朝、目覚めると鶴丸がやはりそこにいた。
いつも通りの飄々とした笑顔で挨拶をする彼を見ると、
なんだか安心する。
昨日書類をやろうとしたことを、この刀は
まだ根に持っているのだろうか。
とりあえずこの不調の原因は本丸維持のための霊力の消費によるものだと思う。
出陣とか遠征とかをやめたら、
少しは進行を遅らせることが出来るかな…?
でも、それだとここが本丸である意味が無くなる。
いっそ霊力回復を謳った怪しい薬を飲んでみるかとすら
思ったが、絶対に止められる。
枕の近くに置かれた朝食の、
暖かい香りが鼻から入ってくる。
やはり身体は重いので、起き上がるときに必要な力は
日々大きくなっていっている。
鶴丸が出て行った後の自室はひっそり閑としていて、
朝食を食べた後、退屈さから
障子の隙間から差し込む光と影の境目を見つめていた。
鶴丸、早く私のとこに戻ってきてくれないかな。
あなたが居ない主の部屋は
驚きも興奮も喜びも、なんにもなくて
ほんとうにつまらないの。
そういえば、昨日の私は鶴丸に今日の掃除当番をお願い
していたようだが、
その判断をここで恨むことになるとは。
喉が渇いた。
飲み物を探しに厨にでも行こう。
立ち眩みも今の所ないから大丈夫。
布団から起き上がり、部屋から出た。
相変わらず身体が重いので、
なるべく誰にも見つからないように
厨まで行きたい。見つかってしまうとまた
心配をかけてしまいそうだから。
厨に行くと、燭台切と太鼓鐘が
遠征組の弁当を用意している最中だった。
飲み物を取りに来ただけなのに
なぜかすごく心配されている。
太鼓鐘は急いで冷蔵庫の中を探し始めた。
冷蔵庫だけでなく、戸棚の中など
あらゆるところから
今すぐ出せそうなものを探してくれた。
作業の邪魔になるかもしれないので遠くでしばらく
待っていた。
差し出されたのは湯気が少しだけ出ている白湯。
少し息を吹きかけて冷ましてから
口にした。
温かい。火傷しそうなほど熱くはないので、
すぐ飲めるように少し水を入れて
冷ましてくれたのだろう。
口の中で、ほのかにレモンの酸味が香った。
私に気を利かせてくれたのかな。
実に彼らしい。
縁側にて。珍しく大倶利伽羅が座っていた。
こちらに気付き、相変わらずの無表情で私のことを
見つめた。
書類仕事とかいろいろあるけど…
とりあえず彼の言う通り休むべきだ。
その夜は、月明かりが綺麗な夜だった。
障子を開けていたら
月の明かりだけで本が読めそう。
縁側から庭に出て、月を反射した水面を見ながらわたしは口を開いた。
これを言うかどうかはずっと迷っていたけれど、
みんなに心配かけている以上、言わなければならない
ような気がしたから。
鶴丸はただ茫然としていた。
もっとはやく言うべきだったかもしれない。
鶴丸は少し黙った後、
𝒕𝒐 𝒃𝒆 𝒄𝒐𝒏𝒕𝒊𝒏𝒖𝒆𝒅…












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!