6月中旬。今日は私の誕生日。今年は朝から雨が降っていた。
いくら誕生日だとしても、こうも朝から雨だと少しどんよりとした気持ちになる。
藤井「いってきまーす」
一昨年までは起きる時間だったこの時間に家を出る。
進級後、クラスが別れた後もコウメイ君と勉強するのはやめていなかった。
私の隣の席が敢助君だから、その席にコウメイ君が来てくれて勉強している。
諸伏「おはようございます、藤井さん」
藤井「おはよう、コウメイ君」
家を出てから少し歩いたあたりで、コウメイ君と合流する。
雨の日は、雨の音で少しコウメイ君の声が聞き取りづらくなるから、
会話がしにくくて、だから朝から雨の日は嫌になる。
藤井「人類、梅雨には抗えないんだよなぁ」
諸伏「雨、嫌いですか?」
藤井「まぁ、雨の全てが嫌いってわけじゃないけど、でも、うっかり水溜りに入った時の絶望感とか、こうして外で人と話しにくくなるとか、結構悪いことが多いから好きではないね。そういうコウメイ君は?」
諸伏「私ですか?」
藤井「うん、聞いてきたんだから、答えてよ」
諸伏「私もあまり好きではありませんでした」
藤井「でした……?」
諸伏「しかし、たまには雨も悪くないな、と今は思いますね」
藤井「なんでさ」
諸伏「うーん、藤井さんには秘密です」
そういうと、コウメイ君は悪戯っぽい笑みを浮かべる。
藤井「ええ、話題振っといてそれはずるくない?」
不服そうな顔をする私を見て、少し笑っていて、なんだこいつって思ったけど、
でも、そんなコウメイ君を見ることはめったにないから、面白いなとも思った。
最近、いろんな表情を見せてくれるから、すごく楽しい。
そんな感じで何気ない会話をしながら、私たちは学校へ向かった。
3Dの教室に入る。コウメイ君は一度荷物を置くために3Cへ向かう。
まだだれも来ていない教室の中は静かで、雨の音だけが聞こえていた。
今日は雨なのか、と再認識させられるようで、少し憂鬱だが、
しかしこの雨音には心地よさも覚える。
ぽつぽつという雨の音って、どうして心地いいのだろう。
諸伏「藤井さん」
そんなことを考えていると、コウメイ君がやってきた。
普段の朝は話毛けられずにお互い勉強を始めるから、どうしたんだろうと思う。
藤井「どうしたの?」
諸伏「あの、これ......お誕生日、おめでとうございます」
そういうと、コウメイ君は、かわいらしくラッピングされた箱を手渡してきた。
藤井「え?い、いいの?もらっちゃって」
諸伏「はい、君のために用意したんですから」
今まで、家族以外から誕生日プレゼントをもらったことなんてなかったから、
私はすごく嬉しかった。
藤井「ありがとう、コウメイ君!すっごい、うれしい」
諸伏「喜んでいただけて良かったです」
藤井「今、開けてもいい?」
諸伏「構いませんよ」
プレゼントのきれいなリボンを外すのは、いつも罪悪感とわくわくが
同時に押し寄せてきて、不思議な気持ちになる。
包装紙もきれいに開けると、中からはシャーペンが出てきた。
そこそこ細めのボディで、シンプルながらもかわいらしいデザインのもの。
昔、文房具屋さんで見たことあるが、2000円くらいするはずだ。
藤井「こんなにいいもの、もらっちゃっていいの!?」
諸伏「はい、日頃の感謝も込めて」
藤井「日頃の感謝って、私、君に感謝することはたくさんあるけど、感謝されることなんてないよ?」
諸伏「いえ、たくさんありますよ」
藤井「そ、そう?」
諸伏「ええ」
藤井「じゃあ、ありがたく、受け取るね。大切に使う!」
諸伏「ぜひ、そうしてください」
藤井「コウメイ君は、誕生日いつ?」
諸伏「私の誕生日は____ですが、それがどうかされましたか?」
藤井「お礼、返さなきゃなって。素敵なプレゼント、用意するから。楽しみにしてて!」
諸伏「そんな、大丈夫ですよ」
藤井「私の気が済まないから、ね?」
諸伏「では、楽しみにしています.....」
コウメイ君への誕生日プレゼント、何を送ろうか。
人にプレゼントを贈ることを考えるってすごい楽しいことで、
その人は何が好きかな、喜んでもらえるだろうかっていうわくわく感が私はすごく好き。
藤井「このシャーペン、さっそく使っていい?」
諸伏「ええ」
藤井「ありがと!」
さっそくもらったシャーペンにシャー芯を入れて使い始める。
持ちやすさも書きやすさもすごいぴったりで、いいものをもらったなと心から思った。
藤井「めっちゃ使いやすい!ありがとう、1軍シャーペンにする!」
諸伏「そういっていただけると私も嬉しいです、ありがとうございます」
コウメイ君がくれたシャーペンで、コウメイ君の隣に座り勉強する朝は
仮に雨が降っている日だったとしても、楽しくて、とても有意義な時間だった。













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。