第55話

Wedding party
1,565
2024/11/05 08:08 更新
ビニ
ビニ
よかったわ。
ジソンの妄想じゃなくて。
俺の発言にチャニが苦笑する。
あれから一年弱、紆余曲折あって、ジソンの結婚式、というほど格式張ったものではないが、
結婚のパーティーに呼ばれて夫婦揃って出席している。
リクス
リクス
チャニ、ご飯食べる間、ミノ抱っこしておいて。
ビニ
ビニ
あ、俺するわ。
おじちゃんとこおいでー、ミノヤー♡
俺の猫撫で声にリクスも笑いながらミノを預ける。
弟とリクスの間に産まれた姪っ子が可愛くて、毎回色んな服やおもちゃを買って日参してたら、
イエナには呆れられ、リクスには怒られた。

俺の隣はと言うと、ロングドレスのイエナが脚を組んで座っている。
そんな華美なデザインではないが、膝下あたりからスリットが入っていて、
長身のイエナによく似合ってる。

そんな彼女に気を取られていたら、ご機嫌のミノにベシッと叩かれ、
伊達メガネがズレた。
チャニ
チャニ
こらこら、ミノ。
ビニ
ビニ
いいんでちゅよー、おじちゃん、強い女は好きですからねー。
イエナ
イエナ
…きも。
イエナの口から漏れた本音にリクスがケタケタ笑う。
リクスとイエナはその芯の強さが共通するところがあるのか、中々気が合うようだった。

俺にそんな冷たい一言を食らわせたイエナの左手には、1年ほど前に彼女にプレゼントしたダイヤ付きの指輪が光っている。
『普段つけないからこんなに高いのじゃなくていいのに…。』とブツブツ言っていたが、
一生に一度の贈り物だから、ちゃんとしたものを贈らせて、と懇願したら、しぶしぶ受け入れてもらえた。
ジソン
ジソン
チャンビニヒョン、ヌナ、チャニ、リクス来てくれてありがと。
あとミノちゃんも。
.
あぶっ!
ジナ
ジナ
かっ、かわいいっ!
ミノのご機嫌な受け答えに俺たちのテーブルに挨拶に来たジソンとジナさんが目尻を下げる。
リクス
リクス
ジナー!!おめでとうっ、すっごくきれい!
ジナ
ジナ
ありがと。
リクス
リクス
ジソンにやなことされたら、うちにいつでも来ていいからね?
ジソン
ジソン
おいこら、リクス。
リクスがジソンの方をみていたずらっ子のように笑う。
二人は本当に仲が良いようで、一見ジナの方がしっかりしてるようだが、リクスの方が色々と世話をやいているようだ。
ジナ
ジナ
あ、ジソン…。
ジナがジソンのタキシードの裾をくぃっと引っ張って、物言いたげにジソンの方を向く。
ジソン
ジソン
あぁ、…チャンビニヒョン。
ジナがお礼言いたいんだって。
ビニ
ビニ
…俺に?
全く心当たりがなくてキョトンとしていると、ジナがジソンの後ろに半分身を隠しながら喋り出す。
ジナ
ジナ
あの…、私の高一の時に、ジソンアに曲を作ってもらったんですが、
その際にかなりチャンビニさんにお手伝いいただいたとお聞きして。
ビニ
ビニ
あ、あぁ。
そういえば、10年ほど前にそんなこともあったな、と思い出す。
ジソンが高校生くらいの時から機材貸してだの、アドバイスくれだの、CD貸せだの、色んなお願い事をされていたから、そのうちの一つだと思って、今言われるまで思い出すことはなかった。

そうか、この子だったのか。
作ったことないヨジャ向けの楽曲で、うんうん唸りながらジソンが奮闘してたのは、
ジナの為だったのか。
ジナ
ジナ
その際は、私のわがままのせいで、色々とありがとうございました。
…あと、チャンビニさんと、イエナさんのファンなんです。
イエナ
イエナ
へっ?いや、私単なる雇われで、作曲なんてしないんだけど。
思わぬところで自分の名前があがって、イエナが我関せずと飲んでいたスープをこぼす。
ミノの食べこぼしの対応に慣れたチャニが、間を空けずにお手拭きを渡すのが面白い。

そんな俺たちの反応に、ジナがジソンのことを見上げた。
ジナ
ジナ
この前のジソンの曲、イエナさんが編曲したって聞いて。
それがすごくよかったんです。
原曲も聞いたからなおさら、とジナが続けて、ジソンが目を丸くしている。
ジソン
ジソン
おまっ、散々俺の曲かっこいいとか、好きとか言ってたくせに?!
ひどくね?!
ジナ
ジナ
ジソンアの曲はカッコいいよ?
でもイエナさんが編曲したことで、いい意味で大衆受けしたから、あんなヒットしたんじゃん。
ジソン
ジソン
ぅぐっ…。
ぐうの根も出ないというのはこのことを言うんだろう。
ジソンは何か言い返そうと口をパクパクしてるが、言葉が出てこないようだ。
イエナ
イエナ
私の編曲は、ジソンさんの原曲あってのものですから。
0から1を生み出すのは、私にはできないことです。
ジソン
ジソン
ヌナ…。
ジナ
ジナ
私も、ジソンの曲は大好きです。
…イエナさん、ジソンが趣味に走りすぎたら、ストッパーになってください。
ジソン
ジソン
おいおい、ジナ…。
チャニが、ジソンが奥さんに振り回されている、と言っている意味がよくわかったような気がする。
一番見た目に反して大人しそうなのに、天然で結構侮れない。

その後のパーティーでも、ジナはサプライズで来てくれたメンバーと事務所社長に歓喜して、
それこそサプライズで披露した曲に、ジナパートを社長が踊るのに大笑いし、
挙句の果てには自分も踊りたい!とハイヒールを投げ捨てて参加して、ジソンを慌てさせていた。
最後には、そのテンションのまま、ジソンを『一緒に踊ろ!』と引っ張り出す始末だ。
かなりの天真爛漫さに、周りは笑っているが、ジソンはへとへとになっている。
イエナ
イエナ
ま、ジソンにはあれくらいの方がいいのかもね。
そう言って、いつの間にかにイエナがちびちびとお酒を飲んで、目元を赤くしている。
ビニ
ビニ
…イエナ、そのくらいにしておいてよ?
イエナ
イエナ
だいじょーぶ。
…もし、酔って寝たとしても、アンタが持って帰ってくれるでしょ?
そう挑発的に言われて、心臓に矢が突き刺さる。
いつまで経っても、隣の美人には勝てそうにない。
ビニ
ビニ
あぁ、もちろん。
だって、この筋肉はそのためにあるんだから。

イエナと同じ部屋に帰れることに幸せを感じながら、俺はもう少しこの騒がしいパーティーを楽しもうと、ステージに目を向けた。



END

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