第40話

#38「タイムリミット」
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2026/07/19 17:13 更新



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あ。あなたの名字さん! 久しぶり。
_
体調大丈夫? ニュース見たよ〜〜。
_
数学やばいから覚悟した方がいいよ。
とりあえずノート見る?


久しぶりに登校してみると、
思ったより多くのクラスメイトに囲まれて
びっくりしてしまった。

こんなに心配されるのってあんまりないものだから、
なんだか少し申し訳ないような気もしてくる。
私は少し躊躇いつつも、笑って口を開いた。

あなた
まじで余裕です。ニュースなってたの
ほんとに気まずすぎるんだけどどうしよう
_
まじで今時の人だよあなたの名字。
あなた
ほんとに嬉しくなくて終わった〜〜


数人から「有名人になれてよかったね」と笑われる。
「やめてよ」と笑いながら返す。
なんとなく。高校生だなと、思った。

別に冗談だとわかっているから
私も何も思わず笑い返せるけれど、
狛枝くんがもし事故に遭っていて、
こんなこと言われていたらと思うと耐えられない。

やっぱり私でよかったな。なんて思う。
彼にとっては嫌だろうけれど。






あなた
おはよう、狛枝くん。
あなた
なんかこう言うの久しぶりだね。


狛枝くんの隣の席に座って、カバンを置いた。
ほんの少し前までこれが当たり前だったはずなのに
なんだか懐かしくて心地いい。

私が彼に「おはよう」と言って、
それを無視されるのが恒例で―――

狛枝 凪斗
………うん、おはよう。
あなた
えっ


……………は、初めて、挨拶返してくれた。

びっくりして固まった私を見て、
彼は呆れたようにため息をつく。

あなた
わ、私、知らない間に
世界救ってたりした……?
狛枝 凪斗
ボクの挨拶って
そんなに価値が高いものなの?
あなた
私にとっては世界一……
狛枝 凪斗
理解できないから、
やっぱり喋らなくていいよ。
あなた
あっ、ひどい。


そう言いつつ、つい笑ってしまう。声が出た。
楽しい。彼と話すのは単純に楽しかった。

それが彼を好いているからなのか、
彼の話が面白いのか、
彼に、高校生らしい裏がないからなのからか。
わからない。わからないままでいいと思った。

狛枝 凪斗
……あなたの名字さんって、
狛枝 凪斗
変だよね。


狛枝くんに言われたら、
なんでも嬉しくなっちゃって大変だな、と思う。

あなた
狛枝くん。今度数学教えてくれない?
休んじゃってついていけないんだよね。
狛枝 凪斗
はぁ? なんでボクなのさ。
あなた
頭いいでしょ、狛枝くん。


………


狛枝 凪斗
………どこがわからないの。
あなた
えっとね、まず、
今数学なにやってる?
狛枝 凪斗
そこから?


小さく笑う。予鈴が鳴る。
桜は散って、もうすぐ雨の季節が来る。

狛枝 凪斗
キミって、本当物好きだ。


彼の隣で笑っていられるのは、
あとどれくらいなんだろう。と、思って。

少しだけ、泣きたくなった。

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