
【ARKHE side】
朝。
目が覚めてすぐ、頭が異様に重いことに気がついた。
風邪でも引いたかなと思って身体を起こしてみるけれど、それ以外特に目立った違和感は無さそう。
理由は分からないままだった。
とりあえずダークマターを食べにリビングへ向かった時。
カーテンが開いた窓から見える景色は、空一面が雨模様。
少し気分が下がりつつも俺は朝食の準備をしていた。
【NO side】
@クロノヴァ discord
ピロンッ
「かなめ」がボイスチャンネルに参加しました。
ピロンッ ピロンッ
【ARKHE side】
ピピピピッ ピピピピッ
収録の内容を確認してから、頭が重いのはもしかしたら寝不足かもしれないと思って仮眠をとった。
30分程度の仮眠で、頭は大分楽になった気がした。
やっぱり寝不足だったのかな、そう思いながら俺はスタジオに向かう準備を整えた。
「午後から雨降るらしいで」
【かなめ side】
体の怠さと眠気が幾分マシになったタイミングを見計らった末、無事スタジオに来ることに成功した。
これだけで素晴らしい。俺偉い。
ひとつ鬼門を切り抜けたところで膝の力が抜けてしまい、スタジオのソファにダイブする。
スタジオで寝るのは普段もよくしている事ではあるけれど、低気圧に限っては訳が違う。対策のしようも無ければ特別効く薬もない。所謂不可抗力だ。
とは思っても、家で散々横になっていた手前眠気はあるものの眠れず終いになる可能性が高い。
横になっているだけでも楽だし、このまま誰か来るまで寝ていよう…、
いつの間にか、俺は眠ってしまったみたいだった。
【しゃるろ side】
集合の40分前を指す腕時計を見ながら、俺はスタジオに入った。
余程気圧に弱いんだろう、今日のかなめは眠っても眠っても眠り足りていないように感じた。
俺はとりあえずソファの横にいくつか置いてあるスツールに腰を下ろして、ToDoリストを開いた。
こんなんだからかなめは一旦置いといて、もうすぐ午前中が終わるというこの時間にアルケーが作業に着手していないのは、稀…というかほぼ有り得なかった。
胸元の変なざわめきが妙に引っかかる。
こういう嫌な予感、外れやすいから嫌いだな。
【うるみや side】
スタジオへの階段を登る。
たかだか2階だからと舐めてかかったはいいものの、とにもかくにも膝が痛い。
なんで俺ってこんなに気象に弱いんやろ、幼少期からそこまで気圧に弱い人と出会ってこなかった俺はずっとそう思っていた。
かなめのこんな姿見たら、あの頃の自分がアホみたいで。
もっと辛い人ようさんおるで、そう伝えたくなった。
「一旦外出て話さん?」
LINEを見るなりしゃるは笑い、スマホをカバンに入れてスツールから立ち上がった。
@廊下
【しの side】
階段をあがってきたら、何やらお笑い組の声がする。
そんな会話が聞こえた。
どうやらメンバーをお望みらしいので、エレベーターホールの所から廊下にひょこっと顔を出してみる。
2人はこっちを向いて話していたから、俺が顔を出すなり開幕早々爆笑だった。
俺は恐る恐る扉を開けて、隙間から向こうを覗いた。
思わず息を飲んだ。
なんだあの天使は。
恐る恐る扉を閉める。
今度は躊躇なくスタジオの扉を開ける。
しゃるがかなめに近づいていって、優しく身体をさすりながら声をかけた。
その時、廊下の向こうから歩いてくる音が聞こえた。
れむはスツールに荷物をおろした後かなめに近づいて、少し長めのネイルで躊躇うことなくかなめのほっぺをつねった。
微睡んだまま、猫撫で声で拙く喋るかなめ。れむの手をにぎにぎしながら、必死につねるのを止めるよう言っている。
普段のドSはどこへやら。これがギャップってやつか。
く〜ッッ、ぐう尊((
不機嫌そうにほっぺを膨らますかなめ。
幼児退行だろうか、どうやら自分の不調が気に食わないらしかった。
れむはそう言ってかなめの頭をわしゃわしゃと撫でた。
せっかくの七三分けが台無し…笑笑
【NO side】
@廊下
@スタジオ
【ARKHE side】
かなめが俺を見て首を傾げたような気がした。
正直、察されると嫌なんだよな。
何となくあった頭の違和感は、今や頭痛となってじわじわ俺を苦しめていた。スタジオの電気、みんなの愉快な喧騒、その全てがやけに煩わしく感じた。
れむと話してスタジオに戻ってから、頭の片側のこめかみ周辺に小さな針をぷつぷつ刺すような痛みに襲われていた。
でも、大したことないし、かなめの方が辛そうな今言い出すことでもないと思った。俺が我慢すればいい、それだけ。
……。
だめだ、考え事は喋らなくても良くなった時にしよう。
そうしないと、また迷惑やら心配やら色々かけてしまう。
【うるみや side】
座ればマシになるだろうと考えていた膝の痛みは、立ち話をしていた時より随分良くなっていた。
しかし、これからいよいよ雨でも降るんだろうか、俺の膝の様子は普段と比較するとあまり芳しくはなかった。
かなめも案の定開いたり閉じたりの回数が増していて、明らかに眠そう。
しかし、
問題は隣に立っているこいつだ。
さっきからやけに髪を耳にかける仕草が目に留まる。
それをよ〜く観察をしてみるとどうだ、髪を耳にかけた手の人差し指は、毎回のように最後にはこめかみを抑えているではないか。
薬があんならええけど。
【ARKHE side】
ズキッ
ズキッ
俺の脈動に合わせて片側のこめかみにやってくる刺すような痛みは、時を追う毎に酷くなっていった。
困ったことに頭痛薬は持ってきていないから、さっきから髪の毛を耳にかける仕草のついでに指で軽くこめかみを抑えるのを繰り返している。
やかましいのは十二分に承知しているが、正直俺はかなり限界を迎えていた。
右袖を下に2回引っ張られた。
引っ張ったのは、うるみやだった。
大丈夫じゃない、と言いたい。
でも、これで迷惑がかかると思うと……
ズキッ
ズキッ
ズキッ
ズキッ
ズキッ
ズキンッ
急に酷い痛みに見舞われた衝撃で、小さく声を漏らしてしまった。完全にやらかした。
ギュッと目を瞑っていても、みんなの目線が俺に集まるのが分かった。
ズキンッ
酷い頭痛を前に無防備で耐えられるはずもなく、俺は遂にスタジオの床にしゃがんでしまった。
ズキンッ
ズキンッ
ズキンッ
ズキンッ
ズキンッ
ズキンッ
…座っているのも辛かった。
周りの声がどんどん聞こえなくなり、脈動に合わせて呼吸するようにやってくる激痛に耐えられなくなった。
しゃがんだままの俺の体がどんどん傾いているのに気がついたのは、既に手遅れくらいになってからだった。
まずい、このままだとさらに横に倒れるッ…
ズキンッ
思い描いていた体への衝撃はやってこなかった。
ズキンッ
ズキズキッ
一瞬だけかなめに姫抱きされたかと思えば、俺はソファに横たえられた。
ズキンッ
普段はあまり聞かない、うるみやの低音。
それが、今はすごくうるさくて、でもすごく心地よかった。
ズキンッ
ズキズキッ
途中からは、しゃるろが背中に手を添えてくれていた。
ズキンッ
どうしてだろう。
耐えない頭痛の傍で、喉の奥から何かがせり上がってきているのは確かだった。
かなめは俺の頭を優しく撫でてくれて、しゃるろは俺の背中をさすりだした。
それは、もう喉奥のすぐそこまで迫っていた。
かなめは躊躇なく俺の口の中に人差し指を突っ込んで、俺の舌根をグッと下に押し下げた。
だめだ、吐く。
1度吐いてしまえばあとは楽で、意外とすぐ吐き気は治まった。
うるみやが差し出したペットボトルから水を少し口に含んで、軽く口をゆすぐ。その後水をひとくち飲んだら、うるみやは優しく笑って頭を撫でてくれた。
ズキンッ
ズキンッ
れむはかなめの時のように俺の頭をぐしゃっと撫でてから、飲料ゼリーの蓋を開けて渡してくれた。
ズキンッ
…あ、意外と行けるもんだな。
ズキンッ
ズキンッ
ズキズキッ
3人は廊下の向こうに消えていった。
【うるみや side】
パサッ
近くにあった毛布を手に取って、起こさないように2人の上からそっとかける。
ARKHEに至っては薬が効いてきたんだろう。
2人とも、すごく楽そうな顔で向かい合っている。
2人がお互いのことを想ってるのを、俺は確かに聞いた。
ぶっきらぼうでも、張り合ってても、いつだってこういう時は結局お互い様だ。
本当は、そんなに嫌いでもないくせに。
現在リクエストたくさん頂いてます!本当に本当にありがとうございます😭✨
ただ、前回あった通り以前張ったかなめさんの伏線を回収していない為、一旦!一旦そっちを回収します!
リクエストにお応えできるまで暫し時間はかかりますが、何卒ご理解の程よろしくお願いいたします。











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!