第36話

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2025/08/30 07:46 更新



赤沢新三郎
よくも殿の俺への評価を下げてくれたな

眉は怒りに吊り上がり、剥き出しの眼は血走り、口の端から覗いた舌がぬらりと光る。

赤沢新三郎
口先と剣術だけの餓鬼共!
赤沢新三郎
俺の武芸で諏訪ではなく土に帰りな!
あなた
離れろ若君!

両腕に抱えていた時行を放り投げ、自身のさやから鉈を抜く。

彼は薙刀を振りかぶると、刃が空気を裂き、耳をつんざく風鳴りを残して迫ってくる。

その動きには理性のかけらもなく、ただ怒りと憎悪に突き動かされた猛禽の一撃だった。

赤沢新三郎
その身で味わえ!
赤沢新三郎
お前の歳より長い年月鍛えた剣裁きを!

薙刀の刃が振り下ろされるたび、耳を裂くような風切り音が響いた。

私は鉈を構え、必死に受け止めるが、長柄を操る彼の力強さに押され、じりじりと後退を強いられる。

火花が散り、腕に痺れる衝撃が幾度も走った。

あなた
(流石だな、経験から違う…)
赤沢新三郎
どうした、小娘!殿からの評価を下げた報いを、ここで受けよ!

狂気の声に押し潰されそうになりながら、必死に刃を受け流す。

鉈は剣よりも短く、間合いでは明らかに不利。

だが、その重みと頑丈さこそが唯一の望みだった。

やがて、武者の薙刀が大きく振りかぶられる。

その瞬間を、私は待っていた。

あなた
もう終いだ

地を蹴り、身を低く滑り込ませるように前へ。

鉈の刃が薙刀の柄を強かに打ち砕き、響いた音とともに敵の手元が大きく揺らいだ。

驚愕の隙を逃さず、渾身の力で鉈を振り上げる。

鈍い光を帯びた刃が、敵の肩口へと叩きつけられた。

呻き声とともに薙刀が落ち、狂気の眼は一瞬にして恐怖に変わる。

握った鉈は血と汗に濡れた。

不利を覆し、己の力で掴んだ勝利に、周囲の空気が一変した。







数週間後。

諏訪頼重
今回の逃若党の任務は…
諏訪頼重
伝令でございまする
北条時行
…伝令?

次の任務を聞くために、私達逃若党は一部屋に集められていた。

諏訪頼重
戦場から戦場を駆け回り、報告や指示を伝える役です
諏訪頼重
今回は戦場が複数あり範囲も広大
諏訪頼重
各戦場と重要な情報を確実に共有する為に…
諏訪頼重
絶対に捕まらない伝令が欲しいのです

そんな内容を聞いてか、時行の頬は紅潮していた。

北条時行
絶対に捕まってはいけない…
北条時行
なんて難しい…
諏訪頼重
目標は、以前のように味方の被害を最小限に留める事
諏訪頼重
この三つの戦場には、三大将が少数の精鋭を率い極秘の援軍として向かっています
あなた
(なるほど)
諏訪頼重
三者の戦場を巡り、我が懐刀の人となりも知って下され

そうして逃若党は、信濃府中にある深志砦ふかしとりでに向かったのだった。



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