🐿️han
昨夜、寝る前にリノヒョンヘカトクを送った。
「何も言わず帰ってごめん」
すぐ既読はついたのに、返事はなかった。
キスを求めたのは僕だし、身体が反応したのも事実。
でも、触れられるとは思ってなくて... 正直、戸惑っていた。
次の日、ダンス練習で集まったメンバーは、
各々ストレッチをしながら楽しそうに雑談をしていた。
リノヒョンは一人で黙々と体を解している。
朝になっても、ここに来るまでの間も、
カトクへの返事はなかった。
スマホが震えるたび、通知があるか確認してしまう。
思いきって話しかけてみる。
えっ、冗談......?
昨日は、勘違いだって言っていたのに...
喉まで出かかった言葉は、結局飲み込むしかなかった。
僕の肩にそっと触れるのに、
目を合わそうとはしなかった。
ヒョンは僕の言葉を最後まで待たずに、
早口でそう言い切ると、
その話題をさっさと終わらせてしまった。
謝られたはずなのに、
僕の気持ちだけが置き去りにされて、
宙ぶらりんのまま。
前よりも、少し距離ができた気がした。
練習中も今日のリノヒョンはどこか変だった。
必要最低限のことしか話さない。
冗談だって言っていたけど...
僕には、どうしてもそうは思えなかった。
だって、あの時... 触れたとき...
ヒョンだって、何も感じていなかったわけじゃない。
いつもなら、すぐに絡んできてからかってくるのに。
今日は、目すら合わせてくれない。
唇を噛んだことも謝りたかったのに。
リノヒョンとは、喧嘩をしたこともなく、
気まずくなることもなかった。
元気のない日があっても、
いつの間にか何事もなかったみたいに戻れていた。
そんな関係だったはずなのに、
今回はいつもと様子が違うんだ。
まるで、僕のことなんか眼中になくて…
二人の間に見えない壁ができたみたいだ。
休憩時間、チャンビニヒョンが
僕の様子を気にしてくれて、
飲み物を買いに行こうと自販機へ誘ってくれた。
練習中のリノヒョンは心ここにあらずって感じで、
ダンスも噛み合っていなかった。
昨日のことを気にしてくれてるなら、
僕なら、大丈夫だと言ってあげたいのに…
ビニヒョン、なんだかんだと、僕を心配してくれてる。
リノヒョンは、あんなことがあったら、
ただ、気まずいだけなんだと思うようにした。
___その時だった。
聞き慣れた声に振り向くと、
自販機の前に現れたのは、リノヒョンとスンミナだった。
スンミナは迷いなくボタンを押し、
ジュースを一本取り出した。
チャンビニヒョンの言う通り、
リノヒョンとスンミナが二人で行動しているのは、
どこか見慣れなかった。
スンミナはヒョンジナやイエニと
行動することが、多かったし、
僕がリノヒョンと一緒にいるのは、
そういうものだと思っていたから…
チャンビニヒョンが、
さりげなくスンミナを連れて行って、
その場には僕とリノヒョンだけが残った。
はぁ…妙に緊張する。
考えないようにしても、
昨日のことが勝手に頭に浮かんできて、
顔が赤くなりそうだった。
それをごまかすみたいに顔を上げた瞬間、
リノヒョンと視線がぶつかった。
ほんの一瞬…
なのに、なぜか目を逸らせなかった。
顔を上げた瞬間、
リノヒョンと目が合った。
どちらも、すぐには逸らさなかった。
名前を呼ばれただけで、胸がぎゅっとした。
(すぅぅ… …)
少し間をおいて、リノヒョンは息を吸った。
一瞬、耳を疑った…
最後の言葉だけ、
自分でも分かるくらい声が震えた。
リノヒョンは、何も言わなかった。
ただ一瞬、僕の顔をじっと見た。
僕の問いかけに、
リノヒョンは何も答えなかった。
一番近くにいたはずなのに、
そんな素振り、どこにもなかった。
なのに僕は何ひとつ気づけていなかった…
僕はリノヒョンのことを、
何でも知っている気でいたけれど、
そうじゃなかったのかもしれない。
特別な存在だと、思っていたのに…
一番近くにいると思っていたのは、
僕だけだったんだろうか。
訳が分からないまま、
溢れそうになる涙を必死で堪えた。
いつかこんな日が来ることを、想像したことはあった。
リノヒョンに好きな人ができて、
少し照れくさそうに僕に打ち明ける日を。
その時は、ちゃんと笑って「よかったね」って
言えると思っていた。
それが、今。
現実になって、相手はスンミナ。
男で、メンバーで、仲間で、同志で。
本当なら、祝福すべき話なのに。
リノヒョンは、照れくさそうでも、嬉しそうでもなくて…
どこか、悲しそうな顔をしていた。
そして僕は…きっと違うと、
自分に言い聞かせながら、
溢れてしまう涙の理由を探していた。


















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。