いっそ。
死んでしまえば楽だったのだろうか。
死ねるチャンスはいくらでも……それこそ、頼んでもいないのにたくさんあったのに。
死ななかった。
死ねなかった。
死にたいと願うには、背負うものが多すぎて。
生きたいと望むほど、愛されてはいないから。
どうしようもない現状維持で、きっと遅かれ早かれ壊れていたのだ。こんなものは、ただの嘘は、アルアジームでないカリムなんて幻想は。存在することを許されないのだから。
× × ×
「──この雨はっ」
血相を変えたジャミルの様子に、アズールがいち早く事態に気づく。
「しかし、こんな広範囲の豪雨、カリムさんの力では……」
「オーバーブロットだよ!! くそ、どこにいるんだ!!」
スマホで連絡を取ろうとするが一向に繋がらない。
「アズール。後で対価ならいくらでも払うから……っ……?」
雨、とは。
何かを洗い流すものである。
汚れだったり、涙だったり、あるいは。
記憶、だったり。
「これで良いんだ。みんなには幸せになってほしいからな!」
太陽のようだと言われた笑顔は健在で、しかし姿は黒く塗りつぶされている。
この世に存在するのかもあやふやな、不思議な存在になって。
誰からも忘れられた存在になって。
カリム・アルアジームという存在は。
最初からいなかったことになる。
都合の悪い記憶は改竄され差し替えられ、帳尻が合わせられる。
ジャミルがいないと日常生活を送るのも覚束ない、明るく能天気な太陽を演じてきた誰かさんは、静かに笑って、その場所を後にした。
「何を……しようと、してたんだ?」
ぽつり呟いた。
忘れた。
何かとてつもなく大事な半身を忘れてしまった。
「ジャミルさん? ほら、雨がやみますよ。綺麗な虹です」
「あぁ」
fin
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後書き
あれ?
ジャミカリってか二人喋ってすらいないんだけど…
まあ気持ちジャミカリで書きました。
アズールとフロイド出したんでどうせならジェイドも出せば良かった。
原作のツイステのカリムとは違う、全部が妄想カリムくんのオバブロ妄想でした。
ありがとうございました。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!