俺らは、親友だ。
不壊の絆は、誰にも裂かれないと思ったのに。
こんなにも、脆かったのなんて、思い知ったよ。
知りたくなかったな.....
大事な話?珍しいな。
普段とは少し違う秀司を見ながら、返答する。
『命を奪ってしまった。』
え......?
いやいや、流石に冗談に決まってるでしょ。
でも不謹慎だし、笑えない冗談だ。
なあ、そうだよな?
秀司の眼は、ハイライトが無くなって、まるで暗く、深い海に攫われているようだった。
割り箸は、割れなきゃ使えない。
切れ目が入った木の塊は、人間の手によって道具と化す。
まるで割り箸を割る"前"のようにくっついていた僕たちは、
僕の罪が料理として出され、
亀裂を入れさせた。
僕らの関係にも、ビビが入っただろうね。
でも構わないさ、むしろこれが望ましいのだから。
僕と関わりなんか持っちゃダメ。
君は、僕を忘れて生きてね。
こうなるのは当たり前だと思ってた。
わかっていたはずなのに、
凄く心が痛む。
だけど精神の傷は、物理には勝てない。
"血"が出る出ないでどっちが大事なのか。
精神は隠される。
物理は隠せない。無惨な姿を曝け出すことしか出来ない。なんて非力なんだろうね。
淡々と並べる御託に君はどう受け止めるのかな。
あれ、怒らないんだ。逆に冷静すぎて怖いな.....
まあいっか。
ここは、カッコつけて、ある言葉を紡ごうか。
僕と楓が、初めて接点を持った、あの本のタイトルを。
あの小説の話は、大雑把に説明するとこうだ。
ある男の子が、女の子を好きになった。
その子と関係を築く為に、いろいろ奮闘して仲良くなった。
だが、別の女の子が男の子が恋している女の子に嫉妬を抱き、いじめた。
いじめを知った男の子は傷だらけの少女を助け、こう叫ぶ。
君を擁護したい。と....そしていじめは終わりを迎え、
解決した後に、2人は付き合う事になった。
なんて素敵な物語だろう。
なんて純粋なハッピーエンドなんだ。
最高だよ、小説は。
でもそれは虚構の世界だ。
いい加減夢から醒めようか。
現実が追ってきてることに。
祝詞の叫びも、君には届かない。
親友の顔がどんどん青ざめていく、まるで化け物を見ているかのようで。
失礼な、僕はまだ人間だぞ。
僕に対して叱ってくれてるんだろう。
怒りと悲しみが混じった声。
"親友に裏切られる"って彼にとってはこんなにも辛いんだな。
今まで有ったハート型の人形をトンカチでフルスイングされたり、ハサミで傷だらけにされるのは。
しんどいよね。ごめんね。
罵声でも批判でもいいよ。
彼の叫びは、誰かの心を動かすと思う。
だが僕の心には、陳腐の絆は効かない。
荒んだ僕には、もう何もいらないさ。
狂った忠誠心のせいで、黙らせてしまったな。
卑下するなら今のうちだよ。
何その質問。
こんなの一択しかないじゃん。
もうちょっと選択肢をくださいよ。
冷や汗がとてもなく気持ち悪い。夏の涼しい風が、今では寒く感じてる。
じゃあね、と君が言った。これは、一生なのか、またねなのか分からない。
そう言って、俺の親友は歩み始めた。
絆って、こんなにも弱かったのかな。
だけど"待って"なんて、言えない。
言えなかったんだよ。
幸せを壊したくなかった。
こんな事があったって、また仲直りして変わらない日々を過ごせれるよね。
いつでも待ってるから。
遠くなってく背中を一瞥して、2人は別れた。
秀司は、振り返らなかった。














編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!