俺の発言にチャニが苦笑する。
あれから一年弱、紆余曲折あって、ジソンの結婚式、というほど格式張ったものではないが、
結婚のパーティーに呼ばれて夫婦揃って出席している。
俺の猫撫で声にリクスも笑いながらミノを預ける。
弟とリクスの間に産まれた姪っ子が可愛くて、毎回色んな服やおもちゃを買って日参してたら、
イエナには呆れられ、リクスには怒られた。
俺の隣はと言うと、ロングドレスのイエナが脚を組んで座っている。
そんな華美なデザインではないが、膝下あたりからスリットが入っていて、
長身のイエナによく似合ってる。
そんな彼女に気を取られていたら、ご機嫌のミノにベシッと叩かれ、
伊達メガネがズレた。
イエナの口から漏れた本音にリクスがケタケタ笑う。
リクスとイエナはその芯の強さが共通するところがあるのか、中々気が合うようだった。
俺にそんな冷たい一言を食らわせたイエナの左手には、1年ほど前に彼女にプレゼントしたダイヤ付きの指輪が光っている。
『普段つけないからこんなに高いのじゃなくていいのに…。』とブツブツ言っていたが、
一生に一度の贈り物だから、ちゃんとしたものを贈らせて、と懇願したら、しぶしぶ受け入れてもらえた。
ミノのご機嫌な受け答えに俺たちのテーブルに挨拶に来たジソンとジナさんが目尻を下げる。
リクスがジソンの方をみていたずらっ子のように笑う。
二人は本当に仲が良いようで、一見ジナの方がしっかりしてるようだが、リクスの方が色々と世話をやいているようだ。
ジナがジソンのタキシードの裾をくぃっと引っ張って、物言いたげにジソンの方を向く。
全く心当たりがなくてキョトンとしていると、ジナがジソンの後ろに半分身を隠しながら喋り出す。
そういえば、10年ほど前にそんなこともあったな、と思い出す。
ジソンが高校生くらいの時から機材貸してだの、アドバイスくれだの、CD貸せだの、色んなお願い事をされていたから、そのうちの一つだと思って、今言われるまで思い出すことはなかった。
そうか、この子だったのか。
作ったことないヨジャ向けの楽曲で、うんうん唸りながらジソンが奮闘してたのは、
ジナの為だったのか。
思わぬところで自分の名前があがって、イエナが我関せずと飲んでいたスープをこぼす。
ミノの食べこぼしの対応に慣れたチャニが、間を空けずにお手拭きを渡すのが面白い。
そんな俺たちの反応に、ジナがジソンのことを見上げた。
原曲も聞いたからなおさら、とジナが続けて、ジソンが目を丸くしている。
ぐうの根も出ないというのはこのことを言うんだろう。
ジソンは何か言い返そうと口をパクパクしてるが、言葉が出てこないようだ。
チャニが、ジソンが奥さんに振り回されている、と言っている意味がよくわかったような気がする。
一番見た目に反して大人しそうなのに、天然で結構侮れない。
その後のパーティーでも、ジナはサプライズで来てくれたメンバーと事務所社長に歓喜して、
それこそサプライズで披露した曲に、ジナパートを社長が踊るのに大笑いし、
挙句の果てには自分も踊りたい!とハイヒールを投げ捨てて参加して、ジソンを慌てさせていた。
最後には、そのテンションのまま、ジソンを『一緒に踊ろ!』と引っ張り出す始末だ。
かなりの天真爛漫さに、周りは笑っているが、ジソンはへとへとになっている。
そう言って、いつの間にかにイエナがちびちびとお酒を飲んで、目元を赤くしている。
そう挑発的に言われて、心臓に矢が突き刺さる。
いつまで経っても、隣の美人には勝てそうにない。
だって、この筋肉はそのためにあるんだから。
イエナと同じ部屋に帰れることに幸せを感じながら、俺はもう少しこの騒がしいパーティーを楽しもうと、ステージに目を向けた。
END

















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。