「あっ…と、あぶね」
『あ、ありがとう』
地面に蹲っている“みえないもの”にぶつからないように手を引いてもらう
『…ほんと、辰哉もみえてるなんて気づかなかったよ。みえないフリしてたなんてね』
私の言葉に少しばつが悪い顔をして笑った
「はははっ。ごめんって、でもあれよ?前まではたまにみえるかな?くらいだったのが、あなたに呪い吸い取ってもらってから前よりももう少しみえるようになっただけなのよ。みえてるのもあなたの影響のおかげだしさ」
『そうは言ってもさ…』
あの時タクシーの中で蓮君に言われたこと
目「ちなみにだけどさ、ふっかさんって実は…みえてるらしいんだよね」
それを聞いた時は信じられなかったけど、今思えば1ヶ月前の海辺で辰哉は確かに黒いモヤが見えていた
『みえるってこと言って欲しかったな〜』
「ごめんごめん。でも本当に常にみえてるあなたに比べたら全然だったからさ。同じ土俵に立ててないのにこんな軽い感じでみえるって言われても何か嫌でしょ?あなたの苦労を知ってたからこそ言えなかったっていうのはあるよ」
自分が思ってた以上に色々と考えてくれてたことに驚いた
ああ、もう本当にこの人は
「まあでも俺もみえるようになってきたし?これからはあなたの苦労を俺に分けてよ」
『…本当にお人好しで優しいよね。色々と考え過ぎて禿げないでね』
「誰が禿げるかっ」
怒ったように握った手を持ち上げられて、お互い小突き合いながら歩く
「でも本当、2人とも生きててよかった」
『うん』
「…もう勝手に居なくなろうとしないでよ」
『辰哉こそ1人で頑張り過ぎないでよ』
「おう。離さないかんな」
『ふふ。うん、離さないでね』
握った手をぎゅっと握られて、負けじと握り返した
少し灰色がかった冬の空も
少しひび割れている足元のコンクリートも
ちょっぴり赤くなっている辰哉の横顔も
何だか全てがキラキラと輝いて見えた
いつだろう
貴方へ心を寄せたのは
いつだろう
貴方が特別になったのは
貴方が私を見つけてくれた時
貴方が震える私の手を握ってくれた時
きっとそう
目的地まで、あと少し
みえるわたしと みえないあなた
fin.













編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。