________________________ 春って、嫌いだ。
風に吹かれ、儚く散ってゆく桜も
晴れ晴れとした青い空も
雪が解け、剥き出しになったアスファルトも
今は、見たくない
誰もいない野原に立ち、ボソリと呟いた
「俺達、もう少しで卒業だな」
「3年って、思ったより早かったな」
「でもそれって、俺が人間じゃないからなんかな」
「んまぁ、どっちでもいいけど」
アイツの低い声が、俺の頭の中に響く
「…………なぁ、✗ ✗ 」
「約束しようぜ」
隣に立ち、俺に向かって笑いかけるアイツ
「もし………いや、必ず、一緒に卒業しようぜ」
「そしたらさ ___________________ 」
………でも、約束が守られることはなかった
俺の隣に、アイツはもういない
異種族と人間が、本当の意味で共存する世界
それが、俺とアイツが願った未来だった
争いの無い、平穏な日常
この世界にお前がいないなら、なんの意味もない
「俺とお前の2人で、異種族を殲滅しよう」
「平和な世界を、一緒に創ろう」
首元に巻かれた、紫色のマフラーにそっと触れる
もう、色褪せて、ボロボロになってしまった
失ってから、大切だったということに気がつく
そんなことを、何度も繰り返している
_________________ 4年前の春、全ては始まった
学園の門をくぐった瞬間、物語は幕を開けた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。