前の話
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その日、誰が最初に気づいたのかは分からない。
ただ、楽屋に入った瞬間、SixTONES全員が同時に違和感を覚えた。
「……あれ?」
樹が声を落とす。
「ダディ、喋んなくね?」
ソファの端に座った髙地優吾は、珍しくスマホも見ず、ぼーっと天井を見ていた。
「おーい、髙地?」
ジェシーが顔を覗き込む。
「……ん」
「反応うっす!」
普段なら
「ジェシー近い!」
「樹、ちゃんと水飲め!」
って言ってる人が、今日は何も言わない。
北斗が静かに近づいて、隣に腰を下ろした。
「……疲れてる?」
その一言で、髙地は一瞬だけ目を伏せてから、小さく頷いた。
「……ちょっとだけ」
その“ちょっとだけ”が、全員のスイッチを入れた。
「え、なにそれ」
慎太郎が目を丸くする。
「ダディが弱音吐いた!」
「弱音ってほどじゃないんだけど」
と髙地は言いながら、声がいつもより低い。
大我が少し考えてから、ぽん、と自分の肩を叩いた。
「ここ、使う?」
「……いいの?」
「いいよ」
一瞬ためらったあと、髙地は大我の肩にもたれた。
その動きがあまりに自然で、でも見慣れなさすぎて、全員が固まる。
「え、ちょ、可愛くない?」
「ダディが甘えてる」
「歴史的瞬間だろこれ」
「……見るなよ」
髙地が小さく言う。
「見るに決まってんじゃん」
樹が笑いながら言う。
「いつも俺らの面倒見てんだから、今日は逆な」
ジェシーが反対側から近づいて、
「じゃあ俺は背中担当ね」
と勝手に決めて、ぽんぽんと叩き始めた。
「ちょ、ジェシー」
「いいじゃん、ダディ」
「……やめろって言ってないからな」
慎太郎は床に座りながら、髙地の足元を見て言う。
「なあ、無理して元気なふりすんなよ」
「……してないつもりだったんだけどな」
北斗が静かに続ける。
「してるよ。めちゃくちゃ」
少しの沈黙。
「……じゃあ、今日は」
髙地がぽつりと言う。
「今日は、みんなに甘えてもいい?」
「もちろん」
「むしろ今まで何だと思ってたの」
「遅いくらい」
京本の肩に顔をうずめて、髙地は小さく笑った。
「……ありがと」
「どういたしまして、ダディ」
「今日はダディじゃない」
「じゃあなんて呼ぶ?」
とジェシー。
少し考えてから、樹が言った。
「……優吾」
髙地は一瞬驚いて、それから、すごく柔らかく笑った。
「……それでいい」
その日、SixTONESの中心には
“世話をする人”じゃなくて
“守られてる髙地優吾”がいた。
そして誰も、
それを特別だとは思わなかった。











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!