第24話

愉悦の果てに待つ業火。
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2026/05/05 09:16 更新
ベルアルト
ベルアルト
クズ?…なぜそう言うのですか?
ベルアルト
ベルアルト
ただの一般論を言ったまでですけど
大森 元貴
大森 元貴
その価値観自体が、クズなんだよ
ベルアルト
ベルアルト
……理解できませんね

ベルアルトはにやりと笑い、

剣をゆっくりと鞘から抜く。


石畳に金属が触れる冷たい音が、

夜の静寂を切り裂く。
ベルアルト
ベルアルト
我に従わぬのなら、
ベルアルト
ベルアルト
痛みで従わせるまでです
大森 元貴
大森 元貴
……剣……
声が小さく震え、全身が硬直する。


ベルアルトは一瞬目を細め、頬に薄く赤みを差す。
ベルアルト
ベルアルト
いいですね… その顔…たまりません…
ベルアルト
ベルアルト
もっとじっくり味わいたいものです…
大森 元貴
大森 元貴
(なんだよそれ……気持ち悪い)
——その瞬間、元貴の中で、

ベルアルトの正体がはっきりした。


ただのエルフ騎士ではない。

“変態”だった。
アーク・インフェルナ
アーク・インフェルナ
ビビるな、オレがいる
大森 元貴
大森 元貴
アーク…
アーク・インフェルナ
アーク・インフェルナ
(オレが絶対に守る……)

ベルアルトはアークをじっと見つめ、嗤う。
ベルアルト
ベルアルト
おや、小さな龍ですか……
ベルアルト
ベルアルト
邪魔ですね、仕事の

アーク・インフェルナ
アーク・インフェルナ
邪魔してんのはお前だ、くそエルフ

その目には冷たい炎が宿る。

剣を睨み、全身から力が漲る。
ベルアルト
ベルアルト
まずは……君から始めましょうか

剣を振るおうとした瞬間——

アークは小さな翼を羽ばたかせ、素早く横へ回避する。
アーク・インフェルナ
アーク・インフェルナ
主人!すぐに逃げろ!

叫び声には全力の決意が込められるが、

元貴は恐怖で動けない。
大森 元貴
大森 元貴
……っ
銀色の刃が視界を支配し、全身が固まる。
ベルアルト
ベルアルト
あれ、逃げないのですか?笑

その手が元貴の腕に触れ——

ベルアルト
ベルアルト
怖いのは当然ですよね?
ベルアルト
ベルアルト
異世界から来た人間ですもの
ベルアルト
ベルアルト
我を見て怯えるのも無理はない
元貴の顔を見つめると、すぐに頬を赤らめ——
ベルアルト
ベルアルト
その恐怖に満ちた顔……
ベルアルト
ベルアルト
もっと見ていたいですね
大森 元貴
大森 元貴
(狂ってる……)
元貴は声も出せず、震え続ける。
アーク・インフェルナ
アーク・インフェルナ
オレの主人に触れるな――!!!

怒声とともに、胸から炎の球を放つ。

ベルアルトは慌てて避ける。
アーク・インフェルナ
アーク・インフェルナ
くそっ……外した

それでも瞳には揺るぎない決意。
ベルアルト
ベルアルト
まったく……話してる最中に
ベルアルト
ベルアルト
いきなり汚い球を飛ばすなんて、
ベルアルト
ベルアルト
予想外ですよ

アーク・インフェルナ
アーク・インフェルナ
怪我はねぇか!主人!
大森 元貴
大森 元貴
……人間は道具じゃない!
大森 元貴
大森 元貴
アークの炎は汚くなんかない!!
アーク・インフェルナ
アーク・インフェルナ
いや、そこかよッ!
アーク・インフェルナ
アーク・インフェルナ
とにかく後ろに隠れてろ!
小さな翼を広げ、防護の姿勢を取る。
ベルアルト
ベルアルト
アーク………
ベルアルト
ベルアルト
君という名前、センスが皆無ですね

その瞬間、アークの中で何かが切れた——

瞳の炎が全身に燃え広がり、空気が歪む。
アーク・インフェルナ
アーク・インフェルナ
(オレの名前を侮辱する奴は……)
アーク・インフェルナ
アーク・インフェルナ
(絶対に許さねぇ)
アーク・インフェルナ
アーク・インフェルナ
(あいつは言ったんだ、かっこいいって)

——胸に、翼に、拳に、

“守る”覚悟が冷たい殺意となって炸裂する。
アーク・インフェルナ
アーク・インフェルナ
焼き尽くす……
ベルアルト
ベルアルト
君の力、見せて貰おうじゃないか

影のように鋭い剣の光が、石畳を切り裂く。


ベルアルトの影斬り——自分の影を自在に操る技。


剣と影が一体となり、
宙を裂く斬撃がアークへ襲いかかる。
大森 元貴
大森 元貴
(は?何その技、…こわ)
ベルアルト
ベルアルト
では…始めようか、小さき龍よ

影が、周囲の石を切り裂き、道を封じる。

隊列の攻撃も影で奪い、自在に操られる。

「逃げ場なし」——まさに圧倒的な戦術。
アーク・インフェルナ
アーク・インフェルナ
……クソ、序盤から調子乗りやがって

背中に羽ばたき、炎の熱を増幅させる。

鋭い爪と翼で回避、そして反撃。

炎が影を焦がし、冷たい空気に熱を注ぐ。
ベルアルト
ベルアルト
なかなかやりますね……
アーク・インフェルナ
アーク・インフェルナ
黙れ、地獄を見せてやる!

炎が舞い、影斬りの刃が跳ね返る。

石畳が割れ、建物の壁にまで火花が飛び散る。


ベルアルトは序盤の優位を保つが、

アークの攻撃は一瞬で剣の動きを読み、

反撃の間合いを計る。
ベルアルト
ベルアルト
くっ……影の力よ、我に従え!
 
攻撃を影で奪い、自分の刃に連動させる。


だが、アークの炎は強大で、

ベルアルトはアークの炎渦に巻き込まれ、
次第に距離を詰められる。
アーク・インフェルナ
アーク・インフェルナ
もう終わりだ——

翼を広げ、拳から放つ火球。


ベルアルトの全身を焼き尽くし、

影は黒焦げになって地に落ちる。
ベルアルト
ベルアルト
ぐっ……!!

剣を握る手も震え、影斬りの自由は奪われた。
アーク・インフェルナ
アーク・インフェルナ
まだだ……ここで倒す!
炎の渦に包まれ、ベルアルトは全身やけどを負い、

呻きながら後退する。
ベルアルト
ベルアルト
ゔっ……
ベルアルト
ベルアルト
熱い……痛い……
焼け焦げた匂いが、夜の空気に重く残る。


石畳は黒く炭化し、熱で歪んでいた。

その中心に——


ベルアルトが、倒れている。


全身は焼け爛れ、皮膚は裂け、呼吸は浅く不規則。

もう、立つことすらできない。


周囲には誰もいない。

完全な、敗北。
ベルアルト
ベルアルト
……ぁ……っ……
震える手で地面を掴み、必死に顔を上げる。
ベルアルト
ベルアルト
ま……待って……ください……

声はかすれ、さっきまでの余裕は一切ない。
ベルアルト
ベルアルト
死にたく……ない……
ベルアルト
ベルアルト
我は……まだ……

その目は、恐怖に染まりきっていた。

さっきまで他人に向けていた“絶望”を、

今、自分が味わっている。


アークは無言で近づく。

小さな体から放たれる熱が、さらにベルアルトを追い詰める。
ベルアルト
ベルアルト
お願い……します……
ベルアルト
ベルアルト
助けて……ください……
ベルアルト
ベルアルト
なんでも……します……

その姿は、あまりにも——見苦しかった。
大森 元貴
大森 元貴
………

元貴は視線を逸らす。

胸の奥がざわつく。

怖い。
気持ち悪い。

でも——
大森 元貴
大森 元貴
……アーク……もう良いんじゃないかな
少しだけ声を絞る。
大森 元貴
大森 元貴
痛そうだよ、、

ベルアルトの震える姿が、頭から離れない。


どれだけクズでも、

——ここまで壊れていると、どこか“人”として見てしまう。


アークの動きが、一瞬止まる。

沈黙。
ベルアルト
ベルアルト
そ、そうです……!
必死に縋りつくように叫ぶ。
ベルアルト
ベルアルト
見逃して……ください……!
ベルアルト
ベルアルト
もう……逆らいません……!
ベルアルト
ベルアルト
何でも……命令、聞きます……!
ベルアルト
ベルアルト
だから……だから……

アークの目が、細くなる。
ベルアルト
ベルアルト
我は悪くないんです……!
ベルアルト
ベルアルト
全部……王が……!
ベルアルト
ベルアルト
命令されただけで……!
ベルアルト
ベルアルト
人間を傷つけろって言ったのも……全部!

その言葉を聞いた瞬間——

空気が、変わる。

アーク・インフェルナ
アーク・インフェルナ
……は?

低く、冷たい声。
ベルアルト
ベルアルト
ほ、本当です……!
ベルアルト
ベルアルト
我はただ従っただけで……!
ベルアルト
ベルアルト
だから……責めるなら王を……!

アークの瞳が、完全に冷え切る。
アーク・インフェルナ
アーク・インフェルナ
……最後までそれかよ

一歩、踏み出す。
ベルアルト
ベルアルト
ひっ……!

アーク・インフェルナ
アーク・インフェルナ
自分で楽しんどいて
アーク・インフェルナ
アーク・インフェルナ
全部、他人のせいか?

炎が、再び揺らめく。
アーク・インフェルナ
アーク・インフェルナ
ふざけんじゃねぇよ
ベルアルト
ベルアルト
や、やめ——

——次の瞬間。

閃光のような炎が、夜を切り裂いた。

声は——最後まで、続かなかった。
静寂。

燃え残りの火が、ぱち、と小さく弾ける。

そこにもう、ベルアルトの姿はなかった。
大森 元貴
大森 元貴
……
しばらく、何も言えなかった。

さっきまで“生きていたもの”が、
今はもう、どこにもない。
大森 元貴
大森 元貴
……怖すぎる……
震えた声が、やっと漏れる。
大森 元貴
大森 元貴
もう帰りたい……
大森 元貴
大森 元貴
こんなグロいもの見せられて……
大森 元貴
大森 元貴
本当最悪……

本音だった。

強がりでも、覚悟でもなく——ただの本音。

アークは振り返る。

少しだけ、悲しそうな目で。
アーク・インフェルナ
アーク・インフェルナ
……主人……
短く、息を吐く。
アーク・インフェルナ
アーク・インフェルナ
その考え……やめた方がいい……
静かに、でもはっきりと言う。
アーク・インフェルナ
アーク・インフェルナ
じゃなきゃ、この世界で生きていけないぞ

その言葉は優しさじゃない。

現実だった。


逃げられない、”この世界のルール”。

元貴は何も言えず、ただ立ち尽くす。

さっきまでの“日常”は、もうどこにもなかった。
大森 元貴
大森 元貴
………
焼け跡の前で、元貴はゆっくりと膝をつく。

まだ熱の残る石畳。
焦げた匂いが、鼻を刺す。

震える手を、胸の前でそっと重ねる。
大森 元貴
大森 元貴
……もし、来世があるなら……

声は小さく、掠れている。

それでも、言葉は途切れない。
大森 元貴
大森 元貴
今度は…誰かを傷つける側じゃなくて…

少しだけ、目を伏せる。
大森 元貴
大森 元貴
人の命を、大事にできる生き方をしてください

ぽたり、と涙が落ちる。


それは恐怖の涙じゃない。 

怒りでもない。


“理解しきれないもの”に触れてしまった、戸惑いの涙だった。

アークはその様子を見て、眉をひそめる。
アーク・インフェルナ
アーク・インフェルナ
何してんだ、主人

少し首を傾げる。

本気で分からない、という顔。
大森 元貴
大森 元貴
……祈ってる
大森 元貴
大森 元貴
良し悪しとかじゃなくて……命は命だから

ゆっくりと言葉を選ぶ。
大森 元貴
大森 元貴
どんなやつでも……
大森 元貴
大森 元貴
終わった後くらいは……

言い切れず、視線を落とす。
アーク・インフェルナ
アーク・インフェルナ
……あんな奴に、そんなもんいらねぇだろ

低く、吐き捨てるような声。
アーク・インフェルナ
アーク・インフェルナ
人を道具扱いして、楽しんで、
アーク・インフェルナ
アーク・インフェルナ
最後は責任逃れだぞ?
アーク・インフェルナ
アーク・インフェルナ
そんなやつに“次”なんか考える必要ねぇ

元貴は少しだけ黙る。

でも、否定はしない。
大森 元貴
大森 元貴
……うん、分かってる

静かに頷く。
大森 元貴
大森 元貴
僕も許せないよ、正直
大森 元貴
大森 元貴
思い出しただけで、気持ち悪いし……

小さく息を吐く。
大森 元貴
大森 元貴
でも…

顔を上げる。

その目は、まだ弱いけど、ちゃんと前を見ている。
大森 元貴
大森 元貴
だからって……同じとこまで落ちたくない
大森 元貴
大森 元貴
命を軽く扱う側に、なりたくないんだ

大森 元貴
大森 元貴
……あいつは、アークにちゃんと裁かれた
大森 元貴
大森 元貴
それで終わりでいい

大森 元貴
大森 元貴
これ以上、俺があいつを
大森 元貴
大森 元貴
どうこう思い続ける必要はない

沈黙。

風が、静かに焼け跡を撫でる。



アークはしばらく黙っていたが、やがて小さく息を吐く。
アーク・インフェルナ
アーク・インフェルナ
人間は…優しいんだな

その声はさっきより少しだけ柔らかい。
アーク・インフェルナ
アーク・インフェルナ
この世界じゃ、そんな考え——
言いかけて、止まる。

少しだけ視線を逸らす。
アーク・インフェルナ
アーク・インフェルナ
まぁ…別に嫌いじゃねぇけどよ…
アーク・インフェルナ
アーク・インフェルナ
むしろ…主人のやり方の方が好きだ
ぽつり、と呟く。
元貴は少し驚いた顔をして、それから小さく笑う。
大森 元貴
大森 元貴
ありがとう……なのかな、それ
アークは答えない。

ただ、翼を軽く揺らす。
アーク・インフェルナ
アーク・インフェルナ
ふん
アーク・インフェルナ
アーク・インフェルナ
帰るぞ
アーク・インフェルナ
アーク・インフェルナ
ここに長居はできねぇ
大森 元貴
大森 元貴
うん……
立ち上がる。

足はまだ少し震えているけど——


さっきより、少しだけ前を向いていた。
※この物語はフィクションです。

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