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第6話

救えなかった 中編③ 【 灰谷竜胆 】
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2023/02/04 10:06





三途
おい!見っけたぞ!!


三途が大きな声を更に大きくして全員に伝えた。

バタバタと三途のデスクの前に集まり画面を見ると

映し出されてる景色は夜の海で、街灯は殆ど

立っておらず、唯一立っていた1本の街灯はまるで

スポットライトかのように道路と海を挟む柵を

照らしていた。 俺はこんな所にあなたがいたなんて

信じられなかったが、あなたの姿を見るために

三途の次に画面がよく見える位置に立った。




三途
…いくぞ。


三途の合図と共にマウスをクリックす音が緊張の走る

事務所内に響く。 ザザン…と海が波打って

しばらくすると、暗闇に現れた1人の女性。

それは間違いなくあなただった。




なんの荷物も持たず街灯の下の柵の前に立ち止まった

あなたは、数分海を眺めると 何かに誘導されるように

フラッと柵に足をかけた。







竜胆
っ!!あなた!!!


俺が声を上げるのも当たり前で、

画面の向こうにいるあなたは少しでもバランスを

崩せば簡単に海に落ちてしまう危険な状態だった。

あなたは綺麗に柵の上に立つとまた数分海を眺め

始めた。軽く吹いている風は綺麗な髪を揺らしている

いつ転落してもおかしくない状況のままあなたは

風で靡く髪をかき分けると、まるで引き込まれて

いくかのように海へと落ちていった。




竜胆
ぁ…ッ、、




衝撃すぎる映像に誰も言葉を発せないままなんて

そんなのは当たり前。今目の前で、昨日から必死に

探していたあなたが、呆気なく海に身投げして

いとも簡単に死んでしまった。





竜胆
…嘘…だろ、、?


この沈黙のなか口を開いたのは俺だった。



マイキー
…そんな、こと、。





あるわけない。全員がそう信じたかった。

今映っていたのはあなたではなく、

あなたに似た人だったんじゃないか、

そう思えるものなら思いたかった。







あなたが亡くなってから2週間。竜胆は

あなたが亡くなったことを未だに信じられていない。




当然だろう。海に身投げすれば骨すら戻ってこない。

葬式も行わず、ただあの映像とあなたが帰ってこない

という事実で死を受け入れるなんてきっと難しい。

竜胆にはなにかが足りなくなったような、心に

ポッカリと穴が空いたような日が永遠と続いていった。




                           𝙉𝙚𝙭𝙩 ︎ ⇝






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