眉は怒りに吊り上がり、剥き出しの眼は血走り、口の端から覗いた舌がぬらりと光る。
両腕に抱えていた時行を放り投げ、自身の鞘から鉈を抜く。
彼は薙刀を振りかぶると、刃が空気を裂き、耳をつんざく風鳴りを残して迫ってくる。
その動きには理性のかけらもなく、ただ怒りと憎悪に突き動かされた猛禽の一撃だった。
薙刀の刃が振り下ろされるたび、耳を裂くような風切り音が響いた。
私は鉈を構え、必死に受け止めるが、長柄を操る彼の力強さに押され、じりじりと後退を強いられる。
火花が散り、腕に痺れる衝撃が幾度も走った。
狂気の声に押し潰されそうになりながら、必死に刃を受け流す。
鉈は剣よりも短く、間合いでは明らかに不利。
だが、その重みと頑丈さこそが唯一の望みだった。
やがて、武者の薙刀が大きく振りかぶられる。
その瞬間を、私は待っていた。
地を蹴り、身を低く滑り込ませるように前へ。
鉈の刃が薙刀の柄を強かに打ち砕き、響いた音とともに敵の手元が大きく揺らいだ。
驚愕の隙を逃さず、渾身の力で鉈を振り上げる。
鈍い光を帯びた刃が、敵の肩口へと叩きつけられた。
呻き声とともに薙刀が落ち、狂気の眼は一瞬にして恐怖に変わる。
握った鉈は血と汗に濡れた。
不利を覆し、己の力で掴んだ勝利に、周囲の空気が一変した。
数週間後。
次の任務を聞くために、私達逃若党は一部屋に集められていた。
そんな内容を聞いてか、時行の頬は紅潮していた。
そうして逃若党は、信濃府中にある深志砦に向かったのだった。











編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。