第40話

冷風の祝詞
29
2025/05/19 11:00 更新
俺らは、親友だ。

不壊の絆は、誰にも裂かれないと思ったのに。

こんなにも、脆かったのなんて、思い知ったよ。

知りたくなかったな.....




















秀司
秀司
ちょっと、大事な話をしていい?
大事な話?珍しいな。
普段とは少し違う秀司を見ながら、返答する。
幸太
幸太
いいけど、どうしたんだ?
秀司
秀司
俺さ..........



































『命を奪ってしまった。』































え......?
いやいや、流石に冗談に決まってるでしょ。

でも不謹慎だし、笑えない冗談だ。





なあ、そうだよな?
秀司
秀司
.......
幸太
幸太
冗談......なのか?
秀司の眼は、ハイライトが無くなって、まるで暗く、深い海に攫われているようだった。









































割り箸は、割れなきゃ使えない。
切れ目が入った木の塊は、人間の手によって道具と化す。



まるで割り箸を割る"前"のようにくっついていた僕たちは、



僕の罪が料理として出され、




亀裂を入れさせた。




僕らの関係にも、ビビが入っただろうね。

でも構わないさ、むしろこれが望ましいのだから。
僕と関わりなんか持っちゃダメ。

君は、僕を忘れて生きてね。
秀司
秀司
ううん。
秀司
秀司
本当のことだよ。
幸太
幸太
なあ.....どうして....
こうなるのは当たり前だと思ってた。

わかっていたはずなのに、

凄く心が痛む。

だけど精神の傷は、物理には勝てない。

"血"が出る出ないでどっちが大事なのか。

精神は隠される。

物理は隠せない。無惨な姿を曝け出すことしか出来ない。なんて非力なんだろうね。
秀司
秀司
復讐に加担した。
幸太
幸太
復讐.....
秀司
秀司
楓の復讐劇で、僕は王子役として活躍したのさ。
淡々と並べる御託に君はどう受け止めるのかな。
幸太
幸太
なあ、本当に人を殺してまで助ける必要があったのか....?
あれ、怒らないんだ。逆に冷静すぎて怖いな.....

まあいっか。
秀司
秀司
ある
秀司
秀司
僕は、楓を救いたかったから。
幸太
幸太
それでも.....
秀司
秀司
そうだね......理由をつけるなら
ここは、カッコつけて、ある言葉を紡ごうか。























































僕と楓が、初めて接点を持った、あの本のタイトルを。
秀司
秀司
"君を擁護したい"ってね。
あの小説の話は、大雑把に説明するとこうだ。

ある男の子が、女の子を好きになった。

その子と関係を築く為に、いろいろ奮闘して仲良くなった。

だが、別の女の子が男の子が恋している女の子に嫉妬を抱き、いじめた。

いじめを知った男の子は傷だらけの少女を助け、こう叫ぶ。

君を擁護したい。と....そしていじめは終わりを迎え、

解決した後に、2人は付き合う事になった。

なんて素敵な物語だろう。

なんて純粋なハッピーエンドなんだ。

最高だよ、小説は。

でもそれは虚構の世界だ。

いい加減夢から醒めようか。

現実が追ってきてることに。
幸太
幸太
擁護....え....
秀司
秀司
うん。僕は楓を救いたい、そして救った。
秀司
秀司
世間に間違いだと指摘されようが、僕は正しいと叫び続ける。
祝詞の叫びも、君には届かない。

親友の顔がどんどん青ざめていく、まるで化け物を見ているかのようで。

失礼な、僕はまだ人間だぞ。

幸太
幸太
本当に....それでいいのかよ...
幸太
幸太
お前は!自分の意思で復讐を決めたのか!!
僕に対して叱ってくれてるんだろう。

怒りと悲しみが混じった声。

"親友に裏切られる"って彼にとってはこんなにも辛いんだな。

今まで有ったハート型の人形をトンカチでフルスイングされたり、ハサミで傷だらけにされるのは。

しんどいよね。ごめんね。

罵声でも批判でもいいよ。

彼の叫びは、誰かの心を動かすと思う。






だが僕の心には、陳腐の絆は効かない。

荒んだ僕には、もう何もいらないさ。


秀司
秀司
そうだよ。
秀司
秀司
彼女の願いは、彼氏が叶えないと。
幸太
幸太
......
狂った忠誠心のせいで、黙らせてしまったな。

卑下するなら今のうちだよ。
秀司
秀司
じゃあ、もういいかい。
幸太
幸太
最後に聞かせてくれ。
幸太
幸太
本当に、この道で幸せなのか.....?
何その質問。

こんなの一択しかないじゃん。

もうちょっと選択肢をくださいよ。










秀司
秀司
幸せだよ。
秀司
秀司
今生きてる中で、1番幸せだよ。
秀司
秀司
じゃあね
冷や汗がとてもなく気持ち悪い。夏の涼しい風が、今では寒く感じてる。

じゃあね、と君が言った。これは、一生なのか、またねなのか分からない。

そう言って、俺の親友は歩み始めた。

絆って、こんなにも弱かったのかな。

だけど"待って"なんて、言えない。

言えなかったんだよ。



幸せ当たり前を壊したくなかった。



こんな事があったって、また仲直りして変わらない日々を過ごせれるよね。



いつでも待ってるから。



遠くなってく背中を一瞥いちべつして、2人は別れた。

秀司は、振り返らなかった。

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