第3話

P r o l o g u e ‐ 2 .
130
2024/05/14 12:16










________________________ 春って、嫌いだ。



蘭万 奏らんま かなで
…………………
蘭万 奏らんま かなで
………何でまた、来たんだろ

風に吹かれ、儚く散ってゆく桜も
晴れ晴れとした青い空も
雪が解け、剥き出しになったアスファルトも
今は、見たくない
蘭万 奏らんま かなで
…………もう、1年も経つんだね

誰もいない野原に立ち、ボソリと呟いた


「俺達、もう少しで卒業だな」
「3年って、思ったより早かったな」
「でもそれって、俺が人間じゃないからなんかな」
「んまぁ、どっちでもいいけど」


アイツの低い声が、俺の頭の中に響く


「…………なぁ、✗ ✗ 」
「約束しようぜ」


隣に立ち、俺に向かって笑いかけるアイツ


「もし………いや、必ず、一緒に卒業しようぜ」
「そしたらさ ___________________ 」





………でも、約束が守られることはなかった
蘭万 奏らんま かなで
……………ッ嘘つき
俺の隣に、アイツはもういない
異種族と人間が、本当の意味で共存する世界
それが、俺とアイツが願った未来だった
争いの無い、平穏な日常
この世界にお前がいないなら、なんの意味もない





   「俺とお前の2人で、異種族を殲滅しよう」

     「平和な世界を、一緒に創ろう」





蘭万 奏らんま かなで
…………俺って、いつもそうだよな
首元に巻かれた、紫色のマフラーにそっと触れる
もう、色褪せて、ボロボロになってしまった
蘭万 奏らんま かなで
暖かいし、もうマフラーはいらないかな

失ってから、大切だったということに気がつく
そんなことを、何度も繰り返している





_________________ 4年前の春、全ては始まった

学園の門をくぐった瞬間、物語は幕を開けた。










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