第101話

EP.101 二つの影
556
2024/05/01 08:00


相談をしてからというもの、ドラコは私に付きっきりだった。

どこへ行くにも、ドラコが隣にいた。

寮が違うので、どうしても授業は別になることがある。そんなときでも、休み時間を狙って様子を見に来てくれた。
あなた
ドラコ
ドラコ・マルフォイ
ドラコ・マルフォイ
ん??
あなた
心配してくれるのは嬉しいけど
さすがにここまでは……
ドラコ・マルフォイ
ドラコ・マルフォイ
??
ドラコ・マルフォイ
ドラコ・マルフォイ
あ……、すまない。
ドラコが顔を上げると、目の前には女子トイレがあった。入り口の前で苦笑いをするあなたを見て、ハッと気づいた。
あなた
ちょっと待っててね!
しばらくしてトイレから出ると、少し離れたところでドラコは、壁に寄りかかって待っていた。

気を遣ってくれたのか、思ったより遠くで待ってくれている姿に、笑みが溢れた。
あなた
お待たせしました…!(笑)
ドラコ・マルフォイ
ドラコ・マルフォイ
何を笑ってる?
あなた
んーん!!
私たちは当たり前のように、手を繋いだ。

日が落ちて、あと1時間ほどで夕食の時間。
大体の生徒は寮で過ごしたり、すでに大広間で集まっていたりと過ごし方は様々だが、人気の少ない廊下、

手を繋いで歩くのは絶好のチャンスだった。
ドラコ・マルフォイ
ドラコ・マルフォイ
夕食まで時間があるな
11月下旬というのに、珍しく暖かい夜。

廊下の柱の隙間から、月明かりが見え隠れしていた。雲一つない夜空に思わず息を呑んだ。

こんな日にドラコと想いを伝えあったな…っと思い出にふけていると、居ても立っても居られなかった。
あなた
ねぇ、ちょっと座って話さない?
私が外を指さすと、「あの場所か」と気づいたのか、ドラコは進んでいた向きとは反対に足先を向け、外に続く階段へ連れて行ってくれた。


木に寄りかかりながら座ったドラコ。

その隣に座ろうとすると、腕を引っ張られてドラコの足の間に座らされた。


背中から彼の温もりを感じた。

ドラコの腕が回ってきて、ギュッと抱きしめてきた。
そして、私の肩に頭をそっと置いた。
新学期が始まってから怒涛の日々を過ごしていたが、嬉しいことに毎日ドラコとは顔を合わせていた。だけど、こうしてゆっくりする時間は取れてなかったんだと、より一層今になって感じた。

ドキドキするのに、何故かすごく落ち着いて、心地いいこの時間が幸せだった。
ドラコ・マルフォイ
ドラコ・マルフォイ
夏休み明けてから怒涛の日々だったな。
私の肩に顔をうずめながら、小さな声で言った。
あなた
ねぇ、私も同じこと思ってた…(笑)
ドラコ・マルフォイ
ドラコ・マルフォイ
思ったより監督生の仕事が多い
あなた
そうね。新入生も入ってきたし、
今が一番忙しいかもね。
もう少ししたら落ち着くって言ってた。
ドラコ・マルフォイ
ドラコ・マルフォイ
あなたに会えるからいい
あなた
あら、それは私もよ!
忙しいけどドラコに会えるから平気!
ドラコはクスッと笑った。
ドラコ・マルフォイ
ドラコ・マルフォイ
最近どうだ?
きっと例の嫌がらせのことだろう。

ドラコが付きっきりで隣にいるからなのか、どうかは分からないけど、ここ2週間は特に何も起こらなかった。
あなた
何もないの。驚くほど。
ドラコ・マルフォイ
ドラコ・マルフォイ
…そうか。
でもまだ用心してくれ。
嫌がらせなんてされてなくて、本当にたまたま不思議なことが続いただけなんじゃないかな、と思えてきた。
ドラコ・マルフォイ
ドラコ・マルフォイ
新しいローブは?
あなた
名前の刺繍してもらわないといけないし、
今お店に頼んでるところ!
もうすぐ届くと思うよ!
ドラコ・マルフォイ
ドラコ・マルフォイ
ローブがないとこの時期は冷えるだろ
ドラコは「スカートももう少し下にズラせないのか、短いな」と嫌そうな顔をしながら、私のスカートの裾を引っ張った。
あなた
やめてよ!くすぐったい!(笑)
ドラコ・マルフォイ
ドラコ・マルフォイ
前から思ってたんだ
あなた
最近は丈が短いの流行ってるんだって!
ドラコ・マルフォイ
ドラコ・マルフォイ
流行りとかはどうだっていい…
複雑そうな表情をしながら、ドラコは頭をかいた。


そのときドラコの手首に光るブレスレットが、視界に入った。
思わず腕を掴んで、空に向かって掲げた。

私はズンっと後ろに寄りかかり、更にドラコの腕の中に深く包まれた。
あなた
本当に綺麗ね。
光に当たるとより一層。
月明かりでキラキラとストーンが光った。
ドラコ・マルフォイ
ドラコ・マルフォイ
そうだな。
ドラコ・マルフォイ
ドラコ・マルフォイ
恋人になる前から、お互い肌身離さず身につけてるが、今思えば好きって言ってるみたいなもんだったな
あなた
あの時は深く考えてなかったけど…
でも…本当ね。
あの時からお互い特別だったんだろうね。
ドラコは私の首元に手を伸ばして、ネックレスに優しく触れた。
ドラコ・マルフォイ
ドラコ・マルフォイ
本当に綺麗だな
ネックレスを見つめながら、優しく呟く彼の声に、ドキドキして心臓の鼓動の音がうるさい。

ネックレスのことを言ったと分かっているのに、まるで自分に言われたかのように思ってしまう。

徐々に体温が上がっていった。




ドラコはネックレスから手を離して、私の首元に触れた。



その手はゆっくりと上に上がっていき__




頬に触れた。




触れているドラコの手に力が入り、ぐいっと後ろに引き寄せられた。自然と目が合った。

恥ずかしくて思わず視線を逸らそうとしてしまったが、ドラコの瞳に吸い込まれるように、しばらく見つめあった。

甘い時間が流れていた。

ドラコの指が、私の唇にそっと触れた。



ドラコ・マルフォイ
ドラコ・マルフォイ
愛してるよ


胸が苦しい。

見つめられるだけで、
名前を呼ばれるだけで、

愛おしさが込み上げてくる。


そんな愛しい人に、愛されている私はもう何も怖いものはないんじゃないか。






月明かりに照らされた二つの影は、ゆっくりと一つに重なった。










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