第17話

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2026/02/24 09:40 更新
 入浴後、薄化粧だけ施してリビングへ向かう。
……途中のホビールームに溢れかえるカードには気付かないフリをした。
……遅くなってしまってすみません、今出ました
kgm
ああ、どうでしたか湯加減は__
 振り返った隼人さんは目を見開いて此方を見ていた。
 ……何処か変だろうか。借りたシャツとズボンは確かにブカブカしているけれどそこまで違和感はない。寧ろ鏡で確認した時、カジュアルな雰囲気で吃驚してしまったのに。
kgm
……あぁ、いや、その
 少し眉を下げながら、彼は私から顔を逸らす。もしかしてメイク……?某同僚に教えてもらった「抜け感メイク」とやらは私に似合わなかったのだろうか。
kgm
貴方には矢張りボーイッシュスタイルが似合いますね
「わたくしもシャワーを浴びてきます」と彼はそそくさと居なくなってしまった。

……妙だ。

 同僚に「蛙化されるから絶対駄目!」と愛しの焼肉定食コーデやら弟のお下がりのジャージは封じられているし、普段着ているスーツはタイトスカート。
……隼人さんにズボンを履いている所ですら見せた事がないのに。
(……勘違いかな)
 ダイニングテーブルを見ると、昨日の晩餐は夢だったかのように綺麗さっぱり片付いていた。

 ……彼は朝餉をもう済ましただろうか。キッチンを覗いてみると、昨晩の儘、食器は一つ残らず片付けられていた。
(……そうだ)
 彼へのお礼をしようと私は冷蔵庫を開けた。





kgm
……何ですかこれは!?
 パッと顔を輝かせる隼人さんにふふん、と鼻を鳴らしてみせる。
朝御飯です!味は保証できませんが!
 いつも貧相なご飯を作っているので冷蔵庫に溢れんばかりにある食材にワクワクしてついつい作りすぎてしまった。

 然し固まった隼人さんを見て、一つの不安が過ぎった
……勝手に材料使ってしまってすみません
kgm
あ、あぁ!!それは全然!
「久しく人の手料理を食べるので」と彼は顔を綻ばせた。
kgm
……楽しみだな、あなたさんのご飯
ウキウキとした声色の儘、彼は席について「頂きます」と小さく呟いた。
 香ばしく焼けた鮭の皮目を箸でなぞってほぐしている。しゃくりと弾ける様な音がなった。
 彼の口元に運ばれていく箸先をドキドキとしながら見守る
kgm
……ん!!美味しいです!美味しいですよこれ!!
ほ、ほんとですか……よかった……
 安堵して肩を落とした私に「冷める前にあなたさんも早く!」と彼は急かした。
kgm
いやぁ和食っていいですねぇ……
 しみじみと呟きながら彼はご飯をかけこんだ。
 弟以外に食事を振る舞った事がないので、何だか嬉しい。思わずはにかんでいると彼が「お料理上手なんですね」と笑った。
昔からずっと毎日作っているもので
kgm
弟さん羨ましいな
「こんな美味しいご飯を毎日だなんて」と彼は呟きながら味噌汁を啜る。湯気がほかほかと空気の中で揺れていた。
kgm
わたくしだって、毎日食べたいくらいですよ
 その言葉は確かに私に向けられていた。
 __私の神様はお世辞まで上手いらしい。

 火照った顔を隠すように、私もお椀を持った。


kgm
そういえば、今日行くジュエリーショップを見繕ってみたんですが
……は?
 手から箸が滑り落ちて、カランと跳ねる。

 何のことか皆目見当もつかない。混乱している私に「ほら」と彼は指を立てた。
kgm
婚約指輪を見に行こうって言ったじゃないですか?
 「もしかして忘れてしまいました?」と揶揄う様に笑う彼。

 婚約指輪??

 理解し難い言葉に頭を抱えそうになる。
kgm
ほら、偽物でも一応婚約関係ですから顔合わせ用にと
……そ、そうでしたっけ
 昨日の自分は一体何処までやらかしているのだ。
 タイムマシンが開発され次第ぶん殴ってやろうと心に決め、私は小さく嘆息した。

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