その報道が流れた瞬間。
世界が、音を立てて崩れたように感じた。
ニュースのテロップ。
SNSのタイムライン。
ファンの叫び。
事務所の沈黙。
でも、一番静かだったのは──
あなたとドヨンのいない、その場所だった。
CLéの宿舎、リビング。
メンバーたちは誰も口を開かなかった。
テレビはずっと同じ映像を繰り返している。
《人気アイドルグループのメンバー、突然の訃報》
《ファンによる過激な行為の可能性が浮上》
《心よりご冥福をお祈りします》
エリが、ミナの手をぎゅっと握っていた。
ハルは声も出さず、うつむいたまま震えていた。
ユリは今にも泣きそうな顔を浮かべている。
そして、ユリが静かに立ち上がる。
その言葉が、全員の胸にしみ込んだ。
一方、NCT127の宿舎。
誰も、何も、言葉にできなかった。
ジョンウが泣いていた。
ジェヒョンは黙ったまま、膝を抱えていた。
テヨンは部屋を出たり入ったりして、感情を抑えきれないようだった。
そして、マークがポツリとつぶやいた。
テーブルの上には、ドヨンが使っていたスマホ。
そのロック画面には──
あなたがふざけて撮った、ふたりの後ろ姿が写っていた。
笑ってる、背中越しのふたり。
その画面を見て、悠太がぽつりと呟く。
誰も返事はしなかった。
でも、全員がその言葉を“知ってた”ように黙ってうなずいた。
──2人は、未来を見ていた。
たとえ、それが儚く終わる運命だとしても。
たとえ、その約束が永遠に叶わないものだとしても。
「“名前を呼び合う人生”を選んだふたりだった」
それから3ヶ月。
世間の喧騒は静まり、事件は“過去”として整理されていった。
けれど、2人を知るすべての人にとって、
その存在は今も、光のように消えずに残っていた。
そして──
数十年後、遠く離れた場所で、2人の知らない街で。
まったく別の人生を生きていた“ふたり”が、
ゆっくりと目を覚ましはじめていた。
















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!