第8話

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2022/08/26 12:19
城に到着するや否や、ヴェルトへの処置が始まった。
天青達は部屋の外に出され、治療が終わるのを待っていた。
シユ
シユ
グスッ…
天青
天青
もう泣くな
シユ
シユ
だって、私のせいで…
シユ
シユ
それに…人間って、脆いやん…!
天青
天青
確かにあいつは人間だが、能力持ちだ。普通の人間よりは丈夫だろう
グレーア
グレーア
まぁ、相手が悪かったんじゃねーの?あのルナだぜ?
エレイン
エレイン
シユが生きてただけでよかったよ、本当に…
シユ
シユ
皆…
奏弥
奏弥
ほら、顔拭いて
奏弥が渡したハンカチに顔を埋めるシユ。
その時、ヴェルトが担ぎ込まれた部屋から医師が出てきた。
王族専属医師
皆様、陛下の処置が終了しました
シユ
シユ
っ、ヴェルトは大丈夫なん⁈
王族専属医師
一命は取り止めました
その言葉にほっとした人外達だが、医師は「ただ…」と顔を曇らせる。
王族専属医師
我々の力では、ルナ様の能力を解除することが出来ませんでした
奏弥
奏弥
え?
王族専属医師
陛下に「消滅」の能力の方が撃ち込まれなかったのが、せめてもの救いだったかもしれません…
天青
天青
はっきり言ってくれ。どういう意味だ
医師は悲痛な表情で、消え入りそうな声を発した。
王族専属医師
…陛下の御身は、「破壊」の能力にじわじわと侵食されていっています
王族専属医師
恐らく…保って一年かと…
ヴェルトは横になって、天井を見上げていた。
天青
天青
入るぞ
扉が開き、友人達が入ってくる。
ヴェルト
ヴェルト
すまない、心配をかけた
エレイン
エレイン
…大丈夫
ヴェルト
ヴェルト
僕についての話は聞いたか?
奏弥
奏弥
うん…
シユ
シユ
ヴェルト…あの、ごめ…
ヴェルト
ヴェルト
謝らないでほしい。僕が勝手にやったことだ
グレーア
グレーア
それ、治す方法ねぇのか
ヴェルト
ヴェルト
無いそうだ。流石はルナと言った所か
ヴェルトは小さく笑った。
奏弥
奏弥
ど、どうにかなるよね?ほら、ルナを倒したら能力だって…!
ヴェルト
ヴェルト
ああ、そうかもしれない
奏弥
奏弥
だよね⁈よーし、待っててよ!きっと何とかするから!
王族専属医師
失礼致します。皆様、そろそろ陛下のご体調に障りますので…
シユ
シユ
あ、はい…
人外達が退室する中、ヴェルトは天青を呼び止めた。
王族専属医師
陛下
ヴェルト
ヴェルト
僕は大丈夫だ
天青は仲間達に「先に行っていろ」と声をかけ、自分はベッド傍に座った。
扉が閉まり、足音が遠ざかっていく。
天青
天青
…で、何だ
ヴェルト
ヴェルト
今後について、少しな
ヴェルト
ヴェルト
僕が壊れた後、この国のことを君達に…
天青
天青
待て、気が早い。まだ一年ある
ヴェルト
ヴェルト
それでも、君達にとっては一年なんて一瞬だろう?
天青
天青
……
ヴェルト
ヴェルト
…僕にとっても、短すぎるくらいなんだから…
苦笑しながら、ヴェルトは呟く。
ヴェルト
ヴェルト
まだ、やらなければいけないことがありすぎるんだがな…
天青
天青
…ヴェルト
ヴェルト
ヴェルト
天青
天青
結界は維持できそうか?
ヴェルト
ヴェルト
ああ、可能だ
天青
天青
なら、君はそこでここを守っていろ
ヴェルトを覗き込み、天青は宣言した。
天青
天青
一年以内に片をつける。それから、君を治す術を探してみせる
ヴェルト
ヴェルト
天青、しかし…
天青
天青
君の「しかし」は聞き飽きた
ヴェルト
ヴェルト
天青
天青
友をやすやす死なせる馬鹿者がどこにいる
天青はフッと口元を緩めた。
天青
天青
我らを信じろ
ヴェルト
ヴェルト
…わかった
ヴェルトが手を伸ばし、それを天青が握る。
ヴェルト
ヴェルト
頼んだ、友よ
天青
天青
任せておけ、友よ

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