路地裏のバイクに跨ったあなたは、ヘルメットのシールドを下ろした。視界が暗闇に閉ざされると同時に、彼女の意識は**「あなたの任務での偽名」**へと切り替わる。冷静に、冷静に。
彼女は、組織のメンバーのみが知る裏ルートを走行し始めた。それは、街の主要な道路を避け、廃墟となった地下鉄のトンネルや、夜間閉鎖された産業道路を繋ぐ、監視カメラの死角となるルートだった。
彼女はアクセルを踏み込んだ。バイクのエンジン音が、彼女の心の焦燥をかき消す。
その頃、ローレン・イロアスは、私服姿で警察の小型ドローンを操作していた。彼は、廃墟のライブハウス周辺の防犯カメラの映像をハッキングし、あなたのバイクが映り込むルートを割り出そうとしていた。
その時、ローレンのスマホに、オリバー教授からのメッセージが入った。
ローレンは思わず声を上げた。
組織は、人気歌い手である超学生を利用しようとしたか、あるいは、彼の活動が組織の邪魔になった。そして、姫崎姫華は、その組織の思惑と、自身のあなたへの歪んだ執着を結びつけて行動している。
ローレンはドローンを操りながら、アクシアに状況を共有した。
アクシアは、ローレンからのメッセージをバイクで追いながら確認した。彼は、あなたが乗っているのと同じモデルのバイクを運転していた。
アクシアは、彼の警察官の勘が指し示す、一本の廃線路にバイクのハンドルを切った。ローレンが探せないなら、彼しか知らないであろうルートに賭けるしかない。
バイクを降り、懐中電灯を灯す。漆黒の闇の中、錆びた線路が遥か彼方まで伸びている。
その線路上に、わずかに新しいタイヤの跡を見つけた。
彼は、懐から警察学校時代の教本を読み込んだ際に手に入れた、非公式のスタンガン付き警棒を取り出した。警察官としてではなく、あくまで"「あなたを止める友人」"としての装備だ。
廃線路を走るアクシア。地下のトンネルを駆けるあなた。二人の男の運命は、夜の帳の中で、急速に廃墟のライブハウスへと収束していく。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。