蝶は羽ばたく、どこまでも______
咲夜は軽くため息をつき、しのぶの真横で腕を組み直した。夜風が二人の衣擦れを靡かせる。
咲夜の声には呆れ混じりの苛立ちが含まれていた。
しのぶはゆったりと首をかしげ、にこりと返す。
咲夜の表情が一瞬硬くなる。冷たい月光の下で鋭く言い放つ。
しのぶは淡々とした口調で、しかしその瞳には含みを持たせて答えた。
短く返した咲夜は恐る恐るとしのぶの方を見る。
咲夜は半眼のまま隣を見やり、吐き捨てるように言った。
しのぶは夜空に身を委ねながら、楽しげに息を漏らす。
咲夜は呆れたように肩をすくめる。
一瞬、月明かりが二人の横顔を照らす。咲夜はちらと視線を横に流し、内心で小さく息をついた。
咲夜は夜空を仰ぐしのぶの横顔をじっと見つめる。
そんなしのぶの手が、ゆっくりと宙に掲げられた。
しのぶの口元に浮かんだ笑みは、どこか儚げで、しかし確かな強さを秘めていた。
小さな笑い声。だが、その瞳に宿る光は、悲しみに濡れているようにも見える。
その光景を咲夜はただ、見つめていた。
そんな中、咲夜は胸の奥で独り言のように思った。
月の光に照らされる彼女の横顔は、どこか過去を背負う者の顔に見えた。
静寂の夜風が2人の間を吹き抜ける。咲夜の問いかけは声にならず、そのまま夜空に溶けていった。
迷いの竹林______
その名が竹林に響くと同時に、レミリアははっとして振り向いた。
レミリアが目を細め、カナエを睨みつけるように言う。
カナエはレミリアをきょとんとした顔で見つめる。
レミリアは薄っすらと感じていた。嫌な気配を…そして、レミリアが振り返った瞬間、甲高い声が響く。
フランが目を輝かせ、楽しげに笑う。まるで、久しぶりに楽しそうなおもちゃを見た子供のような顔で。
そのフランの姿と気配を感じ取り、カナヲは一歩後ずさり、訳も分からず構えを取った。
そう。レミリアは感じていた嫌な気配。フランの目の前で彼女が興味を持ちそうなことをしたら、一瞬で遊んでモードになることを。そして、レミリアの胸中に冷たい予感が走る。
フランの声色が、不気味に弾んだ。このフランの発言により、レミリアは瞬時に理解した。冷めきっていた時に久しぶりに現れた楽しそうなおもちゃ……今のフランには手加減をする余裕がないことに。
レミリアが一瞬で前に飛び出す。その瞬間、カナヲの全身に緊張が走る。
ピンッ………ドドドーーン!!!
フランの高笑いと共に竹林が轟音と光で震え、辺りに煙が立ちこもった。
辺りの煙がゆっくりと晴れていく。
カナヲが目を見開いた。
レミリアが小さく息を吐く。その腕の中には、爆発に巻き込まれる寸前で抱きかかえられたカナヲの姿があった。
フランの耳元に静かな声が響く。
振り返ったフランの目に、両肩を後ろからしっかりと押さえつけられた自分の姿が映った。
フランは悔しそうに口を尖らせた。
だが咲夜の握る手は強く、決して振り払えそうになかった。
澄んだ声が響く。竹林の間から姿を現したのは、胡蝶しのぶだった。
カナヲの言葉に、しのぶは短く息をつく。だがその瞳には、明らかな警戒の色が宿っていた。
レミリアが腕を組んで言う。
しのぶの声音は静かだが、棘を含んでいた。
レミリアが冷たく言い返す。
ピキッと、空気が凍る。
しのぶがレミリアに向けて、刃を向ける。
ほの刃を見て、レミリアは短くため息をつき、舌打ちをする。
レミリアが肩をすくめ、鼻で笑った。
互いに睨み合う二人。その視線には殺意と怒りだけが込められていた。
竹の葉が風で鳴り、冷たい緊張だけがその場を包む。
カナエがさとりに聞くように話し、さとりは小声でつぶやいた。
ガサッ………
さとりが眉をひそめる。
風が吹き、草をかき分ける音が聞こえ、さとりが振り返った瞬間、人の三倍はあろうかという巨体を持った鬼が、獣のように唸り声を上げ、その鋭い牙をむき出しにしてレミリアとしのぶへと襲いかかる。その鬼は大口を開け2人を飲み込もうとしていた。
レミリアの紅い瞳が一瞬、細く光った。
それに気づいたレミリアは驚きつつも、小さくため息をつき、めんどくさそうに呟く。
その声音が落ち着いているのが、かえって恐ろしい。
しのぶはその巨体に慄きつつも、自身の刃に手をかけた。
ドドドドドガガガガガッ!!!
凄まじい衝撃と爆ぜる音。風が荒れ、竹が裂け、視界が白い閃光に包まれる。煙の向こうで、紅い翼が夜気を裂いた。
突然の急襲!!_______
おまけ
「ちょっかい」
レミリアとしのぶが殺意増し増しの睨み合いしている中、カナヲと一瞬が目が合ったこいしはカナヲに近づき。
ニコッ!
こいしがカナヲに笑顔を見せる。
カナヲは訳がわかんないまま、自分の指で少しだけ口角を上げる。
カナヲのこいしへの不思議が深まった瞬間であった。





















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!