第52話

察しのいい弟
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2024/11/02 08:30 更新
イエナ
イエナ
はい、チャニ。これ。
チャニ
チャニ
えっ、なに…?
そう言って私がチャニに紙袋を渡すと、チャニは不思議そうな顔をして覗き込む。
イエナ
イエナ
結婚祝い。
大したものじゃないけど。
チャニ
チャニ
…ありがとう!開けてもいい?
イエナ
イエナ
どうぞ。
チャニが意外と乱雑に包装紙を解いて、中身を出す。
ルームウェアブランドのお揃いのガウンで、メンズはネイビー、レディースの白を取り出し、
わぁ、と感嘆の声をあげた。
チャニ
チャニ
ありがとう!
リクスも喜ぶよ!
イエナ
イエナ
いえ。このブランド、ベビーウェアも出してるから、産まれたらお揃いにしても可愛いと思う。
チャニ
チャニ
リクスに、イエナに相談してから、ちょっとプレゼントのセンス良くなったんじゃ?って言われたけど、さすがだね。
イエナ
イエナ
お返しとかいらないからね。
いっつも差し入れしてくれてるでしょ。
そう言って、オフィスの片隅に置かれている軽食やスナックを指差す。
忙しい時はお世話になってるから、いつものお礼でもある。
チャニ
チャニ
そんな気を使わなくても。
社割とかで安く買ったのとか、サンプル品も多いから。
そう言ってチャニが目を細める。
すると、その目線が私の手元に移った。
チャニ
チャニ
イエナも…、ビナと上手くいった?
イエナ
イエナ
あ、あぁ。まぁ。
チャニ
チャニ
そう、よかった。
ビナに強くお願いされた通り、彼にプレゼントされたシルバーのリングが光ってる。
さすがにまだそんな高いものをプレゼントしてもらえない、と言い、
それでも好きなブランドショップで好きなもの選んでいいから、と彼に引きずられ、選んだもの。
それを彼の言う通り、左手の薬指につけている。
イエナ
イエナ
…ビナから何か聞いた?
チャニ
チャニ
いや、意外とデリカシーあるから自分から言いふらしたりしないよ。
チャンビニは。

…でも、浮かれてるから、わかっちゃうよね。
そうなのだ。
虫除けしたい!みたいな子供っぽい独占欲を出したかと思うと、
対して職場でオープンにしたらやりにくいだろうから、と案外大人しくしている。
それでもこの聡い弟にバレてしまうくらいには露呈してはいるようだ。
チャニ
チャニ
まぁ、弟としては、普段つけないアクセサリーつけ始めたらね。
わかっちゃうかも。
好きなブランドを告げると、日が開かないうちに連れて行ってくれたチャンビナ。
私が数ある指輪をはめたり外したりを繰り返して、『これがいいかな』と指差すと、
嬉しそうに店員さんに『これ、プレゼント用にお願いします』と声をかける。
イエナ
イエナ
『…ビナは、いらないの?』
ビニ
ビニ
『えっ…?!』
イエナ
イエナ
『買ってもらうばっかりじゃ、悪いから。』
この前の高い鉄板焼きだって、そのほかにも二人で出かける度、私は全くお財布を出していない。
さすがに悪いな、と思い、せっかくならと提案する。
ビニ
ビニ
『いや、指輪は、さすがに二人で同じタイミングでつけたら、なんか思われちゃうかな、って。』
イエナ
イエナ
『確かに。』
いや、俺はいいんだけどね!とビナはフォローするように声を上げる。
私はショーウィンドウに目を走らせると、一つのアイテムが目に入った。
イエナ
イエナ
『じゃあ、これは?』
指さしたのは私が選んだリングと同じシリーズのネックレス。
シルバーに少しくすんだ加工がされていて、私が選んだアイテムもユニセックスで使えそうなデザインだから、男性がつけても違和感がないはずだ。
店員さんにショーウィンドウから出してもらうようにお願いすると、快く対応してくれる。
イエナ
イエナ
『後ろ向いて。』
ビニ
ビニ
『うん…。』
言われる通りに後ろを向く彼の首に手を回す。
華奢なネックレスの留め金をとめて、振り向くように伝えた。
イエナ
イエナ
『うん、似合ってる。
鏡見てみたら?』
されるがままのビニが少しおかしい。
イエナ
イエナ
『もう少しモチーフが大きくてもいいと思うけど。
普段アクセサリーとかつけないんだったら、このくらいの方が気にならないと思う。』
どう?と固まってる彼を覗き込むと、ブンブンと首を縦に振る。
私はそれに笑って、『これもお願いします。』と、ビニの首からネックレスを外して伝えた。

会計でもどっちも払うというビナと押し問答があったのだが、
『あなたが私に色々やってあげたいと思うように、私もやりたいんだから。』
と伝えると大人しくなった。
チャニ
チャニ
騒がしい兄だけど、頼りがいがあっていい人だから。
これからもよろしくね。
イエナ
イエナ
うん。知ってる。
チャニより過ごした年月は短いけど、彼の魅力は十分すぎるほど伝わっている。
照れ隠しに視線を外す私に、チャニが微笑んで、紙袋を少し持ち上げるとありがとう、と改めて礼を言われた。

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