第119話

第117話 お茶🦦
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2026/05/31 11:00 更新
明(めい)
ショウタロウ‥くん?
しっかりとシャツを掴まれているのにどこか頼りなげに感じるショウタロウ君の手を見つめる
明(めい)
(どうしたんだろう‥ショウタロウ君らしくない、酔ってるのかな?)
明(めい)
あの‥
ショウタロウ
…
ショウタロウ
ごめんなさい‥
ショウタロウ君は握っていたシャツから手を離すと申し訳なさそうにうつ向いた
明(めい)
大丈夫だよ
そうだ‥水、水飲む?
それともお茶の方がいいかな?
ショウタロウ
‥お茶を、、
お茶もらってもいいですか?
明(めい)
分かった
お茶だね
用意してくるから、カウンターに座ってて
ここは後で僕が片付けるから
片付けの続きをしようとする俺の手を掴んで明さんがカウンターで待っているように告げる
ショウタロウ
‥わかりました
厨房の中へ入って行く明さんの後ろ姿を見送りながら、危うく自分の気持ちを打ち明けてしまいそうになったことにヒヤッとする
ショウタロウ
(あぶなかった‥勢いあまって変なこと言うとこだった‥って、自分の気持ちが変なことって‥)
何も口にしなかったことに安堵しながらも、伝えられなかった気持ちが不完全燃焼に終わって心の中で燻る
明(めい)
お待たせ
お茶あったかいのにしたけど、もし冷たいのが良かったなら氷持ってくるよ
ショウタロウ
いえ、そのままで‥
ありがとうございます
カウンターに座り、明さんが用意してくれた湯呑みに触れる
少し熱いくらいの温かさが伝わってきて、自分の指先が思った以上に冷えていたことに気づいた
その冷えが酔いのせいなのか緊張からくるもののせいなのか分からなかったが、指先を温めるように湯呑みにしばらく黙って触れ続ける
明(めい)
ごめん、熱かった?
やっぱり氷‥
ショウタロウ
いや、ほんとに大丈夫です!
ちょっとぼんやりしちゃって‥
やっぱり俺も酔ってるのかな
明(めい)
そうかもね‥
晴人くんも大丈夫 かな
晴人の名前が出てきて、先ほどの怒りがぶり返してくる
表立って態度に出しはしなくてもその俺の小さな気持ちの変化に気づいたのか、明さんの声は尻すぼみに小さくなった
ショウタロウ
あいつは‥
デミョンがいるんで、大丈夫です
明(めい)
そうだね‥
ショウタロウ
(はぁ、ほんとに明さんは人の気持ちに気づき過ぎる‥そこが明さんの素敵な所だけど‥心配になる)
二人の間に沈黙が流れる
明(めい)
ぉ、お茶ね、緑茶なんだ‥
緑茶ってアルコールの分解を早めたり利尿作用があるから体から排出するのを促してくれるらしいよ
ショウタロウ
そう‥なんですか
湯呑みを持ち上げて口へ運ぶ
鼻に近づくにつれ、鼻腔をくすぐる緑茶の爽やかな匂いがした

ショウタロウ君が帰って行ったあと、片付け途中だった机の上をきれいにして店を出た
明(めい)
疲れた‥

帰り道、誰もいない夜道で本音が漏れる
ショウタロウ君から晴人君に対してもっと腹を立てるべきだと言われたが、正直、腹を立てていない訳ではない

同じ日本人同士だし韓国のように上下関係がそこまで厳しい訳ではないとは思うが、それでも初対面の年上に対して酔っていたとはいえあの態度はないだろうと思う
上下関係に厳しい兄貴だったら、正拳突きくらい喰らわしていたかもしれない

だけど‥晴人君が話していたことは失礼だったけど事実だった
明(めい)
初めて来た人にもやばい状況の店だって思われるのって、ほんとにマズいよな‥
少しでも状況を良くしようとやれる事をやっているつもりではいた
だけど、まだ足りていない何かがあるのかもしれない‥
明(めい)
考えないとな‥
ショウタロウ君にあんな顔もうさせたくないし
悔しそうに怒りに震えていたショウタロウ君の顔を思い出す
辛そうな表情で何か言いたげに俺のシャツを掴んだ時、ショウタロウ君は何を言おうとしていたのだろう‥
考えても答えが出てこないと分かっている問いを夜空を見上げながら考えた
あの日以来、晴人とは少し距離を置いて接している

晴人自身は変わらない態度で話しかけてくるし、俺も表面上は今までと変わりなくしているつもりだから晴人と俺以外の周りの人達は誰も気がついていないだろうが
デミョン「ショウタロウさん、少し時間いいですか?」
ショウタロウ
デミョン、もちろんいいよw
デミョンから珍しく声がかかる
ショウタロウ
どうしたの?
何か仕事の話?
デミョン「いや‥仕事の話ではないんですけど‥」
ショウタロウ
‥?
なに、悩み事とか?
デミョン「悩みごと‥ではあります。僕の悩みではないですけど‥」
少し言いにくそうに話すデミョンを見て、晴人のことだろうと思った
明(めい)
晴人のこと?
デミョン「‥はい。平気そうにしてますけど、この間のこと気に病んでます」
ショウタロウ
気に病んで‥
気に病んで当然だろ
自分でも信じられない位に冷たい声と言い方だったと思う
聞いたことのない声にデミョンが少し動揺しているのを感じた
デミョン「そうですね。初対面の‥しかも目上の方にあんな態度、普通なら考えられません。だけど‥」
デミョンが何か言いかけて黙る
ショウタロウ
だけど、なに?
デミョン「いや、韓国で‥唯一頼れて尊敬する大好きな先輩が他の人と仲良くしてるのを見て酔いもあって焼きもちをやいてしまったんだと思います。態度や言い方は非常にまずかったと思いますけど、それ位に彼も必死だったのかと‥」
ショウタロウ
…
他の誰かと仲良くしているのを見て焼きもちをやいたのではと話すデミョンの言葉を聞いて、自分と重なる
俺は晴人のように相手を攻撃したりはしなかったが、それでも勝手に傷ついて、きちんと事情を説明して謝ろうとしてくれた明さんから距離をとった
デミョン「だから、その‥」
ショウタロウ
わかった‥
すぐに俺のこの感情を整理できるとは思わないけど、ちゃんと考えるから
デミョン「ありがとうございます。ショウタロウさんも‥晴人君みたいにとは言いませんが、押し込めようとばかりしないで自分の気持ちに素直になって下さいね」
ショウタロウ
え?
デミョン「がんばって下さい。時間とってもらって、ありがとうございました」
デミョンは優しく俺に微笑むと自席へと戻って行った

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