レミリア視点
八雲紫に言われた通り
例の館に向かったが、私より早く
その幻想入りしたやつは到着していた。
…結構早めに行ったつもりだったんだけど。
一人は銀髪の落ち着いた感じの子。
日に当たり光る髪は
丁寧に手入れされていたようで、
左右には三つ編みが風に揺れていた。
もう一人は日の光をキラキラと反射する
まるで宝石のような羽を持つ子、
八雲紫情報ではこの子も
吸血鬼なのだという。
本当か?少なくとも私には、神の使いかと
疑うほどその羽は綺麗で美しく見える。
しかしその子自身は、何かに怯えているのか周囲を見回している。
私の姿を見た2人は、
どこか怯えた表情をしながら
何かコソコソと話をしはじめた。
そんなに私が怖かったのだろうか。
なんだか悲しい…
むしろ、
こちらとしては仲良くしたいのだが…
私がいくら考えていてもどうにもならない。
一旦自己紹介でもするか?
「コホン……話し込んでいるところ申し訳ない。
八雲紫から話は聞いているだろうが、
一応自己紹介はしておくわ。
私はレミリア・スカーレット。
吸血鬼よ。八雲紫からは片方が人間で
もう片方が吸血鬼と聞いたのだけど、
吸血鬼は金髪の方の子…であってる?
ごめんなさい。
名前を聞いてもいいかしら?」
できるだけ声を優しく、寄り添うように。
これから同じ家に住まうのだから、
下手に警戒されないように。
その子は震えながら口をぱくぱくさせ、
俯きながらも名前を教えてくれた。
「ぁ……ぇっと………
ふ、フランドール……です…」
「…フランドール。
いい名前ね、貴方にぴったり。
さて、そっちの銀髪の貴方は?
なんという名前なの?」
銀髪の子は、
フランドールと違い落ち着いた声で
「…十六夜咲夜」
とだけ呟いた。
自己紹介をしたはいいが、
これからどうしようか。
いや、まず先に館の中に入ろう。
話はそれからだ。
「自己紹介も済んだことだし、
とりあえず中に入りましょう?
立ちっぱじゃ疲れるだろうし」
二人は首を縦に振った。
返事が欲しかったところではあるが
まぁ、知り合ったばかりだし仕方ないか。
歩いて行き、まず目に入ったのは
館と時計塔を合体させたと言うべきか、
巨大な時計が
貼り付けられた館と言うべきか。
ともかくそんな大きな館。
あと彩度の低い紅色であった。
周りは綺麗に切りそろえられた低木や芝生、しかも透き通った水の流れる噴水まである。
少し前まで、誰かが住んでいたかのように
綺麗だった。
またしばらく歩き、中に入ると
「…随分と広いじゃない」
広い。広すぎる。
なにか家具を置いたって広い。
この広さを3人で分けろと?無茶を言うな。
それに掃除だって…この広さだと、
掃除してもすぐ埃とか落ちてきそうだし…
今後、メイドなどの人手が必要そうだな。
まぁ兎にも角にも、私一人の考えでは
どうにもできない。他者の意見が必要だ。
「…とりあえず、館に着いたな。
まずこの館は広く、普通に暮らすにしても
メイドなど人手が必要。そしてメイドを
雇うにはそいつらをまとめる…
つまりメイド長が必要になるわ。
私達3人の中で
メイド長になりたい人はいるかしら?」
しばらくの間、辺りに静寂が訪れる。
と思ったが、十六夜咲夜が手を挙げた。
「私がなるわ……いや、なります。
私は『幻想入り』する前、
メイドのような仕事をしていました。
なので私が適任かと思います」
「分かった、ありがとう。
…ところでなんで急に敬語を付けたの?」
いや、大方予想はついてるが
一応咲夜自身の口から聞いておこう。
「私がこうして名乗り出た時点で、
私は『メイド長』となりました。
つまり立場としてはレミリアお嬢様、
フランドールお嬢様より下になりました。
ですので敬語を付けさせて頂いた所存です」
次に、この館の主を決めようかと思ったが
フランドールがこの様子だと私が
主になるしかなさそうだな。
咲夜は『メイド長』になったし。
「フランドール、いきなりでごめんなさい。
私はこの館全体をまとめる、
メイド長よりも上の立場の存在
つまり主を決めようと思っているの。
フランドールはどうしたいか
聞かせてもらえないかしら?
貴方の意見を尊重したいの」
フランドールはしばらく考えたのち、
こう返答した。
「私は…
レミリアさんのように、決断力がないから…
ぁ、主は…レミリアさんに…したい……です」
やはりな。
しかし、『レミリアさん』と呼ばれるのは
あまりいい気がしない。
咲夜のように、
ちゃんとした理由があるならまだしも
家族になるというのによそよそしく
されるのは悲しくなってくる。
こちらとしては、
フランドールと接するのであれば
姉妹くらいの距離感が一番良い気がする。
それに、
私とフランドールは容姿が似ている。
誰かに仕組まれたかと疑うほどに。
よし…ここはフランドールに交渉だ。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。