第13話

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2026/06/11 20:20 更新
トントンが帰ってくる日。

朝からショッピはそわそわしていた。

「……まだですか」

「あと数時間やって」

「さっきも聞いたでそれ」

ゾムが苦笑する。

ショッピは落ち着かない様子で廊下を行ったり来たりしていた。

本を開いても頭に入らない。

紅茶を飲んでも味が分からない。

時計ばかり見てしまう。

「ショッピくん、尻尾出てますよ」

「……ぇ」

エーミールに言われ、ショッピは慌てて後ろを押さえる。

緊張や感情が強くなると、無意識に猫の特徴が出ることがあるのだ。

黒い尻尾がぴこぴこ揺れていた。

「めっちゃ楽しみにしとるやん」

「ち、違……」

「耳も出とる」

「っ!?」

さらに真っ赤になるショッピ。

幹部達は完全に微笑ましいものを見る目になっていた。

そんな中。

――ブゥン……

基地入り口付近に、車両のエンジン音が響く。

その瞬間。

ショッピの身体がぴたりと止まった。

「……!」

帰ってきた。

そう理解した途端、胸がどくどく鳴り始める。

嬉しい。

安心した。

会いたい。

色んな感情が一気に溢れて、ショッピは気づけば走り出していた。

「うおっ、ショッピ!?」

「はやっ」

幹部達の声を置き去りにし、基地の入り口へ向かう。

扉が開く。

そこには。

「……ただいま」

少し疲れた顔で笑う、トントンがいた。

その姿を見た瞬間。

ショッピの視界が滲んだ。

本当に帰ってきた。

約束を守ってくれた。

「……っ」

言葉が出ない。

ただ胸がいっぱいだった。

トントンはそんなショッピを見て、少し目を見開く。

「……待っててくれたん?」

優しい声。

その瞬間。

ショッピは堪えきれなくなった。

たっ、と駆け寄る。

そして。

ぎゅっ。

「……!」

トントンの服を掴み、そのまま抱きついた。

周囲が静まり返る。

ショッピ自身も、自分が何をしたのか理解して固まった。

だがもう遅い。

離れようとしても、腕に力が入らなかった。

「……おかえり、なさい……」

震える声。

泣きそうな声。

トントンは数秒固まっていたが――やがて、ふっと笑った。

「ん。ただいま」

優しく背中を撫でられる。

その瞬間。

ショッピの目から涙が零れた。

「っ、ぅ……」

安心した。

怖かった。

また戻ってこないんじゃないかって、不安だった。

全部全部、溢れてくる。

「うわぁ……」

後ろでシャオロンが感極まった声を漏らす。

「抱きついた……」

「自分から……」

「成長がすごい……」

「親目線やめろ」

ゾムがツッコミを入れるが、声が少し震えていた。

皆、嬉しかったのだ。

最初は誰にも近づけなかったショッピが。

怯えて隠れてばかりだったショッピが。

今、自分から“離れたくなかった”と伝えている。

それがどれほど大きな変化か。

トントンは泣いているショッピを見下ろし、困ったように笑った。

「そんな心配せんでも帰ってくるって」

「……だって」

ショッピが服を握る力を強める。

「……帰ってこん人、いっぱいおったから……」

その言葉に、場の空気が静かになる。

トントンは少しだけ目を伏せて。

そして、ショッピの頭をぽんぽんと優しく撫でた。

「……これからは帰るよ」

「……」

「お前のところにな」

その一言で。

ショッピはまた泣きそうになった。

“お前のところ”。

それはつまり。

ここが、自分の居場所だと言ってくれているのと同じだった。

ショッピはぐしゃぐしゃの顔のまま、小さく頷く。

「……はい」

その返事に、トントンは優しく笑う。

後ろでは幹部達が。

「尊い……」

「無理しんどい……」

「写真撮っとけばよかった」

「ロボロ黙れ」

いつも通り騒いでいた。

その声を聞きながら、ショッピはそっと目を閉じる。

もう一人じゃない。

怖くても。

不安でも。

帰ってきてくれる人がいる。

“おかえり”を言いたい相手がいる。

その温もりが、どうしようもなく幸せだった。

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