扉を開けると、日差しがよく差し込んでる部屋にリクスが迎えてくれる。
中央にキャスター付きの小さなベッドが置かれていた。
俺は何度か訪れた部屋なので、後ろの二人に先に入るように促す。
入り口付近で佇んでいるスンミンさんを結構な力でリノさんが押し込む。
そう言うと、リクスは中央のベッドから、まだそのふにゃふにゃの赤子を抱えた。
重さ自体はそんなにないのだが、なんせ首も座っていないその頼りない子を抱くのは、何度かチャレンジしたが、まだ慣れない。
リクスはこの数日で、手慣れた様子で赤子を腕におさめる。
リクスがそう抱いた赤子をスンミンさん、リノさんに見えるように、というより、赤ちゃんが二人の存在を認識できるように、少しだけ傾ける。
スンミンさんが感激したように両手で口を覆う。
リノさんも、先程のスンミンさんに見せたあたりの強さはなりを潜めて、目尻を下げている。
そう言うと、スンミンさんが手元の携帯を操作して、ほらっ!とリノさんの赤ちゃん時代の写真を見せる。
画質は悪いが、確かに顔の造形が似ている。
聞くと、リノさんの幼い頃の写真を時系列で携帯に保存してるらしい。
後でぶっ壊す。
そんな物騒な物言いが聞こえたのはきっと俺だけではなく、
リクスも呆れて肩をすくめている。
先日無事に参院で出産を済ませたリクスは数日を赤ちゃんと共に病院で過ごして、
予定では明日退院の予定だ。
床上げまで里帰り予定のリクスは、リノさんに迎えにきてもらうことになっている。
里帰り中は、なるべく休みに顔を出す予定だが、ちょうど締め切りに重なってしまうので、どれだけ時間が作れるかわからない。
バシッとリノさんに叩かれて、スンミンさんが涙目になる。
俺とリクスは、そんな二人を横目に、見つめ合うと同じタイミングで笑った。
いつになくため息の多い私に、ビナが心配そうに顔を覗き込む。
首を横に振ると、ビナが不思議そうな顔をした。
ビナは心配そうな表情をしたが、それ以上詮索しない。
無用な心配をさせてしまっただろうか。
特段関係が悪いわけではないのだが、実家が苦手なのは事実だ。
車窓から外を眺めて、少しずつ風景が変わっていくのを感じる。
ロスから帰ってきてから、再就職してから、色々理由をつけて帰っていなかった。
一番歳の近い妹に電話で泣きつかれて、そろそろ限界を感じ始め、帰郷を決意する。
電車で2,3時間だから、土日会えない旨をビナに伝えると、楽しんで!と快く送り出してくれた。
こうなったら、連れてくのもいいだろう。
実家での集中砲火が、少し分散するかもしれない。
そんな邪な思いもあった。
ビナの表情には驚きの中に喜びを隠しきれてない。
その表情を見て、やっぱりやめてと言えるほど私は人が悪くない。
少し早まった気がするが、実家に帰ると言う気の重いイベントに、嬉しそうな同行者がいるのも悪くないかもしれない。
それが10日ほど前。
二人の関係は大っぴらにしない、そうビナは勝手に決めてるが、これだけ浮かれてると無駄なのではないだろうか。
チャニが呆れながらも予定をブロックしてくれて、ジソンがブツブツ言いながらも仕事を変わってくれた。
そう言いながら、私は気持ちを切り替えるよう、駅で買った昼食を取り出した。

















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。