第11話

異変
10
2026/01/12 09:00 更新
「ゴホッゴホッ」
「なんやひとらん、風邪か?」
「んー、畑いじりの時に体冷やしちゃったかなぁ……ちょっと部屋で休んでくる」
「おう」

 そんなただの会話が、異変の始まりだった。

「ね、ねぇ、これ……」

 翌朝、勢いよく部屋から出てきたひとらんが掌を見せてそう言った。その掌には黒い、禍々しい紋様。まるで悪魔が宿っているようで、4年前にも経験したとてつもない不快感が、体を襲った。
 成長しているからか気絶はしなくなってるが、それが逆にキツイ。どれだけ気持ち悪くても、気絶には至らない弱さで、いたぶられている様な気がした。

「と、とりあえず水……それも、聖水で洗ってみましょう」

 エーミールがそう言うと、オスマンが「シスター呼んでくる!」と飛び出して行った。……4年前、真っ先に倒れていた二人だ。二人が頑張って耐えているのに、俺がこんなのに耐えられないなんて、情けなさすぎる。

「俺はペ神を──」
「待て」

 そんなグルッペンの低い声に、周りの空気がずん、と重くなる。それは、一瞬息ができなくなる程の圧で、ペ神を呼びに行こうとした事すら、頭から無くなってしまうほどだ。
 飛び出して行ったオスマンと、グルッペンを除いて10人。全員がグルッペンを見つめていた。
 グルッペンはただ優雅にコーヒーを飲んでいる。みな、その口が開かれるのを待っていた。
 グルッペンはただゆっくりと茶菓子を口に運んだ。一人、また一人となかなか話し出さないグルッペンにイラつき、静かだった空間に少しの雑音が混じり始める。どこからか小さなため息も聞こえた。
 グルッペンはまた、コーヒーを口元へ持ってきて──

「えぇい洒落臭い!勿体ぶらずに早う言えや!!!」

 それを、コネシマに止められた。グルッペンは少し眉をひそめ顔を上げ、ようやっと口を開く。

「俺はただ待てと言っただけだが?他に言う事も無いだろう。」
「いやいや何言うとんねん。止めた理由はちゃんと言ってもらわな、げどちゃんやって不安なってまうやろ。」

 続けて、鬱がそう言い放った。
 ひとらんをチラリと見たが、顔を下に向けていて表情は分からなかった。

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