言った。
木葉秋紀
木葉秋紀
じゃあ
兄が驚く。
木葉秋紀
木葉秋紀
戻ればいいんだろ
木葉秋紀
木葉秋紀
二人とも
木葉は自分の胸元へ手を当てる。
木葉秋紀
木葉秋紀
戻る場所を作ればいい
背後から。
木兎光太郎
木兎光太郎
木葉!
木兎の声が飛んできた。
木兎光太郎
木兎光太郎
俺たちがいる!
木葉が振り返る。
木葉秋紀
木葉秋紀
……木兎
木兎光太郎
木兎光太郎
帰る場所ならある!
赤葦も頷く。
赤葦京治
赤葦京治
梟谷もあります
猿杙が笑う。
猿杙大和
猿杙大和
勝手にいなくなるなよ
鷲尾も静かに続ける。
秋紀の目が少し潤む。
木葉秋紀
木葉秋紀
お前ら……
木兎が笑う。
木兎光太郎
木兎光太郎
だから!
拳を突き上げる。
木兎光太郎
木兎光太郎
帰ってこい!
兄は。

その光景を見ていた。
秋紀が笑う。
木葉秋紀
木葉秋紀
ほら
木葉秋紀
木葉秋紀
俺、一人じゃねぇんだよ
兄は。

ほんの少し目を伏せた。
木葉秋紀
木葉秋紀
だから
木葉は手を伸ばす。
木葉秋紀
木葉秋紀
兄ちゃんも、一人じゃねぇ
その瞬間。

兄の手が。

木葉の手を掴んだ。
木葉秋紀
木葉秋紀
……!
**ドクン。**

二人の《禍名》が共鳴する。

黒い葉が舞い上がる。
赤葦京治
赤葦京治
木葉さん!
赤葦が叫ぶ。
赤葦京治
赤葦京治
下がってください!
木葉秋紀
木葉秋紀
大丈夫!
木葉は叫ぶ。
木葉秋紀
木葉秋紀
赤葦!
赤葦京治
赤葦京治
はい!
木葉秋紀
木葉秋紀
もし俺が暴走したら――
一瞬。

木葉が笑った。
木葉秋紀
木葉秋紀
殴ってでも止めてくれ
赤葦京治
赤葦京治
……分かりました
木葉秋紀
木葉秋紀
木兎!
木兎光太郎
木兎光太郎
おう!
木葉秋紀
木葉秋紀
俺が戻れなくなったら――
木兎光太郎
木兎光太郎
絶対戻す!
木葉秋紀
木葉秋紀
……頼んだ
兄の《禍名》が。

完全に姿を現した。

黒い翼のような魔力。

木葉の《禍名》と呼応する。

二つの禍名。

二つの魂。

十年間分の痛み。

恐怖。

孤独。

後悔。

すべてが一気に流れ込んでくる。
木葉秋紀
木葉秋紀
――っ!
秋紀は息を呑んだ。
木葉秋紀
木葉秋紀
何だ……これ……
頭の中に。

兄の記憶が流れ込む。
一人。

暗い部屋。

少年だった兄。

木葉が眠っている隣で。

一人泣いている。
小さな声。
場面が変わる。

兄が敵に囲まれている。
兄が笑う。
そして。

場面が変わる。

木葉が遠くからバレーをしている姿。

兄は物陰から見ている。
声は届かない。
また。

別の日。

木葉が試合で失敗する。

悔しそうに俯く。

兄は遠くで拳を握る。
誰にも聞こえない声。
秋紀の目から。

涙が落ちた。
木葉秋紀
木葉秋紀
……兄ちゃん
兄も同じように泣いていた。
木葉秋紀
木葉秋紀
嫌だ
木葉秋紀
木葉秋紀
だからだよ
木葉は手を離さない。
木葉秋紀
木葉秋紀
兄ちゃんが一人で抱えてた十年だろ
木葉秋紀
木葉秋紀
俺にも見せろよ
黒い魔力が。

一気に膨れ上がる。

ヴァンピールたちが騒ぎ出す。
一斉に襲いかかる。

木兎たちが前へ出る。
木兎光太郎
木兎光太郎
行かせねぇよ!
木兎が叫ぶ。

赤葦も続く。
赤葦京治
赤葦京治
木葉さんの邪魔はさせません
木兎光太郎
木兎光太郎
――行くぞ!
木葉は。

兄と手を繋いだまま。

目を閉じた。
木葉秋紀
木葉秋紀
……兄ちゃん
木葉秋紀
木葉秋紀
……怖い
秋紀は笑う。
木葉秋紀
木葉秋紀
じゃあ、一緒だ
木葉秋紀
木葉秋紀
だったら
木葉の《永名》が輝く。
木葉秋紀
木葉秋紀
一緒に乗り越えようぜ
三つの名前。

真名。

禍名。

永名。

それぞれが。

二人の間で共鳴する。

そして――

**新しい魔力の輪が生まれた。**
兄が呟く。
秋紀が目を開く。
木葉秋紀
木葉秋紀
違う
木葉秋紀
木葉秋紀
もっと別のものだ
二人の魔力が。

黒と緑の螺旋になる。
木葉秋紀
木葉秋紀
俺たちは
秋紀が言う。
木葉秋紀
木葉秋紀
互いの禍名を消すんじゃない
兄が続ける。
木葉秋紀
木葉秋紀
そう
木葉が笑う。
二人の声が重なる。
**――轟ッ!!**

屋上を覆っていた黒い魔力が。

一瞬で。

巨大な樹木へと変わった。

黒い幹。

緑の葉。

白い花。

その中心に。

二人が立っている。
ヴァンピールたちは。

誰も動けなかった。
赤葦京治
赤葦京治
むしろ……
赤葦が呟く。
赤葦京治
赤葦京治
二人の力を、一つの形にしている……
木兎が笑った。
木兎光太郎
木兎光太郎
木葉すげぇ!
木葉秋紀
木葉秋紀
いや、俺だけじゃねぇよ!
木葉が叫ぶ。
木葉秋紀
木葉秋紀
兄ちゃんと一緒だからだ!
兄は。

自分の手を見る。

黒い紋様が。

少しずつ薄くなっている。
木葉秋紀
木葉秋紀
どうした?
木葉秋紀
木葉秋紀
え?
兄は自分の胸に手を当てる。
木葉が笑う。
木葉秋紀
木葉秋紀
そっか
木葉秋紀
木葉秋紀
ん?
木葉秋紀
木葉秋紀
……
秋成は照れくさそうに笑った。
その直後。

屋上の向こうから。

拍手が聞こえた。
仮面の男
仮面の男
――素晴らしい
全員が振り返る。

そこに。

一人の男が立っていた。

昨日、木葉の前に現れた男。
木葉秋紀
木葉秋紀
……お前
> 挿入されたアイテム
仮面の男
仮面の男
ええ
男は微笑む。
仮面の男
仮面の男
想像以上でした
兄が前に出る。
仮面の男
仮面の男
あなたなら知っているでしょう
男の胸元。

三つの名前。

しかし。

その一つが。

異様なほど黒く染まっている。
兄が息を呑む。
仮面の男
仮面の男
そうです
男は笑う。
仮面の男
仮面の男
私は――
一瞬。

風が止まる。
仮面の男
仮面の男
**あなたたちの父親に仕えていた者です。**
木葉秋紀
木葉秋紀
……父親?
木葉の顔が強張る。

兄も。

明らかに動揺していた。
木葉秋紀
木葉秋紀
父さんは……
木葉が問う。
男は答えない。

ただ。

秋紀へ一枚の紙を投げる。

木葉が受け取る。

古い記録。

そこには。

一つの名前。

そして。

その横に書かれた文字。
《永名適性者・木葉秋紀》

・ **第一継承者**
木葉秋紀
木葉秋紀
……第一?
木葉が呟く。

兄の表情が変わる。
木葉秋紀
木葉秋紀
何?
兄が低い声で言う。
木葉秋紀
木葉秋紀
……
木葉は紙を見る。

頭の中が真っ白になる。
木葉秋紀
木葉秋紀
じゃあ
ゆっくり顔を上げる。
木葉秋紀
木葉秋紀
俺が狙われてたのって……
男が答えた。
仮面の男
仮面の男
あなたが強いからではありません
木葉秋紀
木葉秋紀
……
仮面の男
仮面の男
あなたの中にある《永名》が――
男は笑う。
仮面の男
仮面の男
**一族そのものを変えてしまう力だからです。**
秋紀は。

紙を握りしめた。

兄が隣に立つ。
木葉秋紀
木葉秋紀
……ああ
秋紀は兄を見る。

そして。

笑った。
木葉秋紀
木葉秋紀
当然だろ
朝日が昇る。

二人の影が。

地面に並んで伸びていく。

十年ぶりに。

兄弟の影が。

同じ方向へ。
山本文(木兎文)
山本文(木兎文)
泣けそう
山本文(木兎文)
山本文(木兎文)
一章は感動系

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