第4話

初めての買い物
494
2026/07/22 11:46 更新



























朝の仕事を終えた頃。




私は使用人部屋でエプロンを外していた。
あなた
ふぅ……


コンコン。
執事
神崎様
執事
坊っちゃまがお呼びです
あなた
私ですか?
執事
はい
あなた
(また仕事かな?)


そう思いながら応接室へ向かう。














コンコン。
あなた
失礼します


部屋へ入ると、蓮はソファに座って資料を読んでいた。
目黒蓮
来たか
あなた
はい
目黒蓮
出掛ける
あなた
……え?
目黒蓮
今から
あなた
どこへ?
目黒蓮
買い物
あなた
買い物?
目黒蓮
制服以外の服ないでしょ
あなた
……

私は自分の服を見る。





確かに、持っている服は数着だけ。
あなた
でも大丈夫です
目黒蓮
大丈夫じゃない
あなた
仕事着があれば十分なので
目黒蓮
十分じゃない
あなた
え?
目黒蓮
使用人でも外へ行くことはある
あなた
……
目黒蓮
服は必要
あなた
でも、お金が……
目黒蓮
経費
あなた
いやいや!
目黒蓮
使用人に必要なものだから
あなた
そんな高い服じゃなくていいです!
目黒蓮
わかった
あなた
わかってくれました?
目黒蓮
高くない店に行く
あなた
そういう意味じゃ…
















30分後。




黒塗りの高級車がショッピングモールへ到着した。
あなた
えっ
あなた
ここですか?
目黒蓮
うん
あなた
普通のショッピングモール?
目黒蓮
普通
あなた
(よかった…)


ブランド街に連れて行かれると思っていた。



















店内。
目黒蓮
これとか?


蓮が一着手に取る。




私は値札を見る。
あなた
さん……


3万円。
あなた
無理無理無理!
目黒蓮
あなた
これ普通じゃないです!
目黒蓮
普通
あなた
どこの普通ですか!
目黒蓮
いつもこれぐらい
あなた
価値観がおかしい!


周りのお客さんがクスッと笑う。















結局。




私が選んだのは五千円ほどのワンピース。
あなた
これで十分です
目黒蓮
安い
あなた
十分なんです!
目黒蓮
……


蓮は黙ったまま別の商品を見る。











数分後。




会計。




店員が袋を差し出す。





「ありがとうございました。」





私は袋を受け取り、頭を下げた。
あなた
ありがとうございます


店を出ようとした、その時。
あなた
あれ?
目黒蓮
……?
あなた
1つ多い


蓮は何事もないように歩いている。
あなた
目黒さん!
目黒蓮
あなた
袋2つあります!
目黒蓮
うん
あなた
私1着しか買ってませんよ!
目黒蓮
もう1着買った
あなた
だれが!?
目黒蓮
あなた
なんでですか!


蓮は当然のように答えた。
目黒蓮
似合うと思った


私の足が止まる。
あなた
え?
あなた
今なんて?


蓮は不思議そうに振り返る。
目黒蓮
似合うと思った
あなた
…………
あなた
(え、今、"似合う"って言った?)


執事の言葉を思い出したのか、それとも本心なのか。




私の頬が少しだけ赤くなる。
あなた
そ、それなら最初からそう言ってください!
目黒蓮
言った
あなた
最後に!
目黒蓮
結果同じ
あなた
違います!
目黒蓮


蓮は本気で分かっていない。
















帰りの車。




静かな空気。




私は袋を膝の上に置いていた。
あなた
(似合うって…)


嬉しかった。でも
あなた
(絶対分かって言ってない)


隣を見る。




蓮は窓の外を眺めている。
目黒蓮
……


私は小さく笑った。
あなた
ありがとうございます


その声に蓮は少しだけこちらを見る
目黒蓮
うん


それだけ。




でも、その返事はどこか柔らかかった。





車は夕日に染まる街を走り抜けていく。




二人ともまだ気づいていない。




この何気ない買い物が、少しずつお互いの距離を縮め始めていたことを。



























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